サントラ・楽曲別使用状況
「迷宮の十字路」オリジナル・サウンドトラック
前作「ベイカー街の亡霊」は19世紀末のロンドンを舞台にしていたため、西洋風味の強いBGM群でしたが、本作は一転して京都を舞台にした和風の物語です。そのため、他のコナン作品ではまず耳にしない和楽器中心の構成になっています。ただ、全てが純和風の楽曲になっているかと言えばそうではなく、そこはさすが大野克夫氏。そもそも京都=伝統・和の世界という思考はステレオタイプにすぎません。伝統を尊重する一方で、そこに生きる人々は過去に囚われているのではなく、やはり現代を生きているのです。京都駅を見たことのある人なら分かるでしょうが、極めて現代的な建築であり、そこから発せられるメッセージは都会的なものを多く含んでいます。従って、和の比率が極めて少ない要素も京都の一部なのです。今回のサントラは確かに和楽器が目立ちまくっていますが、純和風なものだけではなく、西洋音楽的な要素も盛り込まれているのが本サウンドトラック最大の魅力ではないでしょうか。
テレビでは’04年1月5日放映の第345話「黒の組織と真っ向勝負 満月の夜の二元ミステリー」から使われ始めました。前作のBGMが’03年1月6日放映の第304話「揺れる警視庁 1200万人の人質」に解禁されたので、一年ぶりになります。「天国へのカウントダウン」以降、ちょうど一年で次回作の映画BGMが解禁するパターンが続いており、いい感じで安定してきたと言えるでしょう。
ただし、「ベイカー街の亡霊」の紹介時にも書きましたが、この時の音響監督は小林克良氏ではなく浦上靖夫氏と井澤基氏に交代しており、新曲導入があまり進まなくなっています。「ベイカー街」でもそれまでの楽曲に比べると使用頻度が大きく落ちましたが「迷宮の十字路」のBGMはその比ではなく、ほとんどの曲が使われておらず、使われたとしてもほんの僅かな回数に止まっています。本作は和楽器の曲が多いためにかなり特殊なシーンでないと使いづらいのは分かりますが、その事情を察した上でも物足りないと感じます。
1.名探偵コナン メイン・テーマ(十字路ヴァージョン)
久しぶりに「14番目の標的」「世紀末の魔術師」型イントロに戻った新アレンジだ。最大の特徴は何と言ってもイントロ部分で聞ける「ポンポン!」だろう。鼓を楽器に使ってメイン・テーマをアレンジした例は他にはなく、和のテイストを見事に取り入れ、かつ原曲のかっこよさは失わずに優しい音色で作られている。
テレビでは未使用。和風のストーリーなら使う機会があったような。
毎度恒例のクイズシーンで使われている。前作のクイズ曲(未使用)はあまりにもふざけていたが、今回はクイズらしい安定した作りをしている。やはり和楽器が印象に残る。
西暦 |
話数とサブタイトル |
使用回数(2回以上のみ;赤) |
年間使用話数と回数(赤) |
備考 |
’05 |
410.同時進行 舞台と誘拐(後編) |
2 |
1(2) |
共にイントロ部分・現実音 |
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合計1(2) |
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和楽器満載の一曲だ。イントロは静かに始まりそのまま戦闘シーンへと移っていく。戦闘シーンの曲も和楽器で構成されており、歴史作品の音楽を聴いているような錯覚に陥る。映画では服部平次が京都駅近くの公園で犯人と決闘するシーンで使用された。
テレビでもイントロ部分のみ、現実音としてだが第410話「同時進行 舞台と誘拐(後編)」で使われた。
長いサスペンス曲で、大野氏らしい繰り返しメロディの中にある副旋律が印象的だ。映画では中盤の平次とコナンが遺体を見回るシーンで使われた。なお、序盤の警視庁の会見シーンで流れたのは、これをスローテンポにしたバージョンであり、本稿ではそれを区別して記載した。
この曲はテレビでも使えたと思うんだが…和楽器の音が余計ならそれを消すだけで推理シーンにも事件現場のシーンにも役立ったはずで、やはりもったいない。
曲名通りのシーンで使われた。服部がバイクでコナンを連れ回すシーンである。独特の爽やかな音色が特徴で、桜や古都のイメージにぴったりである。
テレビでは使われていない。旅先のテーマとして流してもよかったかと思う。
冒頭の「まるたけえびすに おしおいけ~」のバックに流れていた神秘的で儚い曲だ。幼き日の服部平次がぽーっとしている光景が思い浮かぶ。
ここまで日本的な曲だと使いにくいが、「天国へのカウントダウン」の「日本画の紹介」が使われたぐらいなのだから挑戦してほしかった。一度でも自白曲として流してくれていれば感動ものだったんだが。
