B-11:34-00430-01:薊:リワマヒ国 さん

「疑惑(2) 暗躍篇」



*この作品は、連作で2つの小作品で構成されています。


 オリオンアーム内tera領域。
第7世界からの介入者が数多く集うこの世界には、どうやら何か重要な秘密が隠されているらしい。
そのためかテラ領域の藩国群は事ある毎に存亡の危機に見舞われている。
そしてまた、その秘密に関わる新たな危機が近づいていた事に当時の私達は誰も気付いていなかった。

これは華やかな舞台の裏でひそやかに繰り広げられた冒険の軌跡である。


 ここはリワマヒ国。
莫大な生産量を誇る食糧生産地として名高いこの国は、生産した食糧の大半を市場に卸している。
資金源を持たないこの国にとって市場は貴重な収入源であり、市場取引は命綱である。
そのため市場の閉鎖は命取りとなりかねず、必然的に藩王 室賀兼一は市場を注視するようになる。
兼一王は摂政を務める東 恭一郎と共に市場の動きを監視し、閉鎖が起こらぬよう介入を試みた。
食糧の安定供給と並行して数々の取引が繰り返され、いくつかの事件の末に
リワマヒ国は市場に顔が利くようになっていった。


「……おかしい」
東は違和感を感じていた。
今後のためにと過去の市場の流れを分析していたところ、些か不自然に思える動きが見つかった。
物流の増加に伴い拡大し安定したかに思えた市場が急激に縮小していたのである。
大規模な公共事業が行われた後であれば市場の縮小はやむを得ない。それは理解できる。
しかし7800億ともなると公共事業だけでは説明がつかない。ここまで極端に縮小するものだろうか?
不正な支出があったのだとしたら法官の仕事にも関わってくる。調査した方がいいのかもしれない。

東は兼一王に相談し、調査に乗り出す事にした。
まずは経済に明るいナイアル・ポー教授に助言を請おう。教授の見解が問題ないのならそれでいい。
だが、専門家の目から見ても不自然だとしたら……


 一方、おこたの間では……

「冬ですネウ~」
どてらを羽織ったシコウがコタツに突っ伏していた。

リワマヒ国は南国に分類されてはいるが、季節の移り変わりによる寒暖の差が激しい国である。
オフシーズンの到来と共に少しずつ暑さが和らぎ、今やすっかり冬の気配が色濃くなっていた。

私こと薊も同様の格好をしている。焼きミカンを食べながらシコウに協調する。
「冬ですねー」
ずずっと茶をすする。ちょっと熱い。
たくあんを茶に浸して食べ、再度茶をすする。
「染みますネウー」

猫はコタツで丸くなる。護民官だろうと補給士官だろうと寒いものは寒いのである。


 東と兼一王は本格的に横領の調査を始めたらしい。

「ただいま戻りました」
「おかえりなさいませ~」
「おつかれさまですー」

事が事だけに、戻ってきたばかりの2人に茶を出しながら経過報告を促す。
「お疲れでしょうけど話してください」


「……という具合に、ケーキを輸入した会社は既に倒産し綺麗さっぱり引き払われていた」
「まさか我が国から事件が始まっていたとは思いもしませんでした」

税務資料を当たると、ケーキの輸入という名目で多額の資金が国外へ流出していた事が判明した。
資料によると100億相当のケーキが輸入されており、頻繁に運送会社が出入りしていたようである。

「賞味期限内に売り切れなくて倒産しちゃったんですか?」
「いえ、ケーキは偽装でした」

あまり日保ちのしない品を莫大に、それも短期間に輸入するというのはおかしな話である。
調査を進めたところ、実際はケーキではなく航空機やI=Dの部品が流通していたらしい。

「ケーキではなく計器類だったんですね」
「不謹慎な」
「すみません」
「まあ、駄洒落のように聞こえなくもないですが、洒落にならない事態である事は確かなようです」

輸入された大量のケーキは羅幻王国を経由して海路で運搬されたらしい。
輸出先は……タマ民主主義藩国!?

「やっぱりタマですか?」
「そのようですね。表向きには、ですが」
「単独で動いているとしたら性急で大胆すぎるようにも思える」
「タマは捨て駒でトカゲの尻尾切りですかネウ?」

まだ調査を始めたばかりだとはいえ、謎は深まるばかり。
宇宙に巨大な円盤が出現したという情報がもたらされるのはもう少し後の話である。


 ここはリワマヒ国。
市場の信頼を得た事が裏目に出てか、陰謀の拠点が置かれてしまっていた国。
今後は公的な査察機関の確立を検討していく必要があるのかもしれない。

<了>




作品への投票・ひと言コメント

【テンプレート】
○国民番号:名前:藩国
○支払い口座:投票マイル数
○作品へのコメントをひとこと


名前:
コメント:

すべてのコメントを見る

-
最終更新:2008年06月20日 12:08