絶たれる望み
フランは焦っていた。
世界の最後の戦士ともいえる少年達は、絶望するということを知らなかった。
何を拠り所にしているのかは分からないが、その心には強い意志が宿っている。
彼らの心を折る事は、容易ではなかった。
何人かを消し去ることには成功したものの、仲違いにより一網打尽にする作戦は、失敗してしまったのだった。
その作戦失敗は自分の詰めの甘さ、そして間の悪さが原因なのだが、フランはそんな事は微塵も思わなかった。
世界を救う為、憎しみという概念を消そうとしている自分に落ち度があるなどとは、全く考えなかった。
(醜くいがみ合っていたはずなのに、どうして…)
自分の想いを理解しようとしない少年達に、いら立ちを見せる。
その自分自身が憎しみに囚われている事など、彼女が分かるはずもなかった。
結果として、フランは少年達に宣戦布告をし、アスタとサンがそれを迎え撃つこととなった。
だが、かけがえのない同志であるアスタとサンの二人を危険な戦いに巻き込む事は、出来れば避けたかった。
(こうなったら…)
何か思いつめたような表情でフランは立ち上がり、再びあの少年たちのいる次元へと跳躍した。
(本当に…戦わないといけないのかな…)
決戦を前にして、大空ヒロは憂鬱だった。
一時は『世界の消滅を賭けた大勝負』というシチュエーションで、テンションMAXになっていた。
だが、その相手は少し前まで楽しく過ごしていた少女だったのだ。
できる事ならば戦いたくはない。
消し去られたアミやカズ、世界中の人たちのためには、戦わないといけないのは分かっていた。
だが、戦おうと思えば思うほど、フランと過ごした楽しい時間が脳裏によぎるのだった。
(フランさん…)
小さくため息をつくと、いつの間にか目の前に人がいた事に気づく。
それは、今まで自分が想っていた少女、フランだった。
「ふ、フランさん!?どうしてここに?」
ヒロの問いかけに、フランは何も言わずにその体に抱きついた。
「な、え、ええっ!?」
「ヒロ…」
ヒロを抱きしめる腕に、力がこもる。
まるで何かに怯えているかのようだった。
「私、戦いたくない…」
「…だったら、戦わなければいいじゃないですか。僕たちだって、フランさんとは戦いたくないんです」
「私も嫌…でも…あぁっ!」
突然、フランが悲鳴を上げ、頭を抱えた。
「フランさん!?どうしたんですか、しっかりしてください!」
ヒロが必死に呼びかけるが、フランの耳には届いていないようだった。
苦しむフランの髪の色が、黒く染まっていく。
だが、少し時間がたつと、フランの髪は薄い水色に戻り、フランの苦しみも治まったようだった。
「フランさん…」
「…ごめんなさい…戦いをやめようとすると、心が支配されそうになるの…」
「そんな…そんな事…」
まるで何かに操られているかのようだった。
いや、彼女は実際、何者かに操られているのではないか。
花を愛でる可憐な少女に、戦いを強いる何者かがいるのではないか。
ヒロは自分の中で、そう確信していた。
(センシマンにもあった…こんなエピソード…)
今の状況を、自分の敬愛する世界に重ね合わせる。
それを疑う気持ちは、少しも無かった。
「ヒロ…私、自分が怖い…自分が自分でなくなってしまう気がして…」
「大丈夫です、フランさん。僕たちが、何とかしてみせますから…」
ヒロが軽く胸を叩いて、微笑んだ。
根拠のない自信だが、それがヒロの持つ強さだった。
「ありがとう、ヒロ…っ…」
倒れこむかのように、フランがヒロに体を預けた。
「ふ、フランさん…?」
「ヒロ…すべて忘れさせて…あなたを、感じさせて…」
ヒロがその言葉の意味を問うより前に、フランがヒロの唇を奪っていた。
「っ…!?」
ヒロが目を見開き、体を硬直させる。
この展開は正直予想していなかった。
もし、こんな所を人に見られたら…そう思うと、気が気ではなかった。
だが、フランはそんなヒロにお構いなしで、衣服を脱ぎ始めた。
フランの白い裸体が、ヒロの前に晒される。
まだまだ幼いが、息を飲むほどの美しい姿だった。
だが、ヒロにはそれを楽しむ余裕はなかった。
ヒロはフランに組み伏せられ、フランの手によって服が脱がされようとしていたからだ。
「や、やめて下さい、フランさん!」
口では抵抗するものの、ゆっくりと、しかし確実なその手を、拒むことはできなかった。
また、フランを突き飛ばすなんてことは、ヒロにはできるはずもなかった。
口だけの抵抗も空しく、ヒロも衣服を全てはぎ取られてしまった。
まだ少年であるヒロの体は、同年代の女性とは変わらない、美しい姿だった。
ただ一点、堅く、熱を持ったヒロ自身を除いては。
(ど、どうしよう…ランさんにも見せたことないのに…)
ヒロの心配をよそに、フランがゆっくりとヒロの裸体に、自分の肌を重ねた。
ヒロの胸に耳を当て、その体温と、高鳴る鼓動を感じる。
「暖かい…」
随分触れた事のなかった、人の体。
その感触を愛おしむように、フランはヒロの胸を撫でる。
だが、その行為は図らずも、ヒロの興奮を引き出すだけだった。
「っく、ぁ…」
その声にシンクロするかのように、ヒロ自身が動く。
フランの下腹部を、その先端が掠めた。
思い出したかのようにフランが顔を上げ、ヒロのそれを見つめる。
「ふ、フランさん…そこは…」
至近距離から性器を見つめられる。
その光景が恥ずかしくて、ヒロは眼をそらした。
