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「都大会で優勝した毛利蘭さんですね!?」
「今回の事件に就いて一言お願いします!」
「毛利さんも知ってたんですかっ!?」
「やめて下さい!」
「生徒への取材はお断りしていまーすっ!」
「行くよ蘭っ!」

「ごめん、先行ってて」
「うん」
廊下で、蘭は園子と分かれてトイレに入る。
女子トイレに入った蘭は、個室に鍵を掛け、壁に背を預けて両目に掌を当てた。

「全裸で生中継・コカイン逮捕女子高生は名門空手部前主将」
「女子高生全裸で生中継・広がる薬物汚染」
「コカイン逮捕部室で乱交・インハイ出場空手部爛れた実態」
「男子部員・クラスメイトは皆兄弟・コカイン逮捕美少女前主将・
一斉尿検査・名門空手部不祥事底無し」
「コカイン逮捕美少女前主将
名門高校空手部・乱交パーティー盗撮DVDが売られていた!」

「見たかったなー、生放送でモロ見えで凄かったんだろー」
「ネットで見付けた、保存した」
「マジで?」
「マジ」
「でもよー、空手部の男子、マジでみんな先輩に食われたってのか?」
「全員尿検査ってのはマジだって」
「やべーだろそれ」
「でも、それで薬やってたらとっくに捕まってるだろ?」
「薬やってなくてもあれの方はマジっぽいけどな」
「あれってあれか?」
「あれ、空手部の一年なんて全員先輩で筆下ろしって」
「顔なんかいい線いってるし、ガッチリしてても胸なんか結構あるからなー。俺もお願いしたかったなー」
「大歓迎だって、やっぱあれか、ガンガン仕切られて振り回されて早すぎてボコられるとか」
「いや、意外とあれん時は従順とか」
「でもなー、一発お相手してAVデビューは洒落なんないだろ」
「あれ、確かに塚本先輩と空手部の連中だって、ネットに流れてる盗撮画像」
「あんのかよマジで」
「ああ、ある。ぜってー先輩だって、
正直空手部で無かったのが良かったのか悪かったのかマジでわかんねーってぐらいすげーの
あれならデビューしてもいいってくらい」
「男子バカじゃないの?」
「塚本先輩ちょっと憧れてたのにねー」
「やっぱり事件のショックだったのかなー」
「でも、洒落にならないでしょ、ハッキリ言って学校の恥」
「って言うかあのマスコミなんとかしてマジで」
「でもよー」
男子のグループが、より一層声を潜める。
「やっぱ、あれってマジなのか?」
「でもなぁ…」
「先輩と仲良かっただろ…」
「…だったら、マジで俺も…」
「あー、はいはいはい」
バンと机に手を置いた園子の目は笑っていなかった。
「蘭が操捧げる様な男、他に誰かいると思って?少なくともあんたらじゃあー無理だよねぇー」
「み、操って…」
「あ、ああ、分かってる、冗談冗談…」
「笑える?」
「どう?」
「出回ってますね」
杯戸警察署の連続婦女暴行事件捜査本部に戻った美和子に声を掛けられ、
顔見知りになったハイテク犯罪担当の女性刑事が答える。
「例のテレビ番組は別にして信憑性が高いものだけでもこれだけあります」
「こんなに…」
出て来た画像に美和子が絶句した。
「ごめんなさい、私が余計な事を聞いたりしたから」
「私はこの本部に召集されていますが既に古巣の仕事になっていますそこから聞き出しました。
学校の道場や生徒の自宅やカラオケボックスでの塚本数美と男子生徒との乱交パーティー映像。
既にセンター(ハイテク犯罪対策総合センター)でも
わいせつ陳列と男子生徒映像に関する児童ポルノで捜査に着手していますが引っ掛かります」
「何が?」
「映像の分析結果は固定式のカメラが大半詰まり盗撮です。
現在までに摘発されたケースでは全てネットで拾ったものを広げたと供述していて
マル被のPCからもその痕跡が見付かっています」
「つまり、大元は捕まっていない」
美和子の言葉にパソコンに向かった女性刑事が小さく頷いた。
「意図的に盗撮して流した人間がいます私の勘ですが。
塚本数美がそれをするのは時間的に不可能です仮に出来たとしたら
5課が吐かせている筈ですそのタイムスイッチを」
「確かに、5課はガサも調べも徹底してやってる、塚本、容疑者が隠せる状態じゃない」
「いいですよ一度は被害者として扱ったと聞いていますから。
只の盗撮屋にしては身元の隠し方が手が込みすぎています
センターでも本腰入れて突き止めに掛かっています」

