「失礼します」

乾いたノックの音の後に、凛々しい少女の声が響く。

「こんな時間に何の用だ、バネッサ・ガラ」

その部屋の主…ロシウスの司令官、イワン・クロスキーが彼女を迎え入れる。
バネッサは小さく敬礼をし、軍人らしい仕草でイワンの前に立った。

「先のウォータイムでは、我々が不甲斐ないばかりにジェノックに後れを取り、申し訳ありませんでした」

「フン…!」

ジェノックの名を聞いた途端、イワンはあからさまに機嫌を悪くする。
強大な軍事力を誇り、本来であれば常勝を約束されたはずの彼にとって、
最近のジェノックの躍進は忌々しいばかりであった。
だが、そんなイワンには構わず、バネッサが言葉を続ける。

「今回は折り入って、お願いがあって参りました」

「ほう…願い、とな?」

イワンは聞き返すが、それは形だけの質問だった。
わざわざウォータイムの話まで持ち出してくれば、彼女の言いたい事は一つしかなかった。

「隊長の…いえ、法条ムラクの処遇について、考え直していただきたいのです」

バネッサが深々と頭を下げる。
予想通りの言葉に、イワンが小さく口を歪め、笑みを浮かべた。

「しかしだな…奴の行動を許すとなれば、我がロシウス全体の士気にも関わるのだぞ。
拠点を見捨てておめおめと逃げ帰ったなどと、これが実際の軍隊ならば敵前逃亡で銃殺ものだ」

イワンの言葉に、バネッサは拳を強く握りしめる。
確かに、ロシウス領タンデムの港での戦いにおいて、ロシウスは撤退しジェノックがその地を制圧した。
だが、それは結果だけの話である。
『バンデット』の奇襲を受け、多くのLBXがロストした上、ジェノックの勢いは凄まじかった。
更に主力であるムラクを抑えられた状態で、ロシウスの精鋭も多くの犠牲を強いられた。
ムラクの撤退の指示が無ければ、勝利が得られたとしても更なる戦力の低下は免れなかっただろう。
にも拘らず、この男は自国の領土の事ばかりを口にする。
おそらく、指揮官としての評価もウォータイムが深く関わっているのだろう。

(下種め…!)

怒りの言葉が、バネッサの口から洩れそうになる。
だが、その言葉を必死に抑えて、バネッサは彼に頭を下げ続けた。
そうするしかなかったのだ。
ムラクの命運は、指揮官である彼の手にあるのだから。

「お願いします、どうか…!」

ここまでいじらしい姿は、普段のバネッサからは想像できないだろう。
だが、普段の彼女を知る彼だからこそ、その心に嗜虐心が芽生えてしまった。

「フム…よかろう、考えてやらんでもない」

その一言でバネッサは顔を上げ、笑顔を見せた。

「! …では…!」

「ただし、これから出す課題をクリアすればの話だ」

バネッサの笑顔が、一瞬にして冷めてゆく。

「課題…とは?」

「簡単な事だ。私を満足させてみろ」

何の事かわからず、バネッサが固まる。
だが、次の瞬間にはその意味を理解し、怒りと恥辱に体を震わせた。
それが何を意味するか分からないほど、バネッサは子供ではなかった。

「そっ、そんな事…!」

「できぬ…か?」

まるで勝利を確信し、弱者をいたぶるかのような笑み。
今のイワンは、そんな表情をしていた。

「構わんのだぞ、貴様らの小隊へのシルバークレジットの支給を停止しても。
それとも、補給も援軍も届かぬ最前線へ送り続ける方が良いかな?
ムラクの事だ、素晴らしき戦功を上げてくれるだろうよ」

「くっ…」

卑怯な…と言いかけたが、それを必死に押し殺す。
隊長であるムラクの為。チームメイトであるミハイルとカゲトの為。
そして、ムラクを必要とするロシウスの生徒たちの為。
彼女の取るべき道は、一つしかなかった。

「失礼、します…」

バネッサがイワンの前に跪いて、彼の自身を取り出す。
これからの行為への期待に、自身は醜く膨らみ、脈打っていた。
普段の彼女であれば思いつく限りの罵声を浴びせるのだが、今はそうはいかない。
イワンの性器を握り、作業的に手を上下させる。
手から伝わる熱に顔をしかめるが、それ以上の嫌悪感は顔に出さないように必死に努めた。

(ムラクの為だ…ムラクの…!)

