
太宰治が「津軽」執筆の折、親友N(中村貞次郎)君と泊まった宿。「津軽」の中で1泊の出来事をユーモラスに描いている。
持ち主である奥谷福太郎氏と隣接する土地の人達により外ヶ浜町へ無償譲渡され、2008年(平成20年)4月「龍飛岬観光案内所」として生まれ変わった。
太宰をはじめ数多くの作家や画家の筆跡が残る宿帳や、当時の龍飛にまつわる記録資料、著名人がしたためた色紙や作品など、貴重な文化遺産を展示。
太宰が泊まった部屋も復元・公開されている。
露路をとおって私たちは旅館に着いた。お婆さんが出て来て、私たちを部屋に案内した。この旅館の部屋もまた、おや、と眼をみはるほど小綺麗で、そうして普請も決して薄っぺらでない。まず、どてらに着換えて、私たちは小さい囲炉裏を挟んであぐらをかいて座り、やっと、どうやら、人心地を取かえした。
「ええと、お酒はありますか。」N君は、思慮分別ありげな落ちついた口調で婆さんに尋ねた。答えは、案外であった。
「へえ、ございます。」おもながの、上品な婆さんである。そう答えて、平然としている。N君は苦笑して、
「いや、おばあさん。僕たちは少し多く飲みたいんだ。」
「どうぞ、ナンボでも。」と言って微笑んでいる。
私たちは顔を見合せた。このお婆さんは、このごろお酒が貴重品になっているという事実を、知らないのではなかろうかとさえ疑われた。
「きょう配給がありましてな、近所に、飲まないところもかなりありますから、そんなのを集めて、」と言って、集めるような手つきをして、それから一升瓶をたくさんかかえるように腕をひろげて、「さっき内の者が、こんなに一ぱい持つてまいりました。」
「それくらいあれば、たくさんだ。」と私は、やっと安心して、「この鉄瓶でお燗をしますから、お銚子にお酒をいれて、四、五本、いや、めんどうくさい、六本、すぐに持って来て下さい。」お婆さんの気の変らぬうちに、たくさん取寄せて置いたほうがいいと思った。「お膳は、あとでもいいから。」
住所:青森県東津軽郡外ヶ浜町字三厩龍浜59-12
TEL/FAX:0174-31-8025
時間 :4月25日から11月30日 9:00-16:30(最終入館16時)
休館日:無休
入館料:無料
駐車場:あり
アクセス:
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