「蘭のせいじゃないよ」
「うん…分かってる」
そんなとある土曜日、ドーナツショップで辛い顔を見せた蘭に園子が言い、蘭が笑みを見せた。
「あんなに辛かった数美先輩に、
やっぱり何か出来なかったのかなーって、思っちゃうんだよねー」
「蘭は優しいからね、気持ち、分からないでもないけどさ、
今だったらみんな、先輩に恨みの方が強くなってんじゃない。関係無い人なんて特に」
「園子は?」
「うーん、辛い質問だねー」
苦笑いする園子に蘭がにこっと笑う。

やっと、蘭の気持ちが表に出始めていた。
塚本数美による生放送ストリーキングと言う大不祥事にコカイン吸引が加わり、
それだけなら現役を引退した三年生一人の個人的犯行として処置する事も出来たが、
その後、警察が呆れ返ったのみならず、数美の関わった乱交パーティー盗撮映像が次々と流出、
中には盗撮DVDとして販売されそれが週刊誌で取り上げられるケースまで発生するに及び、
学校も高体連も庇う余地を失い帝丹高校男女空手部の無期限活動、出場停止と
数美の退学、関係した生徒の停学処分と言う処分に踏み切った。
学校の、そして何より自らの青春の誇りであった空手部を不意に、
自らとは全く無関係な所で最も恥ずべき形で失い、
ぽっかりと心に穴の空いた蘭を、園子はしきりにカラオケに誘い、とにかく歌いまくっていた。

「おおーっ、蘭ーっ、帰ったかぁーっ!」
園子と分かれて帰宅して事務所に入った蘭に向けて、上機嫌の雄叫びが響き渡った。
「お帰りお父さん」
「おうっ、帰ったぞ蘭っ」

「いっただっきまーっすっ」
その夜、全く子供演技も板に付いたものだと思いながら、コナンは目の前で焼けた肉に割りばしを伸ばす。
実際、美味しそうだし美味しいのだから仕方がない。
「くぁーっ、これだあっ!」
コナンの前で生中をあおった小五郎は早速に上機嫌だった。
「おらー、どんどん食えよーっ、何せ今度の仕事で臨時ボーナスまで出してくれちゃったりしたんだからよー」
「うまくいったんだね人捜しのお仕事」
「おおーっ、この名探偵毛利小五郎様に掛かればちょちょいのちょいよっ
くはーっはっはっはっ!」
尋ねたコナンの方が呆れ返る小五郎節、がぱがぱビールを空けているものだから手が付けられない。

「かわいーおねーさんカルビにハラミにタン塩ちょーだい」
「はーい」
「もーお父さん大丈夫なの?」
「だーいじょうぶ、まーか(自主規制)」
「もーっ…」
苦笑を浮かべて嘆息する蘭の横で、横を向いた小五郎がぐいぐいとビールを空ける。
「…すまねぇなぁ、蘭…」
「え?」
「こんな時にろくろく家にもいねーでよ」
「え?ううん、大丈夫。最近仕事上手くいってるんだね。家計も助かっちゃうし」
「おいおい、亭主元気で留守がいーってか。すまねぇなぁ蘭、学校で色々あったんだろ」
「う、うん…」
「俺もまあ、仕事柄色々汚ねぇモンは見て来たけどな、あれは…薬だけはいけねぇ…
他ならぬおめぇの先輩の事だからよ、俺もまあ、いや、やめとこうこんな時に」
「話して」
ビールが過ぎたと嘆息する小五郎を、蘭はキッと見据えた。

「ああ…昔の伝手でまあ色々聞いてはみたんだがな、
おめぇの先輩、もう夢も現実も幻覚も何が何だか分からない、
毎日毎日子供みたいに泣き喚いて震え上がってどうにもこうにも…」
「そんなに、酷いの?」
「ああ、取り調べ以前の問題らしい。薬が抜けても、完全に、イカレちまってるってよ。
悪魔だよ、あの白い粉は。
甘い顔して近づいて、ボロボロにして本人も周りもみんな地獄に堕としちまう。それが麻薬だ。
おめぇが慕ってたんだ、そんだけ信頼出来る先輩だったんだろう。
けどなぁ、いっぺん薬に捕まっちまったらもういけねぇ、家族も友人も、信頼なんてもんが全部、
ありとあらゆる信頼よりも薬、嘘をつこうが裏切ろうが薬、それが麻薬ってモンなんだよ。
なあ、蘭、お前は優しい、見る目もある、俺の自慢の娘だ、そんだけ信頼出来る先輩だったんだろうよ。
けどなぁ、これが薬ってモンなんだ巻き込まれて欲しくねーんだよ」
「うん…分かってるお父さん…」
「そうか…ありゃあ、あの白い粉は悪魔だよぉ、甘い顔で近づいて、泥沼に沈めて全てをボロボロにしちまう。
クソヤクザがみんなしゃぶり尽くしてボロボロにしちまう、それが麻薬なんだよ」
「うん…」
「辛い事、深い傷があれば特にそうだ。優しい顔で近づいて、苦しみを消してやろうって甘く囁きやがる。
けどな、これだけは駄目だ。殺人と麻薬だけは、どんなに辛い、苦しい事があっても絶対駄目だ、
絶対駄目だ、最低の反則なんだよ…んー?なんだー蘭ー」
くすっと笑った蘭に、小五郎が酔眼で詰め寄る。
「ううん、何でもない。ありがとう、お父さん」
「あ、ああ…」

