【ミケナイトの大冒険!】


第3話『VS斉川愛咲&一六六六』


ミケナイトは散歩が大好き。
今日も独りでお散歩するの。
独りじゃ寂しくないかって?
大丈夫。タマ太はいつでも一緒だから。

「敵陣営の子と会うとバトル展開になりがちだから、今日は生徒会室に顔を出そう」

ミケナイトは生徒会室へ向かって歩いていると、物陰に隠れてコソコソしている女の子を見つけました。
あれは確か、生徒会に最近入った新入生です。
背後からそーっと近付いて、ミケナイトは声をかけました。

「こんにちは。私、馬術部のミケナイトです」
「ひゃあっ、こ、こんにちは。ご、護身部の、しゃ、しゃい川れふ」
「シャイ川さん、なにしてるの?」
「ひゃふ、しょの、ひゃい川です!」

斉川さんはどうやら、好きな男の人ことをコッソリと見ていたところみたいです。
これは素敵な恋の予感!
でも、相手の男の人というのが……

「ふーん、はじめクンの毒牙がまた犠牲者をだしちゃったのかぁ」
突然会話に割り込んできたのは漆黒の翼を持ち禍々しき獣の角を生やした悪魔でした。
「でびちゃん登場ぅー。はじめクンを落としたいなら手助けするよっ!(いひひひ……秘めたる想いを本人に知られて恥ずかしい思いをするがいい)」

「そう言えば、六六六(でびる)ちゃんって十四(えんじぇる)ちゃんとどんな関係なんですか?」
十四と対戦したこともあるミケナイトは、でびちゃんに前から気になってたことを質問しました。

「んー、実はえんちゃんとの関係には言い辛い秘密が……(別にスグ言ってもいいケドじらす小悪魔ロールなのだ!)」
「じゃあ無理には聞きません。少し、場所を変えて作戦会議しましょう。時間いいよね、シャイ川さん」
「はい……」
「でびちゃんもオッケーだよ!(ちょっとー、えんちゃんとの関係、気にならないのー?)」



人気のない屋上に移動して、三人の秘密会議は続きます。
三人の手にはミケナイトの配った豆乳。
可愛い後輩の恋の悩みを聞きながら飲む豆乳は史上最高のおいしさです!

「ミケナイトさんは好きな人、いるんですか?」

ぶーっ! シャイ川ちゃんから突然の攻撃を受けて豆乳を噴き出すミケナイト。
(えええー、うーん、あんまり考えたことなかったな……。レトナイトさんは憧れだけど恋愛対象って感じしないし、ハスナイト先輩はいい人だけどなんか違うし……)

答えに詰まってるミケナイトを見て、シャイ川ちゃんは更に聞きます。
「もしかして……ミケナイトさんも一さんが好きなんですか?」

「ないっ! それはないよ。だってあの人、誰にでも優しい顔するでしょ? 私は、イザって時に私だけを守ってくれるような、そんな……」
ミケナイトは思い出しました。そんな、猫がいたのです。
(いやいやいや、それはない。あんなエロ猫……あんなエロ猫……大好きだったけど……恋愛対象とかじゃない!)

「……私、本当の恋ってしたことないかも」
結局、ミケナイトの答えはこんなのでした。
とてもじゃないけど後輩の恋愛相談に乗れるような器ではなかったのです。

「でびちゃん思いついた! 聞いてくれる?」
柄にもなく黙って二人の話を聞きながら考え込んでいたでびちゃんが口を開きました。
「コイはコイでも本物じゃないコイってなーんだ?」

「え、えーと『こいのぼり』……ですか?」
自信なさそうにシャイ川ちゃんが答えます。

ピコン! シャイ川ちゃんの頭をでびちゃんがピコハンマーで痛打!
「ぶっぶー、はっずれー! それじゃあナゾナゾになってませーん!」
嬉しそうにニコニコ笑顔のでびちゃん!

「んー、……わかった!『デコイ』ですね!」
ミケナイトがひらめきました!

「はううーっ! なぜわかったーっ!」
ピコピコピコピコ! 悔しさで涙目になったでびちゃんのピコハンマー連撃!

「痛たたた。正解してもぶつのーっ? それより本題に戻りましょ?」

「そうですよ……私、悩んでるんですからぁ……」

「あーゴメンゴメン。でも、作戦もなにも、はじめクンは来る美少女は拒まない主義だから突撃あるのみだよ?」

「でっ、でも私、そんなに可愛くないし……」

「大丈夫だよ!」
「シャイ川ちゃん可愛いよ! 食べちゃいたいぐらい!」
「えっ、でびちゃん、そっち系?」
「違う違う、たとえばなしだよー」



それでもごにょごにょ尻込みするシャイ川ちゃんを見て、ミケナイトは秘密兵器を出すことにしました。
青いサーコートの懐から、霧吹きのような物を取り出します。

「『勇気の出るクスリ』ーっ!」
大山のぶ代またはわさびの声でお読みください。
「このクスリを吸うととっても幸せな気持ちになって勇気がどんどん出てくるんだ」
明らかにヤバい薬の説明ですが、要するにいつものマタタビです。
三人は仲良くマタタビを吸引し、テンションを上げました。

「狩るにゃん! 狩るにゃん! 狩るにゃん!」
「いたずらしちゃうぞっ! いたずらしちゃうぞっ! いたずらしちゃうぞっ!」
「やっぱり無理です……! やっぱり無理です……! やっぱり無理です……!」

「「ええーっ!?」」
なんということでしょう。
シャイ川ちゃんの心の壁は、マタタビでも破れなかったどころか一層強固になったかのようです……。

「ごっ、ごめんなさいっ!」
居たたまれなくなったシャイ川ちゃんは屋上から逃げ出し階段を駆け下ります。
ぐらり。あっ危ない! マタタビ酔いでふらつくシャイ川ちゃんが階段を踏み外してしまいました!

どしーん! 運の悪い男の子が、落ちてきたシャイ川ちゃんの下敷きに!
シャイ川ちゃんは無傷です。

そして、この状況は……!
尻餅をついたシャイ川ちゃんのスカートの中、股間から布一枚隔てただけの場所に下敷きになった男子生徒の顔面が!
ゴウランガ! これぞ最も基本的な衝突後体位・顔面騎乗!
するとこの男の子は……!

「もごもご?(大丈夫?)」
おお、なんという優しさであろうか!
下敷きになりながらもまず相手のことを気遣うとは!
やはり彼は……!

「ひゃう……んっ!」
デリケートな箇所に密着しながら喋られた刺激で、シャイ川ちゃんが甘いうめきと共に身体をのけぞらせます。
だが……シャイ川ちゃんは護身の天才だった。
普通だったら何とか態勢を立て直そうとするものだが……逆にシャイ川ちゃんは思いっきりのけぞった!
そのまま全体重を乗せて男の子の股間に肘を叩き込む!

「ギャーーーーッ!!!」

めでたしめでたし。
最終更新:2014年07月26日 13:20