■第一夜 -A First War-
「ハァ…ハァ…!く、くそ!なんだよあれ!?なんなんだよ、くそぉ!!」
悪態を吐きながら、
姉小路は自宅へと続く道を駆け抜ける。
時折転びそうになりながらも必死に体制を戻し、ただひたすらに前へと。
アレがなんなのかは知らないが、追い付かれたら死ぬ。
そう姉小路は悟っていた。
「それもこれも、全部unkのせいだ…!クソ、あいつ…クソォ!」
元々姉小路は普段、この時間帯は自宅でのんびり寛いでいるはずだった。
それを今日に限ってこんな夜遅くに変える羽目になったのにはある事情がある。
その事情を作った者の名はunk。姉小路といろいろ対立関係にある、同級生である。
きっかけは今日の掃除の時間。
掃除の場所決めという些細なことから、姉小路とunkは言い争うこととなった。
喧嘩自体はいつもの事であるし、掃除の時間は限られている。
そこで、姉小路は一つの勝負方法を提案した。
そう時間誰もがやったことあるであろう遊び――そう、箒と雑巾を使った野球。
雑巾を丸めてボールとして投げ、箒で打ち返すだけの単純な遊びである。
投手はunk。打者は姉小路。
unkはワザと丸め方を緩くしたままの状態で、雑巾ボールを姉小路に投げ付けた。
投げられた雑巾はunkの狙い通り、姉小路の元へ辿り着く前に広がり、速度を落とす。
広がった雑巾を放棄で打ち返すのは非常に困難。
何故なら、広がった雑巾を叩いても箒に絡まってしまうだけだから。
姉小路、万事休す――外野にいた彼らと一緒の掃除班員はそう思った。
しかし、そこは遊び慣れている姉小路である。
打つのではなく、下から救い上げるような、絶妙な力加減で雑巾を打ち返した。
打ち返された雑巾はunkの頭上を大きく越えるHR球!
姉小路はドヤ顔で「unkざまぁwww」と嗤い、直後蒼白な表情へと変わった。
大きく打ち上げられた雑巾はunkの頭上を越えた後、unkの後方の扉へと一直線。
そこに顔を出したのは、掃除の進行状況を見に来た我らが担任であった。
担任の顔面に直撃する雑巾。固まる姉小路。
真っ先に散る外野。素早く掃除に戻るunk。
結果。
姉小路は教室の居残り掃除をただ一人命じられたのだった。
成績は常に上位、運動も出来、先生受けの良いunk。
成績は悪く、運動もそこそこ。先生受けはあまり宜しくない、お調子者の姉。
unkは「姉小路君が一人で遊んでました!」と嘘を吐き、外野までも裏切った。
姉小路が夜遅くに帰宅することになったのには、こういう事情があったのである。
すっかり暗くなってしまった中、帰路に付く姉小路は、近道をすることにした。
学校と自宅の間にある、今はコンテナ置き場となっている空地。
しかし、そこを通り抜け、待っていたのは信じられない光景だった。
一見普通の人間に見えるが、明らかに異常な二人の化け物が争っていた。
争い事は素人の姉小路でさえ、遠くからでも感じる圧倒的威圧感。
思わず後退り、音を立ててしまった姉小路は一目散に逃走したのである。
見え始めた自宅の入り口。しかし――。
ウエディ「……」
さっきの化け物が、腕組みをして自宅前に陣取っていた。
姉小路「う、うおあああああああああああああああ!!?」
ウエディは武器を構える。
ウエディにとって、生前も、そして今も人殺しは趣味ではない。
しかし、今の自分はデスノート戦争に呼ばれた一コテに過ぎない。
マスターが殺すと決めたなら、殺さなくてはならないのだ。
ウエディ「……」
せめて苦しまぬよう、狙うは一撃での即死。
コテの一撃は、決して一般人に防げるものではない。
正確無慈悲なウエディの攻撃は、確実に姉小路の急所を貫こうとしていた。
(こんなところで俺は殺されるのかよ……)
死が迫る一瞬、姉小路はあまりにも理不尽な死の訪れに――
(ふざけんな……ふざけんじゃねえぞ……!)
怒りを覚えた。
姉小路「俺は!あの糞野郎を即死させてやるまで……まだ死ねねぇんだよぉ!!」
それは姉小路の、生への渇望からくる必死の叫びだった。
一見無駄に思えたその咆哮は、しかし奇跡を引き起こす引き金となった。
ウエディ「……! こ、これは……!?」
姉小路「…………あ?」
彼の義父が生前家の敷地内に建てた、古びた大きな土蔵。
そこから眩い光が発生する。
そして次の瞬間。
???「はぁっ!!」
ウエディ「くっ……!?」
姉小路「……は?」
そこから出てきた影が目の前の怪物を吹き飛ばしていた。
その影は、一見すると年は姉小路と同年代頃に見える、ただの優男風の青年。
体の線は細く弱そうに見えるが、しかしその実化け物を押し退けてみせた。
姉小路が観察している間に、彼は敵を一瞥し、油断なく構える。
ウエディ「なるほど、少年はマスターだったのか。 そして……」
???「……」
ウエディ「その気勢、そして威圧感。最優のLで合っているか?」
???「さて、どうでしょう。アイバーやウエディ、夜神月かもしれませんよ?」
ウエディ「それは無いな。アイバーは先程戦り合い、月にそこまでの力はない」
ウエディ「肝心のウエディは……目の前にいるからな」
???「なるほど。……どういうつもりです?」
見ればウエディは構えを解き、同時に先程まで感じていた威圧感も消え失せていた。
更に両手を挙げ、戦意が無いことをアピールまでしている。
ウエディ「戦いたいのは本音だが……マスターから帰還を命じられたものでな」
???「逃がす…とでも?」
ウエディ「無理に戦ってもいいが、その場合はそちらのマスターが危険じゃないか?」
???「……分かりました」
ウエディ「では、また。次は全力で死合えることを望もう」
そう言い残し、化け物は去っていった。
青年はしばらくそれを見送った後、こちらを振り返る。
そして――。
「問います。あなたが私のマスターですか?」
...To be continued
最終更新:2012年03月10日 13:27