純和風の曲が続く。清水寺のシーンで使われた。重厚感もあるので儀式的なシーンで使ったら面白かっただろう。
同じく純和風の楽曲で、これもタイトル通り鴨川を眺めるシーンで使用された。「清水寺」より哀愁が漂っているので、過去の苦い事件の回想や、ふと現在の境遇についてしんみり語るようなシーンがあれば使えたはず。
仏が盗まれたと分かるシーンで使われた。タイプ的には事件発生曲か事件の証拠を発見しCMへ繋ぐ際に使う曲だと思う。
これは絶対に使う機会があったはずである。
不気味な影がにじり寄るイメージのイントロから追跡のテーマに転じる。平次とコナンがバイクで犯人を追いかける一連のシーンに流れていた曲である。
この曲はそこまで和風ではないので間違いなく使う機会があった。個人的には第383話「甲子園の奇跡!見えない悪魔に負けず嫌い」の捜査シーンに充ててもよかったのではないかと考えている。
西暦 |
話数とサブタイトル |
使用回数(2回以上のみ;赤) |
年間使用話数と回数(赤) |
備考 |
’05 |
419.八岐大蛇の剣(前編) |
2 |
1(2) |
共に前半部分 |
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合計1(2) |
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ようやくサスペンス曲の登場だ。映画では暗号絵について議論するシーンで使われた。和風ではあるものの正統な推理曲であり、後半は一部メロディが変化する。
テレビでもなんとか一話のみ使われた。第419話「八岐大蛇の剣(前編)」だ。そう言えばこの話では「絵の推理1」以外にも本作のBGMが使われているがなぜなのだろうか。ミステリーツアーの作品で、ヤマタノオロチという日本神話に登場する竜がキーワードになっているのだが、それ以外に「和」を感じさせるものが特にはない。つまり「日本神話」がテーマというだけで本作のBGMを使うのならば他の物語でも使えばいいのに…と言いたいのである。また第420話の後編では一曲も「迷宮の十字路」のBGMが使われていないのだから更に奇妙な話である。
「絵の推理1」はかなり使いやすい曲だと思う。考察シーン、推理シーンといくらでも活躍できただろう。
映画では中盤過ぎのコナンと平次の推理シーン及び終盤の事件解決後に流れた、美しい大団円のテーマである。この曲は全く日本的でない。
これも是非使ってもらいたかった一曲である。大きな事件の後の締めくくりに流れれば気持ちがすっきりするだろう。
序盤の平次と和葉が登場する場面で流れる、超切ない愛の想い出曲である。なかなか鳥肌もののメロディなのでテレビで使われる日を期待していたのだが…
特に第421・422話「イチョウ色の初恋(前・後編)」でなぜ使わなかったのか疑問に感じる。その2話では確かに他の「迷宮~」曲が使われている。しかし圧倒的に少なく物足りない。やはりテーマからしてこの曲を使わない手はなかったと思う。残念でならない。
西暦 |
話数とサブタイトル |
使用回数(2回以上のみ;赤) |
年間使用話数と回数(赤) |
備考 |
’05 |
423.探偵団と青虫4兄弟 |
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1 |
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合計1 |
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蘭と和葉が雑誌のインタビュー記事について語っているシーンで流れる、少し寂しめの感情曲である。
第423話「探偵団と青虫4兄弟」で使用された。またなぜこの回だけ?と不思議でいっぱいなのだが流れた。
なお’07バージョンが作られており、そちらの方は意識的に使われた時期がある。
西暦 |
話数とサブタイトル |
使用回数(2回以上のみ;赤) |
年間使用話数と回数(赤) |
備考 |
’05 |
421.イチョウ色の初恋(前編) |
2 |
2(5) |
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422.イチョウ色の初恋(後編) |
3 |
前編のおさらい・1 |
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合計2(5) |
