アリアハン城下町。
大魔王の恐怖が全世界を覆った今でも、この街は人々の活気と笑顔に満ちていた。
自分が魔王討伐に向かったあの時から3度目。この街に戻ってきた回数だ。
まず家に帰る前に王に挨拶を済ませて、城から城下町に続く橋をわたる。
すれ違う人々も様々だが、見知った顔も多く親しみと期待を込めて私に挨拶をする。
やはりこの街に帰ってきて一番楽しみにしていたのは、やはり息子に会う事だ。
ずっと離れていても親の顔は覚えているのだろう。この前帰ってきたとき、
駆け寄ってきて「おとーたん」と呼んでくれた。
自分の道具袋に入っているお土産の事を考えると笑みを隠しきれない。
この前できたばかりのルイーダちゃんの酒場を見て、やっと我家が目の前に現れた。
ドアの前に立ち、深呼吸をする。なぜこんな事で緊張するのだろうか。
意を決してドアノブに手をかける。そのときだった。
「おとーさんおかえりーーー!!!」
「ぬおぉ!!」
勢い良く開かれたドアに、
オルテガは大きくぶっ飛ばされた。
「おとーさーーーん!!」
ふらふらと立ち上がる私に、息子はダッシュをかけてタックルしてくる。
しかし歴戦の勇者である私は、その勢いを十分に殺し、大きく空に放り投げる。
たっぷり二十秒くらいたって落ちて来た息子をなんなくキャッチする。
「息子よ!いま帰ったぞ!」
そんな父に、
アルスは満面の笑みを浮かべて抱きついた。
「息子よ!土産があるぞぉ!!」
「うわーい!ありがとうおとーさん!」
期待に胸を膨らます息子に見守られながら、オルテガは道具袋の中をまさぐる。
確か底の方に入っていたはず……。あれ?
袋の中には
水鉄砲は入っておらず、ソコにはあの忌わしき覆面が入っていた。
「…なぜ、こんなものが……」
呆然と覆面を袋の中から出して、見つめる。
「うわぁ、それがお土産なの?ずっと欲しかったんだコレ!!」
そう言うと、アルスはオルテガの手から覆面をひったくり、ソレをかぶる。
「やめろ!ソレをかぶったら……」
オルテガの悲鳴は、アルスの雄叫びにかき消された。
「フォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!!!!」
白目に怪しい光をたたえ、雄叫びをあげる息子の姿。
突如、体が膨張し筋肉が異常に発達する。衣服は裂け、しかしパンツだけは一緒に膨張する。
身長は既に3メートルを超え、オルテガの目の高さに発達した大胸筋が映る。
息子の変貌していく姿を、オルテガはただ呆然と見ているしか無かった。
「…なぜ、こんな事に……」
変化が止まり、巨大な筋肉の塊になった息子が目の前にいた。
「あいたかったぜぇ!!親父殿ぉ!!!」
後ずさりするオルテガを、アルス(?)はハグする。
「やめろ…やめてくれぇ……」
オルテガの周囲にアルスの高笑いが何度も何度も木霊し、オルテガの脳みそを揺さぶる。
巨大な肉の塊と共に、オルテガの意識は闇に落ちて行った。
「…ゴハア!!…ゆ…夢か……」
全身に冷や汗をかき、息が荒くなっている。
幸せそうに寝ていたが、突如うなされはじめ、飛び起きたオルテガをチョコボは心配そうに見つめる。
(…まいったな。…あんな夢を見るなんて)
右手に握り締められた覆面をみつめる。
(…はやく、コレを処分しなければ……!!)
何度も火の魔法を紡いでは、直前でソレを中止する。
引き千切ろうと力を込めては、全然力が入らない。
(…くそ。オレには…無理なのか……)
覆面をソコらへんに放り投げ、力の無い笑い声をあげた。
これから二度とかぶらなければいいと結論を出し、袋の奥に覆面を詰める。
ついでに中に入っていた、多分朝に慌てて詰めたのであろう缶詰を開けて食べる。
どこぞのチームみたいに缶切りを忘れたりはしない。日頃から愛用している十得
ナイフを持っていたのだ。
味は感じなかったが、元気は出た。ゴミをまとめ、出発の準備をする。
「…ちょうど正午になるな。行くぞ」
チョコボにまたがり手綱を引くが、チョコボは外に出ず、壁のところに向かう。
「クエッ」
「む?なにか書いてあるのか?」
オルテガはソコに書かれた文字を読み、大きく
ため息をついた。
「……………」
「クエ?」
「…ああ、大丈夫だ。出発しよう」
なにが大丈夫なのかわからなかったが、気をしっかり持ち手綱を引く。
「北だ。まず祠にむかうぞ」
「クエ♪」
そしてイヤな思いでを残し、チョコボは木の洞から外に飛び出した。
【オルテガ 所持品:水鉄砲
グレートソード 覆面
第一行動方針:祠へ
基本行動方針:アルスの存在を確認し、合流する(ただしイッちゃったらこの限りではない)】
【現在位置:洞窟北西の森の巨木の洞】
最終更新:2011年07月17日 21:11