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ミケナイトの大冒険!】


ミケナイトは散歩が大好き。
今日も独りでお散歩するの。
独りじゃ寂しくないかって?
大丈夫。タマ太はいつでも一緒だから。

「うぅー、まだ気持ち悪い……今日はお花畑に行って一日中お昼寝しよう……」

昨日のマタタビ酔いがまだ抜けてなくて、ミケナイトはふらふらです。
頭がぐらぐらします。
斬子さんに斬られた胸と腹の傷も、ハスナイト先輩に処置してもらったけどズキズキ痛みます。
それでも散歩は怠らないのは、猫としての矜持でしょうか。

ミケナイトはふらつく足で、丘の上のひまわり畑にナントカ辿り着きました。
眩しい太陽を見上げながら、大輪のひまわり達が見渡す限りに咲き誇っています。
そんなひまわり達に囲まれて、ひまわりにも負けないぐらいの笑顔で佇んでいる女の子がいました。

「こんにちは。私、馬術部のミケナイトです」
「あらこんにちは。私は時空の旅人、ハッピーエンドメーカーです。気持ちのいい天気ですね」

なんと彼女は普通の人間ではなく、時空を越えてあらゆる世界に幸福をもたらす天使なのだそうです。
そのように自分自身を『認識』している魔人ということかもしれませんが。

「あなた、怪我をしていますね」
ハッピーエンドメーカーは傷のあたりに手をかざし、ハッピーエネルギーを放出しました。
すると傷の痛みはやわらいでゆき、マタタビ宿酔いまで治まってきました。

「ありがとうございます。何か御礼を……」
ミケナイトは鞄の中から豆乳を取り出して、ハッピーエンドメーカーに一本あげました。
元気なひまわり達に囲まれて、仲良く飲む豆乳は格別においしいものです!
空には太陽が笑っています。
豆乳パックに描かれた太陽も笑っています。

「えっ……! 番長グループの一員なんですか!?」
「どうやら貴方とは敵同士だったみたいですね……」
しばらく話をしてから、ようやく二人はそのことに気付きました。

「どうして番長グループなんかに加担するんですか!?」
「そのほうがハッピーエンドに近付くからです。……その辺のイベント管理はA級フラグ建築士さんに任せてるので詳細は把握してませんけど」

(敵……! ここで討つべきだろうか……)
ミケナイトは腰のスコップに手を掛けながらも、戦うべき相手かどうかまだ判断がつかず逡巡しました。



「ところで貴方の猫耳、生まれついてのものではないようですね」
緊迫した空気を和らげようと、ハッピーエンドメーカーは話を逸らした。
「でも、とても可愛いらしいですよ」

「えへへ……この耳は、一番の友達から貰った大切なものなんです」
自慢の猫耳を褒められたのでミケナイトは緊張を解き、嬉しそうに、そしてほんの少しだけ寂しそうに笑いました。

……ハッピーエンドメーカーは、その僅かな表情の陰りを見逃しませんでした。
「なるほど……貴方の鬼雄戯大会はバッドエンドだったのですね……」

「……そんなこと、ないです。馬術部は守れたし、正騎士にもなれたし……」

歯切れの悪いミケナイトの応答に、ハッピーエンドメーカーは更に斬り込みます。
「それでは、貴方の『一番の友達』はどうなったのですか?」

「タマ太は……タマ太は願いを果たしました。だから……だから私の鬼雄戯大会はハッピーエンド……なん……です」

「認めません。ハッピーエンドとは解釈の余地なく、一点の曇りもないものでなければなりません」

「今の言葉を取り消しなさい!」
ミケナイトは腰のスコップを抜いた。
「私とタマ太が辿り着いたエンディングを……50年分のタマ太の想いを愚弄するなら、神様だって許さない! 狩るにゃんイクイップメント!」
スコップから閃光が放たれ、ミケナイトに額当てとガントレットが装着される。
そしてスコップが巨大化! 斬馬大円匙!

「いいえ、認めません。それがハッピーエンドだとしたら、なぜ貴方は泣いているのですか?」
ハッピーエンドメーカーが手を翳すと空間にブロックノイズが生じ、別世界から長剣が召喚される! 多幸剣バッドエンドブレイカー!

「だったら討ちます! っりゃあああーっ!」
ミケナイトの狩るにゃんヴォルテックス! 回避困難な旋回三連続攻撃!

金属同士の衝突音が響く!
敵は一歩も動かず多幸剣で大円匙を受け止めた!
「この技は……下手に避けようとするより、初段を防御したほうが被害が少ない……」
ハッピーエンドメーカーがミケナイトの必殺技仕様を完全に把握しているのには、理由がある。
彼女はメタ次元存在であり……その認識力は、有り体に言えばホーリーランドクラブのWikiを閲覧できるに等しいのだ!



ハッピーエンドメーカーは多幸剣で天を指した。
「さあ、あなたにハッピーエンドを与えましょう。『アイアムハッピーエンド……」
掲げた剣の刀身に光り輝く球体が生じ、その球体はみるみる半径を増してゆきます!

だが、光球が放たれようとする寸前!
「そんなのいらないっ!」
ミケナイトが叫んだ!
その全身は赤熱し、皮膚から蒸気が立ち上る!
内なる獣性を解放して爆発的な身体能力を得る!
これがミケナイトの……

ザンッ! 斬馬大円匙が猛スピードで振るわれハッピーエンドメーカーの胴体を両断! 速い!
腰から上下真っ二つに斬りはなされた上体が崩れ落ちる!

これがミケナイトの奥の手!
狩るにゃんベスティアリ!
簡単に言うとギア2みたいなものです!

輪切りにされたハッピーエンドメーカーの肉体はブロックノイズと共に消失!
少し離れた場所に出現する無傷のハッピーエンドメーカー!
幻術か? ……いや、ミケナイトの特大スコップは確かに敵を斬り裂いていた。
ハッピーエンドメーカーは破壊された肉体を再生成したのだ。不死身!

だがミケナイトは止まらない!
殺人ゴマのように回転しながら再生ハッピーエンドメーカーに迫る!

ザンッ! 斬馬大円匙が猛スピードで振るわれ再生ハッピーエンドメーカーの胴体を両断! 速い!
腰から上下真っ二つに斬りはなされた上体が崩れ落ちブロックノイズと共に消失!
少し離れた場所に再々出現するハッピーエンドメーカー!
ザンッ! 斬馬大円匙が猛スピードで振るわれ再々生ハッピーエンドメーカーの胴体を両断! 速い!

(くうっ……多幸剣を再召喚する隙がない……! このままではハッピーエネルギーが尽きてしまう……!)
ハッピーエンドメーカーは人間態を保ち続けることは不可能だと判断し、やむを得ず本来の姿に戻った。
爆発的な光の渦が弾ける!
光り輝く十二枚の翼に包まれた絡み合う二十五個のリング、そして瑠璃色の正八面体コア。
それがハッピーエンドメーカー本来の天使としての姿だ。

光の渦がミケナイトを弾き飛ばす!
天使は空へと高く舞い上がり、ブロックノイズを生じて……消えた。

ミケナイトは荒い息を吐きながらひまわり畑の中に倒れた。
狩るにゃんベスティアリは肉体負荷の高い両刃の剣なのだ。
そして、気付けのマタタビ薬を吸引しながら、タマ太との楽しい日々を思い浮かべ、泣いた。

第2話おわり。
最終更新:2014年07月15日 22:56