竹村院長らが08年1月~09年7月にホスピタルと東京都内にある
関連の精神科クリニックで診察した窃盗癖のある男女132人を
調査したところ、女性92人のうち68人(74%)が摂食障害を患っていた。
男性患者で同様のケースは40人中4人(10%)で、女性に顕著な
傾向だった。
神奈川県の女性(21)は高校3年の時、ダイエット感覚で食事制限を始め、
拒食症に。
大学入学後、飲み会が続き
「会費を払っているのにもったいない」
と考えているうちに逆に過食症になった。
食費に困り、スーパーの試食品を大量に食べて紛らわしたが、
店員や他の客から白い目で見られていることに気付き、万引きに走った。
「食べたい衝動だけが頭を支配して、お金を払うという考えがなくなった。
いつも吐いてから我に返るが、繰り返してしまう」という。
逮捕は3回。現在、大学を休学して治療に専念している。
関東地方のパート女性(42)は2人目の子供を妊娠した29歳の時、
ストレスから過食しては吐くようになった。
節約のために食品を万引きするようになったが、洋服や雑貨まで
盗むようになった。
「買い物袋がいっぱいになるほど盗まないと気が済まなくなっていた。
万引きするときは、いつも意識が飛んでいた」。
3度目の刑事裁判で実刑判決を受け、1年間服役。
出所後、夫や2人の子供と別居した。
「二度としないと決意しても万引きをやめられなかった。
服役までしたのに、今もまたやってしまわないか不安にさいなまれている」
という。
女性たちは、入院して医師のカウンセリングを受けたり、患者同士で
生い立ちや経験を告白する治療を続けているが、専門的な治療が
できる医療機関はほとんどないという。
治療を受けストレスから解放された生活を続けた結果、窃盗癖や
過食症が治ったケースもあるといい、竹村院長は
「刑務所より病院で適切な治療を行う方が有効なケースもある」
と話している。
米国の精神医学会が定めたガイドラインで
「他のどこにも分類されない衝動制御の障害」
の章に分類されている疾患。
診断基準として
「物を盗もうとする衝動に抵抗できなくなることが繰り返される」
「窃盗直前の緊張の高まり」「窃盗を犯すときの快感、満足、解放感」
など5項目が挙げられている。
日本では「窃盗癖」と訳されるが、金銭目的の単純な常習窃盗犯と
区別するため「病的な窃盗癖」と訳すべきだとの考えもある。