ユノが目を覚ました時には、太陽は既に天高く昇っていた。
神威島に戻る時間は、とっくに過ぎていたようだ。
だが、ユノはそれすらもどうでもよかった。
自分を取り巻く全ての物…太陽の暖かさ、空間を満たす音、そして自分の肩に触れる感触。
それらがまるで他人の物であるかのようにリアリティが無かった。

「―――ノ……ユノっ!」

やがて、それが自分の名前だと思いだす。
目の前には、目にいっぱいの涙を浮かべたキャサリン・ルースの姿があった。
周りには園山ハナコ、仙道キヨカもいた。
彼女を迎えに来たはいいが、時間になっても現れない彼女を探しに来たのだろう。

「キャサリン…みん、な…」

掠れた声で、ようやくキャサリンの声に応える。
それを聞いたキャサリンが、大粒の涙を流して彼女に縋り付いた。
そこでユノは、ようやく自分が一糸纏わぬ姿のままだったことを思い出した。
近くを見ると、たき火の跡に自分の制服『だった物』が落ちているのに気付く。
ユノをこの場に縛りつけておくために、彼らが処分したのだろう。
そして、キャサリン達にここで何があったのかを知られてしまった。
失うものなどもう無いと思っていたユノは、再度絶望の淵に落とされてしまった。

―――――

神威島に戻ったユノだったが、その様子はまるで別人だった。
彼女の笑顔も、明るい声も、全てどこかへ消えてしまった。
キヨカからは報復の提案も出た。
しかし、あの出来事を思い出すだけで、ユノの全身を耐え難い不快感が襲う。
もう何も考えずに全てを終わらせたかった。
ユノはやがて、静かに神威島を去って行った。

だが、悲劇はそれだけでは終わらなかった。
キャサリンはユノの仇を討つため、アラタ以上の無茶な突撃を繰り返すようになった。
ハナコはユノの凄惨な姿がトラウマとなり、ウォータイム中に錯乱状態に陥るようになってしまった。
そんな二人が戦いを続けられるはずもなく、やがてあっけなくロストされてしまった。
キヨカはこれ以上犠牲者を増やすまいと、シルバークレジットを度外視したカスタマイズを繰り返す。
足りない分のクレジットを得るためには、手段は選ばなかった。
やがて、それらの行為が明るみに出て、キヨカの元には退学通知が届けられた。

こうして第四小隊を失ったジェノックは大幅に戦力と士気を落とし、やがて他の小隊からもロストする生徒が続出。
ジェノックがセカンドワールドの地図から消えてしまうのに、ひと月とかかる事は無かった……
最終更新:2013年08月31日 23:41