酵素の反応速度に影響する要因

基質濃度を一定にしたまま酵素濃度を上昇させると、酵素と基質が出会う確率が上昇する。
従って、酵素基質複合体の濃度も上昇するため、反応速度も上昇する。
基質が十分存在するときには基本的に、酵素基質複合体の濃度は酵素の濃度に比例して、酵素濃度が二倍になれば、酵素基質複合体の濃度も二倍になる。
したがって、酵素濃度が二倍になれば、反応速度も二倍になる。

反応時間を充分長く取ると、基質が次第に消費されてその濃度を減らすことになる。
すると酵素基質複合体の濃度が減っていって、反応速度は減ってゆくことになる。
最終的に、基質がすべて消費されてしまうと、酵素基質複合体の濃度がゼロになって、反応は停止することになる。


反応速度に対する基質濃度の影響

酵素の濃度を一定にしたまま基質濃度を上昇させると、基質が低濃度のうちは、酵素基質複合体を形成せず、いわば「余っている」酵素が多数存在することになる。
したがって、基質の濃度が増加するほど酵素基質複合体の量が増加するために、反応速度は上昇する。
しかし、基質濃度がある一定値を超えると、「余っている」酵素が存在しなくなるため、反応速度はそれ以上増加しなくなる(飽和)。

反対に基質濃度を減少させると、同様の理由から、反応速度は減少することになる。
例えば基質濃度を半分にした場合、反応速度は半分になることになる。
基質濃度を横軸に、反応速度を縦軸にとってのグラフを描いた場合、基質濃度を半減させれば、基質濃度が低い領域にあるグラフの傾きは半分になり、基質濃度が十分高いとき領域では反応速度の絶対値が半分ほどに低下する。

また、基質を追加することなく反応を続けると、基質量は反応によって徐々に低減することになる。
そして最終的には、すべての基質が反応に使われてしまってその量はゼロになってしまう。
こうなると、酵素基質複合体は形成されず、反応もストップすることになる。

反応速度に対する温度の影響

温度が高いと、酵素と基質の運動がさかんになって、酵素と基質が出会う確率が上昇する。
従って、温度が高いほど酵素基質複合体の量は増加することとなり、その反応速度は上昇することになる。

しかし温度が高すぎると、酵素を構成するタンパク質の性質が変わって、その立体構造が変化してしまい、活性部位の形状が変化してしまう。
このことで、酵素基質複合体の形成が妨げられて、その酵素のはたらきは失われてしまう。
温度やpHの変化なのでタンパク質の性質が代わってしまうことを変性、酵素のはたらきが失われてしまうことを失活と呼ぶ。

またこのことから、酵素にはもっともはたらきのさかんな温度があることになり、その温度は最適温度と呼ばれる。
タンパク質から構成されない無機触媒に最適温度はない。

反応速度に対するpHの影響

pHが変化すれば、その溶液中の水素イオン(H+)の濃度が変化して、その溶液中の分子の水素結合に影響を与える。
タンパク質の立体構造(三次構造)は水素結合にも依存しているため、pHの変化はタンパク質の立体構造や活性部位の立体構造を変化させ、酵素のはたらきそのものに影響を与えることになる。
従って、酵素には、もっとも高い活性を示す最適pHがある。
最適pHは通常、その酵素がはたらく環境を反映したものになっていることが多い。
最終更新:2009年05月23日 20:09
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