SUZUHARA陣営プロローグSS『激闘! MJB全日本トーナメント関東大会編』
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オッス! 俺の名は赤尾ジン、11歳!
3度の飯より魔人ボーグの、熱血ボーガー野郎さ!
波乱の連続だった地区トーナメント予選、俺達は次々と現れる強敵を倒し、
決勝戦ではチーム・ダークマターに僅差の勝利! 全国大会への切符を手に入れた!
雪浜博士の協力で、俺の相棒・レオバースト01もレオブレイザー01にカスタム・チェンジ!
Dr.シュバルツの世界制覇の野望は、俺達チーム・ビッグバンが止めてやる!
さあ、今週の魔人ボーグも――ガンガン行かせてもらうぜッ!
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あの死闘から1週間――
俺は全国大会のチケットを握り締めて、トーナメント会場に立っていた。
さすが全日本トーナメント、すげぇ熱気だ。
闘志がビンビンに伝わってくるぜ……!
「ひゃあ、スッゲー人だかり! まさかこいつら全員ボーガーかよ!?」
「フフ……この程度、驚くことではござらぬよ、ジン殿」
「人が多すぎて流されちゃいそうでヤンス~」
「MJB全日本トーナメントは、日本一のボーガーを決定するためのイベントなのよ。
つまりこの関東大会だけでも、日本の東半分のボーガーが集まってるの」
こいつらはチーム・ビッグバンの燕野ムサシ、猪八戒ジロウ、そして雪浜リン!
かつては敵だった事もあったけど、今は頼もしい仲間(ライバル)達だ。
「まったくあなた……何も知らないでここまでやってきたの?」
「う、うるせぇな~……いつも通り勝てばいいんだろ!
バージョンアップした俺のレオバースト――レオブレイザー01とのコンビネーション!
ここにいる連中全員に見せ付けてやるぜぇーッ!」
「ヒッヒッヒッ、それはどうでヤンスかね、アニキ!
おいらのジオハウンドだってカスタム・チェンジでさらに強力になっているでヤンス!」
「フッ、それを言うなら拙者のガンイーグルマグナ、
スピードではチーム・ビッグバンの中でも最速にござる……」
「ああもう、変な意地張り合ってないで。さっさと参加登録済ませちゃうわよ……
……!? あ、あの人は!?」
受付の方に振り向いたリンの表情が固まった。一体なんだ?
いや、あの男……後姿しか見えねぇが、な~んかヤバイ予感がするぜ。
「リン、どうしたでヤンス? 腹でも下したでヤンスか~?」
「――金城シンヤ! まさか彼も参加するというの!?」
「ふむ。MJB全日本トーナメント3年連続優勝の実力者……!
殿堂入り目前とまで言われているあの男が、今年も参加しているとは脅威でござるな」
あっ、男がこっちを横目で見て笑っていやがる!
「ふっ……さすがはあの雪浜博士の娘。よくご存知だね。
燕野ムサシ君も相当な実力者と聞いている――
君達2人との戦いには期待しているよ……それと期待の新人、赤尾ジン君にもね」
「なっ……! やる気かてめぇ! 全日本チャンプだか何だか知らねぇが、
スカした態度でカッコつけてるんじゃねぇーっ!」
「えっ? お、おいらは無視でヤンスか……?」
「ふっ。あせる事もあるまいよ。今回のトーナメントは個人戦……
それもAブロックからHブロックまで8つのブロックでの振り分けだ。
君達の実力が確かならば、いずれまみえる事になるだろうさ――
この僕の愛しい彼女(マイハニー)、ノブレスプランセスとね。
ハーッハッハッハッハッハ!」
「ぐぬぬ……好き勝手言いやがってあンのキザ野郎め~~っ!」
高笑いと共に去っていく背中に向けて、拳を震わせる俺。
チーム・ダークマター程じゃあねぇが、気に入らねー野郎だぜ!
まるで連載初期に敵だった頃のムサシみてーなキャラだ!
「落ち着くでござるよジン殿。決着はボーグバトルにて行うのが武士(もののふ)の礼儀にござる」
「でも……さすがチャンプだけあって、尋常じゃあないオーラだったでヤンス。
おいら、勝ち進めるかどうかちょっとだけ不安になってきたでヤンスよ~」
「やれやれ、本当に先が思いやられるわね、あなた達……
ほら、仕方ないから私が全員分参加証を貰ってきたわよ」
いつの間にか参加登録を済ませていたリンがこっちに戻ってきた。
さすがリン! チーム・ビッグバン一番のしっかり者だぜ。
「む、これは。拙者達全員――」
「別々のブロックでヤンス!」
「そういう事よ。今回は前回のようなチームバトルじゃあないわ。
全員がライバルって事ね」
「なるほどな。へへっ、なんだかワクワクしてきたぜ!」
全員がライバルか……面白いじゃあねぇか!
それに、あの地区予選を潜り抜けてきた、まだ見た事もないボーガーとの戦いも待っている!
燃えてきたぜ!