だが、逃がさないとでも言うかのように、フランの手がヒロ自身を包んだ。
「ぅあっ…!」
自分よりも更に小さく、柔らかな手の感触に包まれ、腰が跳ね上がりそうになった。
フランの手がゆっくりと上下に動く。
「ヒロ…気持ちいいの…?」
そんなフランの問いかけに、ヒロは両手で顔を覆った。
当然、気持ちよくないはずはない。
だが、それを認めたくなかった。
自分の想い人を裏切りたくなかった。
しかし、そんなヒロの心とは裏腹に、フランはヒロ自身を通じて、快楽を送り続けてくる。
やがて、その快楽が限界を迎えた。
「フランさん、やめ…あぁぁっ!」
ヒロはフランの手の中で精を吐き出し、フランを白く汚した。
絶頂を迎えさせられた事より、ヒロの頭は安堵で一杯だった。
(フランさんには悪いけど、これでもう…)
そう思っていたヒロだが、フランの手に再び力が入り、上下に動いた。
「はぁうっ…!」
絶頂を迎えた直後の敏感な性器への刺激で、ヒロは思わず声を上げる。
だが、皮肉にもヒロ自身は、まだ固くそそり立っていた。
それはまだ、ヒロの『体』が満足しきっていないという証拠だった。
「ヒロ…もっと…」
そういうとフランは体を起こし、ヒロ自身の上にまたがった。
ヒロは何かを口にしようとしたが、もはや抵抗するほどの気力は、残っていなかった。
フランが腰を下ろし、ヒロを飲み込んでいく。
「あ、あぁぁっ…!」
「っく…あんっ…!」
二人の嬌声が重なった。
フランは何度も腰を動かし、ヒロを攻め立てる。
「あっ…あぁっ!」
ヒロの悲鳴にも似た喘ぎが響く。
だが、フランは声を押し殺しながらも、ヒロの反応を見つめていた。
まるで、その反応を楽しんでいるかのようだった。
「駄目です、フランさん…また、っ…!」
言い終わるよりも前に、ヒロがフランの奥底で絶頂を迎えた。
フランもそれに満足したのか、再びヒロの体に重なり、肌を合わせていた。
2度の絶頂を迎え、ヒロは放心状態だった。
反射的に、自分の体に触れるフランの体を抱きしめていた。
ドアが開くような音がしたが、まるでどこか遠い世界の出来事のようであった。
「ヒロ…あんた、何してんの…」
その震えた声で、ヒロは我に返る。
声の方に視線をやると、花咲ランがいた。
お互いに信じられないものを見ているかのようだった。
「ちっ、違うんですランさん!フランさんは、本当は…」
そこまで言うと、フランはゆっくりと体を起こした。
そして、両手をランにかざす。
「な、何よ…大体、なんであんたがここにいるの!?」
ランが二人に詰め寄って行ったが、フランが両手から紫色の光を放った。
その光と共に、ランの姿も消えてしまっていた。
「ラン…さん?」
名前を呼んでも、辺りを見回しても、ランの姿は確認できなかった。
まるで、この世界から消えてしまったかのようだった。
そして…どう見ても、それをやったのはフランだった。
「フランさん…これは、一体…」
ヒロは、目の前で起きたことが信じられず、呆然としていた。
だが、フランの両手がヒロに向けられた時、ようやく現実に引き戻された。
(フランさんは…操られていたんじゃ…)
だが、フランの手が紫色の光を帯び始めたことで、自分の考えが間違っていたことに気付いた。
(まさか、最初から…フランさんはこのつもりで…)
ヒロが真相にたどり着こうかという刹那、紫色の光がヒロを包み、そして謎の浮遊感がヒロの全身を襲った。
それが、大空ヒロの最後の意識だった。
「お帰り、姉さん」
人工の光に包まれた狭い世界に、サンの声が響いた。
「やったぜフラン、ってか」
続いて、どこか不機嫌そうなアスタの声がする。
「いくらなんでも、あそこまでする事はなかったんじゃねーか?」
「奴らの絆は強い。特に男女の絆はね。でも、だからこそ、それを逆手に取っただけよ」
チームの中でもムードメーカー的な存在である「大空ヒロ」と「花咲ラン」を消せたことは、フランにとっては図らずも大きな収穫であった。
二人の成長を見守り、彼らの強さを誰よりも信じていた「山野バン」
そのバンと強い絆を持った「海道ジン」
更に、ジンに絶対の信頼を寄せていた「ジェシカ・カイオス」と「灰原ユウヤ」
最後に残った「古城アスカ」も、他の全員が消えてしまったとあっては、どうしようもなかった。
彼らの消滅…彼らが『絶望に負けた』という事実が、他の者にも絶望を与えたのだった。
こうして、連鎖的にLBXチームは全滅した。
ただ、流石にもう一方の少年達は、彼ら同士の強い絆のため、バン達が消えても戦う意思は消えなかった。
「LBXがいない今、もう片方のチームは、僕のデジトニアスが片付ければいいわけだ」
「いいや、サン。お前の力を借りなくても、俺だけで倒してみせるぜ」
二人の様子は、獲物を取り合う猟犬のようだった。
ふと、フランが腹部に手を当てる。
何かが何かに突き刺さるような、言いようのない感覚を感じる。
その正体が何なのか、幼いフランにはわからなかった。
「…姉さん、どうかしたのかい」
サンがその様子を訝しむが、フランは小さく顔を振った。
「なんでもないわ。それより、そろそろ行きましょう。争いの無い世界を作るために…」
三人の姿が、紫色の光に包まれる。
それはまるで、無数の世界の日没のようであり、新たなる世界への夜明けのようでもあった。
最終更新:2013年03月21日 02:52