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月明かりに照らされた工藤新一と蘭がやり取りをする回想シーンで流れた曲だ。「ルールルルー ルルルールー ルールルルー♪」という声が入っている。いかにも初々しいカップルのテーマという趣だ。
テレビでは第421・422話「イチョウ色の初恋(前・後編)」で使われた。さすがにこれは使われる予感がしており、意識して使ったのは分かるが、どうも盛り上がり切らないのは他の「迷宮~」曲を惜しみなく流さないからだと思う。上述したトラック13「初恋の想い出」も一緒に使われていれば更にテンションが上がっただろう。
西暦 |
話数とサブタイトル |
使用回数(2回以上のみ;赤) |
年間使用話数と回数(赤) |
備考 |
’05 |
419.八岐大蛇の剣(前編) |
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1 |
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合計1 |
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事件発生曲。映画では遺体発見によりコナン達が駆けつけるシーンで流れる。
これは定番曲と思うのだが、やはり第419話「八岐大蛇の剣(前編)」で一度使われただけだ。
前半は緊迫感のある推理曲、後半は考察レベルの軽いメロディに変化する。映画では前半と後半をそれぞれ分けて複数回使われた。
この曲は是非ともテレビで中核を担ってほしかった。特に前半の推理部分は犯人を指摘するまでの流れや証拠を突きつけにかかる詰めの段階で使えば凄く雰囲気が出て盛り上がったと思うのだ。
西暦 |
話数とサブタイトル |
使用回数(2回以上のみ;赤) |
年間使用話数と回数(赤) |
備考 |
’04 |
345.黒の組織と真っ向勝負 満月の夜の二元ミステリー |
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1 |
前半部分・音響調整バージョン |
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合計1 |
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小五郎が謎解きするのと綾小路警部の連れているシマリスがチョロチョロ動くシーンで使われた。前半は推理曲、中盤にシマリスの可愛いテーマを挟んでまた推理、そしてまたシマリスと一曲の中で目まぐるしく表情が変わる。
第345話「黒の組織と真っ向勝負 満月の夜の二元ミステリー」で灰原哀が目覚めて逡巡するシーンで使われた。使われたのは副旋律を前面に押し出したバージョンになっており、これにより推理曲から日常の穏やかな時間を演出するテーマになったことに驚いた。もともと哀愁入りの推理曲だが、少し触るだけで曲の印象が更に変わることもあるのだ。
’07バージョン、ただし前半部分だけが作られており、今度は哀愁を土台にした曲に生まれ変わっており、締め部分が余韻を残すことで自白曲としての性格を帯びることになった。
映画では複数回使われている。前半部分は「絵の推理1」をもう少し力強くした推理曲、後半部分は「証拠探し」のアクション曲になっている。
テレビでは一度も使われておらず、理由が分からない。
犯人から和葉を預かった連絡が入るシーンで流れる緊迫サスペンス曲だ。
テレビでは一切使われていない。推理始めや「引き」に使えただろう。
「弓矢~モーターバイク・バトル」イントロ部分をアレンジした戦闘曲である。和楽器が強く主張している。
「太刀」のようなメロディに強いイントロがついた曲だ。
鞍馬山での戦闘中、服部平次がやって来るシーンで使われるとてもかっこいい曲である。
この曲は「江戸川コナン、探偵さ」や推理の詰めで聞きたかった。
引き出しのついたたんすを見ながら平次が推理をする場面で使われる。締めは犯人が襲いかかってくるのに合わせて「太刀」型戦闘曲に変わる。
推理部分はテレビでも使えたはず。
「翁の面~対決1」の戦闘部分のアレンジ(よりスピーディな感じになった)+絶体絶命を表現するブリッジ曲から成る。平次と犯人の最後の対決シーンに使われた。
…この曲は使いにくいだろう。とは言え絶体絶命部分はお決まりのメロディのひとつなので流せたかも。
形勢逆転。コナンが戦闘に戻ってくるシーンに挿入された勇姿溢れるテーマだ。