その一心で、彼女は手を動かす。
一方イワンは、確かに快感は感じるが、物足りないといった感じで彼女を見下ろしていた。

「そんな事ではいつまでも終わらんぞ、バネッサ。口も使ったらどうだ」

遠まわしの催促に苛立ちを覚えながらも、この行為を早く終わらせるため、バネッサはその先端を口に含んだ。
何とも言えない嫌な味が口内に広がるが、それも考えないようにする。
小さな穴を舌先で広げるように刺激し、手の動きもより早める。
少女とは思えない巧みな攻めに、イワンの快楽は高まっていった。

「出すぞ、バネッサ…受け止めろ…!」

イワンが下腹部に込めていた力を抜き、絶頂へのタガを外す。
バネッサは思わず離れようとするが、その後頭部を抑えられ、白濁の奔流を口内に流し込まれてしまう。

「~~~っ…!」

急激に広がる熱と苦みに軽くパニックになり、顔を振って逃れようとする。
だが、その行為はむしろ、イワンの中に残った余韻すらも絞り出しているようだった。
精液を飲み込まないようにするが、口を塞がれている息苦しさに耐えきれず、少しずつそれを飲み込んでしまう。
その口が解放される頃には、イワンの精液はバネッサの喉を通ってしまっていた。

「ゲホッ、ケホ…!」

何度も咳き込むが、出てくるのは彼女の息ばかり。
言いようのない嫌悪感が、彼女の体内と、そして心に広がっていく。
だが、これで終わった。帰って休んで、そして忘れよう。
そう自分に言い聞かせた。

「では、これで…失礼いたします…」

「…何を言っている?」

イワンの言葉を聞き返すより前に、バネッサは後ろから抑え込まれた。

「まだ私は満足しきっていないぞ…!」

そのまま強引に抱きあげられ、膝の上に座らされる。

「なっ、え…!?」

状況が分からないまま、バネッサは自分の胸がゆがんでいる事に気付く。
後ろから抱きしめられ、その胸を弄ばれていた。

「やっ…!」

必死に胸を覆うとするが、イワンの手はバネッサの胸を離れようとせず、逆に抱きこむような形になってしまった。

「性欲の処理はできても、こちらの覚悟はまだのようだな…!」

バネッサの衣服が、少しずつ乱されていく。
まるで人形のような扱いから逃れようとするが、流石に大人の男の力には抗う事は出来なかった。
胸を晒され、揉みしだかれる。
強引に唇を奪われ、口内を犯される。
彼女の素肌を余すところなく、イワンの手が這い回る。
彼女の『初めて』を、一つずつ奪っていくように。

「ふっ…んん~…っ!」

攻めを受ける度に、胸の先端は固さを増していく。
呼吸は荒くなり、甘い吐息が漏れる。
悲しいほどに、彼女の体は正直だった。
そして、イワンの手が彼女の下着を奪い、秘所へと触れる。
その刺激に目をやると、イワンの性器が復活していることに気付いた。

(入れられるのか…アレを…)

快楽に支配され、目の前の事をどこか他人事のように考えていた。
だが、それが自分の中に押し入ってきた痛みで、感覚を取り戻す。

「っく…あぁぁぁっ…!」

痛みに耐えきれず、大きくのけぞる。
前に突き出された胸が、またイワンの手に包まれた。
愛撫と同時に彼女を両手で抑え込み、腰を上下に動かして乱暴に秘所を突き上げる。
上下に揺さぶられる度に、彼女の意識が白く染まっていく。

『……!』

イワンが何かを言っているような気がした。
だが、もう抗う力も、気力も残っていない。
自分の中で何かがはじけたのを感じて、バネッサも快楽の絶頂を迎えた。

……その後、バネッサはどうやって自分の部屋まで戻ったのか覚えていない。
だが、自分の部屋にはいたし、周りの生徒も特に変わりは無いようだったので、なんとか無事には戻ったのだろう。
それ以上は、あの行為を思い出すので、考えないようにした。

後日、ウォータイムに関する正式な辞令が下された。
ロシウスの前線基地、エンジェルピース防衛部隊の傘下へ入る事。
作戦内容はジェノック本国への奇襲。
聞こえはいいが、やっていることは火事場泥棒に等しい。
ムラクの部隊には役不足な任務だが、前回の失敗に対する罰と考えれば、妥当なところだろう。
そう考えながら授業に戻ろうとしていたところで、ムラクに呼び止められた。

「バネッサ」

「なんだ、ムラク?」

「…すまない」

その一言に、バネッサの胸が締め付けられる。
まさか、知られていたのか?
だとしたら一体どこまで…

「ムラク…っ…」

ムラクは何も言わずに立ち去った。
嫌悪感からではなく、触れない方が彼女の為だと思ったからだ。

「私は…本当に、これで良かったのか…ムラク…」


何故だろう、心配されてるはずなのに。
何故だろう、あの行為は無駄ではなかったはずなのに。
あの時よりもずっと辛く、苦しい。
そして、悲しいのは……
最終更新:2013年07月07日 21:32