「イヤアーッ、ハッハッハッハッハァーッ!
食ったぁ食ったあっ!!」
「もーっ、お父さんっ」
“…この酔っ払い親父…”
夜の路上で、呆れて見ていたコナンの目が、瞬時に鋭いものになる。
「もーっ、お父さんーっ」
「綺麗になったなー、蘭」
勢い余って蘭に抱き付いていた小五郎がぼそっと言った。
「えっ?」
「おめー、いくつんなった?」
「え、あ、17よ」
「あーあーあー、そうだったなー、17かぁーそうだよなぁー、
綺麗になったよー、蘭ー、こーやって見るとー昔のあいつそっくりだぁー」
「え?」
「今も昔もこーんなだけどよぉ」
小五郎が、両手で挟んだ頬をぐにゅーっと上げる。

「そんくれーの時はまだぁー、ちったぁかわいげあったからなぁーダァーッハッハッハァーッ!!
そっかぁー、17かぁー、来年は三年で卒業にぃーもちっとしたら成人式かぁー」
「もーっ、まだ高二だよぉー」
「すぐすぐすぐぅーっそっかぁー…
んで、蘭、あいつ何やってんだ?」
「あいつ?」
「あいつだよあいつ、有希ちゃんトコのあの悪ガキ探偵ぼーずだよぉ」
“…ここにいるよ、酔っ払い…”
状況的に肩の貸し借りまでは許すが、
もう一度一線を越えたら眠りの小五郎も辞さない構えのコナンが心の中で不敵に笑う。
「ああ、新一」
「そ、新一、あのガキ何やってんだ連絡とってんのかんー?」
「うん、時々電話来るの、何か厄介な事件に引っ掛かってるみたいでさー」
「ったく、こーんなかわいー俺様の娘ほっぽらかしやがって、
なーにが高校生探偵だー、
この名探偵毛利小五郎様に泣き付いて来たらさっさと終わらせてやんのによー」
“…ああー、そうして欲しいよ、とっととあいつら見つけ出して元に戻してほしーっつーの、
あんたのこれ以上の狼藉を実力排除するためにもよー…”
「あいつも17なんだよなー」
「当たり前でしょーおない年なんだからー」
「そうかー、あいつも17かー、そうかそうかー…
…クク…ププププ…クハァーッハァーッハァーッハァァーーーーーッッッ!!!」
「もーっ、どうしたのお父さーん?」
「何でもねぇっ、何でもねぇよぉ、ククククク…」
「もーっタクシー拾うよー」
「おー、拾っちゃって拾っちゃってバンバン拾っちゃってー、何せぇー、臨時ボーナスだからよぉー」

「そーなの、上機嫌の高いびきでさー、大変だったんだから」
パジャマ姿の蘭が、寝室で携帯電話に嘆息する。
「全く…でも、仕事は上手くいってるみたいね」
「うん」
「じゃあ、賭け事だけは気を付けてね」
「分かってる」
「でも、元気そうで良かったわ」
「え?」
「蘭も色々大変だったから」
「うん…お父さんもね…」
「あの人がどうしたの?」
「ううん、でも、新一の話とかし出してご機嫌になっちゃって」
「新一君の?」
「うん、新一が17歳だとか、当たり前なのにねー」
「当たり前でしょ、蘭と同い年なんだから。
そうよね、新一君も…くすっ…」

「どうしたのお母さんまで?」
「ううん、何でもない。その新一君からは連絡あるの?」
「うん、時々電話来るの、何か厄介な事件に引っ掛かってるみたいでね」
「全く、そんな事件にかかり切りでほったらかしで、よっぽど有希子のしつけが良かったのね」
「くすっ」
「何よ蘭?」
「なんでもなーい」
「じゃあ遅いから、くれぐれもあのヌケサクから目を離さないで、いいわね、
蘭が路頭に迷ったら困るから言ってるのよいいわね」
「分かった、お休みお母さん」
「お休み」