「じゃあ皆、次に会うのは決勝だな!」
「ええ!」「うむ!」「ヤンス!」
「よーしッ! そうと決まればみんな、ガンガン行くぞぉーッ!!」
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同時刻……会場を見下ろす、切り立った丘の先端。
ジン達のやり取りを監視するかのようにして立つ、3つの影。
魔人ボーグによる世界制覇を企む、暗黒ボーグ軍団の面々だ。
お馴染みのDr.シュヴァルツ。仮面のボーガー、マスカレイド・J。
そして3人目……ローブに身を包んだ、謎の男。
「ククク……やはりノコノコと現れたようだな、チーム・ビッグバン。
全てが仕組まれているとも知らず……愚かなガキ共だ」
「ええ。あなた様の計画通り……奴らはもはや罠から逃げられませぬ」
「……」
「我ら暗黒ボーグ軍団の『プロジェクトZX』も最終段階に入った。
くれぐれも手を抜くなよ……マスカレイド・J。
たとえ相手が、あの赤尾ジンであろうとな」
「……! ――分かっております。
私はこの仮面と共に過去を捨てた男……全ては新しき世界のために」
仮面の奥の動揺を悟ってか、Dr.シュヴァルツの口角がニヤリと釣り上がる。
圧倒的なる悪のカリスマが、ついに動き始めるのだ……
天がその邪悪な気配を感じ取ったのであろうか。全国大会会場上空に、暗雲が立ち込めつつあった。
「よし、行くぞ……我ら3人の闇のボーグパワーで、この大会を混沌に陥れようではないか。
フフフ……クハハハハ! フハハハハハハハハハ……!」
「クックックッ……」
(……許せ……弟よ……)
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――10分後。
「な、なんだって……!? もう一回言ってみやがれ!」
俺は思わず、大会の係員に掴みかかっていた。
係員が悪いわけじゃねぇ……だけど俺は、どうしても信じられなかったんだ!
「あのムサシが1回戦負けだと……! そんなわけねぇだろ!
ムサシのような強ぇえヤツが、簡単に負けるわけあるかーっ!!」
「じ、事実です……しかも!」
「猪八戒ジロウさんのDブロック……雪浜リンさんのEブロックも……!
さらには優勝候補筆頭だった金城シンヤさんのCブロックに至るまで!
ほとんどの選手が全滅、あるいは再起不能に……!
現在、かろうじて生き残った運営スタッフが選手の安否確認を……!」
な、何を言ってやがるんだこいつは!?
全滅……!? 再起不能!? ボーグバトルだぞ、これは!
こんな事を仕掛けてくる外道野郎は、俺の知る限り一人だけだ……!
「ウオオオオーッ!! Dr.シュヴァルツ――ッ!
てめー、こんな卑劣な勝ち方で嬉しいのかよーッ!
腐っても……てめーだってボーガーの端くれじゃあなかったのかよ――ッ!!」
ウオオオオーッ!! 俺は天に向かって吼えた!
許せねぇぜ……Dr.シュヴァルツ!
「そ、それが……」
「Dr.シュヴァルツのチーム3名も全員、死亡または再起不能との報告が!」
「なにィ!?」
どういうことだ!?
じゃあこの惨事を引き起こしているのは……一体誰だというんだ!?
『カーッカッカッカ! 見える見えるぞ……愚劣極まる有象無象よ!』
「ば、馬鹿な!? 姿は見えないけども笑い声は聞こえる!」
『傍ら痛し!』
吹き荒ぶ一陣の風!
俺の隣に立っていた係員は一瞬にして切り刻まれ絶命した!
そして土煙の中から現れたのは……見た事もない魔人ボーグ――
いや……
魔人……ボー…グ…………?
両手に刃物を携えた女の子がいた。天使型の人型ボーグがスピアを構えている。
目つきのヤバイ幼女型メカが狙いを定めている。シリンダーを背負った異様な男。
ボーグの原型すら留めていない産業廃棄物があった。ミニ四駆があった。
怪談話を流す日本人形がゆっくりと歩を進め、ふたなりメイドがメイドスティックを強調する。
禅僧型のデザインには何の意図があるのか。ガンダムが紛れ込んでいる意味も分からない。
やたらと騒ぎ立てる人型ロボット。淫獣の股間に蠢く不思議なコテカ。
カツオを差し出す男の娘は何者だろうか。無貌の大型ボーグは、もはや兵器にしか見えない。
焼きそばパンを搭載した夏休みの自由工作が置かれていた。あんぱんまん。機械ですらない。
工事用と見紛う巨大な重機が、普通の人間が、布に覆われた名状しがたい何かが。
そして直方体状の正体不明の無機物が――
誰がどう見ても明らかに天狗と分かる、1人の不審人物に率いられていた。
異常だ。この連中。
到底、この会場内で存在が許される形状とは思えない。
「お、お前ら、まさか魔人ボー……」
『クァッカッカッ! 察しの通りよ。此奴らは我が従者の烏天狗』
―― 一体、なんなんだ。
冷や汗と震え。無限に湧き上がる困惑と恐怖。
魔人ボーグ。俺の求めたボーグバトルとは、こんなものだったのか。
夢ではないのか。何かの間違いではないのか。
天狗のコルトパイソンが火を噴くと同時、思考の渦も永久に途絶え――
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死者78名。行方不明者123名。重傷者および発狂者60名。
魔人ボーグ界史上最悪の大惨事として語られるMJB全日本トーナメント関東大会は、
月面ゲームショウの3ヶ月前、開催と同時に閉幕を迎えている。
最終更新:2010年09月11日 19:58