プロローグ(リリス=ネモア=エプシロン)
「リリス様、お風呂の準備が出来ました」
「入りたくない」
見た目に反した低いかすれた声でリリスは力なく返事した。
十日前、誘拐された時からリリスは変わってしまった。
窮地に魔人能力に目覚め自力で帰還したとは本人の弁だが、
現状を見るととても無事とは思えなかった。
唾液に関する魔人能力の副作用か。
肉付きが異常によくなり声は枯れてしまった。
そして他人への不信感から異様な風呂嫌いになり、
帰って来てからずっと香水でごまかしている。
「お風呂なんて入っている時に敵が来たらどうしようもないじゃない!
バアヤはまた私にさらわれろって言うの!?」
「そ、そんな事はありませんじゃ!」
「・・・決めたわ。私、フェムが開く魔人大会に出る」
「突然何を!」
「今私が信じられるのがあの子ぐらいですもの。
フェムが小さい頃一緒にお風呂入った事は今でも覚えているわ。
私が昔の様になるには、あの子と一緒にお風呂で洗いっこするしかない」
バアヤは危険だからよす様に言おうとしたが、リリスの目に
暗殺者並みの強い力を感じ取り止めても無駄だと諦めた。
「確かに大会参加者ならばある意味命の保証はされますからな」
「でしょ?我ながら名案だわ!それじゃあ戦闘服に着替えるからちょっと外に出てて」
五分後、ドア越しに入っていいと言われたバアヤがリリスの部屋に戻ると、
学生時代に愛用していた純白のレオタードを無理やり着ているリリスがいた。
「リリス様ー!!その衣装はなんぞー!
「私にとって勝負事の経験なんて学生時代の体操大会ぐらいですもの。
これを着てると戦ってる気分になってくるわ。ムラムラしてくる」
「んー、まあ元気がないよりは良いですじゃ」
その後リリスは大会当日までの間、近衛兵を相手に戦闘の経験を重ねて行った。
王族ゆえの才能か、覚えたての魔人能力を器用に使いこなし、
相手を床や壁に貼り付けて勝利する戦術を確立していく。
「えいえいえーい!」
ハスキーなかけ声を出しながら壁に貼りつけた近衛兵が降参するまで蹴り続ける。
モロチン、着ているのはサイズの合ってないレオタードだ。
開脚するたびにリリスのふっくらした股間が兵士達の目にさらされる。
その股間がときおり窮屈そうにヒクついているのはリリス本人でさえまだ気づいていなかった。
最終更新:2018年03月06日 22:09