これもテレビで聞きたかった。もちろん犯人退治のシーンもそうだが、コナンが現場に駆けつけてみんなを助けるシーンなど、初期のテイストを感じられる場面なら結構使える。
「瞳の中の暗殺者」以来になる「キミがいれば」だ。これまでは伊織が歌うのが定番だったが、本作ではReikoが歌唱を担当した。伊織とはまた違って洗練されて流れるような感覚がある。映画では犯人を全て退治する終盤シーンで使われた。
テレビでは使われなかった。
事件後、仏像が戻るシーンで流れた曲だ。仏様っぽくとぼけたような優しいような音色で聞き心地がよい。大団円のテーマというのとは違うが、一件落着感を表現するのにはいい曲である。
旅情ものの事件解決後Cパートで流せなかったかなと思う。
西暦 |
話数とサブタイトル |
使用回数(2回以上のみ;赤) |
年間使用話数と回数(赤) |
備考 |
’05 |
422.イチョウ色の初恋(後編) |
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1 |
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’06 |
437.上戸彩と新一 4年前の約束 |
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1 |
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合計2 |
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京都駅の新幹線のホームで蘭がハンカチ妄想をして「やっと逢えたね」と心で呟くシーンで使用された。「月夜のテーマ1」と異なり「ラーラララー ラララーラー ラーラララー♪」になっている。
テレビでは2回使用された。
なお、「月夜のテーマ」は’07バージョンが作られている。そちらは音声なしで楽器のみの構成となっており、正確には「月夜のテーマ1」のアレンジでもあり「月夜のテーマ2」のアレンジでもあると言えよう。
西暦 |
話数とサブタイトル |
使用回数(2回以上のみ;赤) |
年間使用話数と回数(赤) |
備考 |
’05 |
422.イチョウ色の初恋(後編) |
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1 |
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合計1 |
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毎度のED後オチの曲。メロディを聞くと「月夜のテーマ」のアレンジだが、全く別のギャグ曲になっている。
一度しか使われていないが、’07バージョンが作られており、そちらはもう少し使われている。ただし近年はご無沙汰している。
ボーナストラックにカラオケ用の、つまり歌声の入っていないものが収録されている。正直なところ、カラオケを入れるぐらいなら未収録曲を一曲でも入れてほしかった。
序盤に犯人が男たちを殺害していくシーンで使われた。本来なら「対決1」を使う予定だったのだろうが、イントロの「翁の面」を更に拡張アレンジして用いた。こうすることで犯人の不気味さが強調されるようになった。
警視庁の会見シーンで流れた曲。サントラ収録バージョンの方は中盤のコナン・平次の捜査シーンで使われた。サントラのものよりもスローになっており、怖さと不気味さが増した。
和楽器によるミニブリッジ曲で、コナン一行が京都にやって来たシーンで使われている。
ミニアクション曲。平次が泥棒をやっつけるシーンで使われた。
橋の上にいるコナンに音もなく近づき、手にした竹刀で襲いかかる!というシーンで使われた怖い曲である。
例の手毬歌の回想の続きのシーンで流れた。サントラに収録されているものと異なり、プラスアルファの旋律がある。
「弓矢~モーターバイク・バトル」のイントロ部分のアレンジ。完全に忍び寄る犯人のイメージ用ブリッジ曲である。「瞳の中の暗殺者」において「漆黒の殺意」がそんな使われ方をしていたのでシンクロする。
ブリッジのサスペンス曲。病室を覗いた蘭が、服部平次がベッドにいないことを確認する場面で使われた曲だ。
「絵の推理」にパーカッションで打点する音が入った曲。終盤に絵を見ながら推理を進めていく場面で使われた。
灰原哀が「酒と薬」の力を使って一時的にコナンを新一に戻したカラクリを説明する際に流れていた曲だ。未収録だがなかなか味のあるサスペンスなので、テレビで流用してもよかったと思う。
最終更新:2014年07月13日 01:06