■第一夜 -A First War-
僕のデスノート戦争第一日目の夜。
僕はデスノゲ市郊外で、戦闘状態に突入していた。
アイバー召喚の後、デスノゲ市の見回りに出ていた僕は、信じられないものを見つけたのだ。
それは、コテと思われる存在が、一般人に『誤認逮捕』を行っていたのである。
『誤認逮捕』は無理矢理難癖を付け、対象を殺害し、その命を発言力に変換して取り込む。
手早く発言力を増幅・回復するにはうってつけの術法だが、その手法から外道の魔術として禁止されている。
それを堂々と、しかも、よりにもよってこの僕が1stオーナーを務めるこのデスノゲ市でやるとは。
僕はアイバーと共に逃げたコテを追い、この人気が少ない郊外の空き地まで来たのだ。
そこで待ち構えていたのは、敵マスターと思われる人物と、追っていたコテ。
そのマスターの方に、僕は見覚えがあった。
J.J.「お、お前は・・・翠星石!?」
その人物は、僕と同じ始まりの御三家の一つである星石家の当主、翠星石。
星石家は年々発言回路の劣化が激しく、現当主の翠星石は発言力0、つまり所謂落ちこぼれだった。
当然コテを召喚する力などなく、今回は参加を見送るのだとばかり思っていたのに。
翠星石「よぉ、J.J.。まさか緒戦の相手がお前とはね。だが、これも面白い。」
翠星石「お前は必ず潰してやろうと思ってたんだからなぁ!」
しかし、翠星石の自信、またその身から溢れる発言力から見るに、外道の術法で増やしたに違いない。
J.J.「・・・それはこっちのセリフだ、翠星石。」
J.J.「この地の1stオーナーとして、いや、一プレイヤーとしても・・・」
J.J.「一般人に外道の術を使ったお前を許すわけにはいかない。」
J.J.「頼む、アイバー!」
僕の声に応え、アイバーが前に出る。
翠星石「ふん、相手をしてやれよ、ウエディ!」
同じように、翠星石もコテ――ウエディを出してくる。
ウエディ。見た目は普通の青年だ。アイバーより若干年上に見え、その物腰は落ち着いている。
パッと見喜んで誤認逮捕を行う人物には見えないが・・・。
アイバー「俺もマスターと同じ意見だ。確かに効率的な手段だが・・・気に入らないな」
ウエディ「・・・マスターの意見に従うのがコテだ。」
両コテが構えた。
コテ同士の戦闘に用いられる武器は、生前の言動もしくは死神がその者に合うと思った物が具現化され、召喚される。
アイバーは一見すると杖。しかし、よく見るとそれはモップのようだ。
ウエディはメイスのような、先が膨らんでいる杖状の武器。便所のラバーカップに似てるとも言えるが・・・。
互いに得物を構えたと思った次の瞬間、既に双方のコテは打ち合いを開始していた。
さすがは古参。その人外な戦闘力は、新規はもちろん、通常のプレイヤーでは状況把握の前に殺されるだろう。
戦闘内容はアイバーが僅かに有利か。
クラス的にはウエディが有利だが、アイバーは固有スキルや単純な知名度による補正が大きい。
それでもここまでほぼ互角に戦っているウエディも、アイバーと同じく知名度がある古参なのだろう。
徐々にウエディが圧され始めると、苛立った翠星石が叫んだ。
翠星石「ちっ、おいウエディ!負けてんじゃねえよ!特別に宝具発動も許してやる!確実に殺せ!!」
ウエディ「・・・了解した、マスター。」
主の許しを得たウエディから莫大な発言力が湧き上がる。
――【宝具】。
古参のみに許された、古参を象徴する、奇跡を成す兵器。物質化した奇跡。
その神秘が、今まさに発動しようとしている。
J.J.「まずい、アイバー、警戒を――」
おんびんにたのむ
ウエディ「『絶対穏便宣言』!!」
アイバー「ぐっ!!・・・っ!?」
宝具が発動した瞬間、ウエディの体は白く光り、そのままアイバーへと突撃する。
それを防いだアイバーだったが、直後大きく体勢が崩れた。
J.J.「『絶対穏便宣言』・・・まさかウエディの正体は・・・!?」
翠星石「そうさ。僕のウエディは古参中の古参、先生トイレ!」
翠星石「『絶対穏便宣言』は相手の敵対心を極限まで低下させ、戦闘意識を鈍らせる!」
翠星石「J.J.、お前のアイバーはもう終わりだな!」
先生トイレ「・・・」
得意げに宝具の詳細を語る翠星石。
アイバーと戦闘中の先生トイレが宝具の詳細をあっさりバラした主に何か言いたげだったが、すぐに戦闘へと意識を切り替えた。
おかげで正体と宝具の詳細が分かったが・・・しかし、どうする・・・。
現状アイバーが圧されているが・・・こちらも宝具を使うべきなのだろうか?
まだ緒戦。いきなり宝具使うのは躊躇われる。今後も考えるなら、なおさらだ。
しかしこのままでは負ける。そのリスクを考えれば・・・。
J.J.「仕方ない・・・。アイバー、こちらも――」
――ガタンッ
その時だった。
戦闘エリアから少し離れたコンテナの影から物音がするのと同時に、誰かが駆け出していく姿が見えた。
後姿から察するに、僕と同じ年くらいの、一般人らしき少年。
運悪くこの戦闘に居合わせてしまったのだろう。
翠星石「あ?あー、確か一般人に戦闘を見られた場合は、手っ取り早く口封じに殺すのが鉄則だったよなぁ?」
翠星石「・・・ちょうどいい。おい、J.J.。この場は預けといてやるよ。その代わり、アレは貰うぜ。」
翠星石「おい、ウエディ。あいつを追うぞ。」
ウエディ「・・・いいのか、マスター?このままいけば・・・」
翠星石「構わねえよ。向こうの宝具の事もあるし、何よりてめえの宝具は燃費悪ぃんだ。さっさと補給しに行くぞ」
そういって翠星石はウエディと共に去っていき、戦闘を中断されたアイバーがこちらに戻ってきた。
アイバー「・・・マスター。」
J.J.「・・・いくらルールだとしても、一般人の殺害を見逃すのは夢見が悪いな。」
アイバー「・・・。」
J.J.「それに、翠星石に回復させずに畳み掛けたい。アイバー、悪いけど・・・頼めるか。」
アイバー「了解だ。私としても、マスターの選択は好ましい。」
僕はアイバーと共に、翠星石たちの後を追う。
デスノート戦争第一の夜は、まだ終わらない――。
...To be continued
最終更新:2012年03月10日 13:25