電話を切った蘭は、ベッドの上で枕を抱えて少し考え込んでいた。
楽しい事で頭を埋めたくても、嫌な現実は消えてはくれない。
“…夢も現実も幻覚も何が何だか分からない…”
不意に、あの「夢」が頭の中をよぎり、蘭の顔にぼっと火が付いた。
そして、酔っ払いの戯言に隠されたパズルが突如として組み立てられる。
「そうなんだよね…」
蘭が口に出した。
そう、そんなに遠くない未来、その時が来るのかも知れない、いや、来る。
突き詰めて考えた場合、その時が来ないと言う選択も他の男と言う選択もあり得ない、
少なくとも望むものではないのだから。
いつの間にか、蘭の右手がパジャマを持ち上げる胸の膨らみを掴み、それだけで蘭は声を漏らす。
蘭が自分でも見劣りするとは思わない、実際に綺麗で、豊かな胸。
この女性としての膨らみに男として、あいつが触れる時が来る。
もう一度掴んだ時、弾力溢れる膨らみの先端から掌に、硬い程に突き出した丸っこい感触が触れる。
蘭は、その手から早鐘の様な響きを確かに感じた。
「んんっ!」
胸を左手に任せ、その身にじわじわと熱いものをにじませながら、
パジャマズボンに突っ込んだ右手の指が下着のその下で既に露出を始めた先端に触れた時、
蘭はその声を隠しきれなかった。
かつては痛いばかりだった、直接そこに触れる指の感触にもすっかり馴染んでしまった。
その事にまた、潔癖な蘭は何となく罪悪感を覚えるが一度着いた火は容易には鎮まらない。
ベッドの上で盛んにその身を縮めたり伸ばしたりを繰り返しながら、
蘭はぬるぬるを感じ始めた中指をその源へと突き動かす。
それこそ、その意味する所の怖さもあって踏み込めなかった筈の場所だが、「夢」がその呪縛を解いていた。
もう、頭の中ではあんた事こんな事まで妄想してしまった自分はヴァージンですらない、
それを知ってしまった存在。蘭はそんな自分を心のどこかで自覚しようとしていた。
知っている筈の無い太い、逞しいもの、実は知っているのだがその自分が知っている事を知らない今の蘭。
何故か、自分を荒々しく突き破り、征服するもののイメージが鮮明に浮かぶ気がして、
蠢く指の下から突き抜ける快感と共に、蘭は自分の頬がボッと熱くなるのを覚える。

そう、一糸まとわぬ姿で抱き合い、唇を重ね力強く抱き締められ、そして貫かれ互いにそれを求め合う。
目を閉じれば生々しい程に浮かび上がって来る。その光景がかつての蘭の潔癖なくらいの理性をも抑え込み、
繊細な両手に無軌道な程の指令を与えて牝としての快楽を貪る事を蘭の肉体に命じる。
瞼の裏に見えている顔は、あいつ、鮮明にあいつ、照れ隠しにおちゃらけ、
真摯に蘭を求め、そして、青い情熱を蘭の柔らかな肉体に目一杯叩き付け、
子供の様に無邪気に蘭に自らを委ねる。まるで見てきた様に蘭は全てを知る事が出来る、
実際にその目で見ているのだからそれはそうであるが、
蘭にその自覚がないのだから妄想はより神秘的な愛の証として昇華される。
“…こ、こんなに、濡れてる。又ショーツ取り替えないと…
凄い、ビリビリして、クリ○リスから来る、来るのっ…
指が入ってる、中指入ってる、中指よりも太かったあれが入る何で知ってる…”
「いいっ、こうやって、ああっ、こうやって新一ぃ、新一新一ぃ、
んんっ、駄目っ、駄目っいいっ新一、あっ、はあっ、ああっ…」
ベッドの上でピンと反らせたバネのきいた肉体をくたっと脱力させた蘭は、
オレンジ色の小さな明かりにてらてらと鈍く輝く自分の右手をかざし苦笑を浮かべる。
「新一…」
“…きっと…新一と…
きっといつか新一と、そんなに待てないよね新一、男の子ってそうなんだよね。私だってこんなに…
すぐには怖いかも、でも、必ず新一と新一に私…”
幼なじみから恋人になり、そして、一組の男女として、女として全てを捧げて愛を交わし、その先に。
そこで、蘭はくすっと笑った。あいつが、いつも自信満々小生意気なあいつが、
小五郎の前でひたすら縮こまる姿が不意に目に浮かんでいた。
その先に映る純白のウエディングドレス凛々しいタキシード、そして、その先、誰憚る事無き愛の交歓…
愛する男性に女としての全てを捧げ、あのやんちゃ坊主を支えてよき家庭を作り、子供を…
“…お母さん、お母さんとお父さんもそうだったんだよね…
そしたらもう、お父さんお母さん、おじいちゃんおばあちゃんか…信じられない…
でも、遠い遠い未来じゃない…私ももう、女、なんだよね、なんてね…だから…”
「…だから…早く、帰って来なさいよ、新一…」


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最終更新:2008年12月26日 17:54