プロローグ(葉山 纏)
「なあ、子供の頃よォ。車とか飛行機が人みてえに変形して戦うアニメあっただろ?あれ見た時俺はすげー感動したわけよ。アンタはどうよ、そういうの無い?」
男は話しかける。
しかし、返事はない。
聞こえてくるのはマシンガンの凄まじい轟音のみだ。
男は気にせず話を続ける。
「なんたってよー、機械のかっこいいフォルム?ってやつ?あれでガシャンガシャン動くのはやべーし、さらにその特性を生かした動きも子供の俺にはすごく憧れたわけよ。いやー、あれが俺のルーツってやつなんだわ。ああいうのに“乗りたい”とかああいうの“作りたい”って感じの」
マシンガンの轟音に加え、辺りからは爆音が聞こえ始める。
もはや男の言葉は、周りの騒音によってかき消され、何処にも聞こえていないだろう。
だが、男は続ける。
「それがよー、俺の気持ちは少し違ったんだわ。あれに“なりたい”って願っちまったの!体を変形させて、肩からミサイル出したい!胸からビーム出したい!足をタイヤにして公道走り回りてェ!ってなァ?ヤバくね?まともな奴なら無理だって言うわな。しかしおよそまともなガキじゃなかったわけ。だから、俺はそうなりたいと願い続けた!ずっとずっとずっーと!!そしたら叶っちまった」
男の脚が4つに分かれ、地面に突き刺さる。
その瞬間、肩からはミサイルが飛び出した。
「ただ、ベクトルが違ったんだよなー。俺は機械になりたかったの。物を“取り込んで融合”したかったわけじゃねーの。そこんとこ分かる?」
誰も返事をしない。
既にしかばねだから。
けれど、男は話し続ける。
なぜなら動画を撮っているから。
「つーわけで、葉山 纏!この度はエプシロンの王女様が開いてくれる大会出場しまーす!目標は、優勝賞金でついにこの体をトランスフォームしちゃうよ!以上、決意表明動画おしまいだぜ!また見ろよな!」
最終更新:2018年02月18日 20:17