ラクトース(乳糖)は、グルコース(ブドウ糖)とガラクトースが結合した二糖類の一種で,一種のエネルギー源。
従って,ラクトースが存在するときはその分解酵素を作ってエネルギーを確保したいが,ラクトースを使い切ってしまった時は分解酵素の合成をストップしたい.
ラクトースオペロンには、そのラクトースを分解するための酵素タンパク質(ラクトース分解酵素群)をコードする領域が含まれている。その遺伝子の発現は、以下に示すようなプロセスに従って進行する。
- RNAポリメラーゼが、DNA上のプロモーターと呼ばれる領域に結合する。
- RNAポリメラーゼは、DNA上を下流に向かって移動し、開始コドンより下流の塩基配列をmRNAに転写する。
- しかし転写が起きるのは、培地にラクトースが存在するときに限られる。ラクトースは、リプレッサーに結合することで、その立体構造を変化させ、オペレーターへの結合を阻害するからである。存在しないラクトースのための分解酵素を合成しても無意味なので、これは極めて合理的な反応である。
- 転写されたmRNAからラクトース分解酵素が合成(翻訳)される。
- ラクトース分解酵素は培地中のラクトースを分解し、消費する。
- ラクトースが消費されてその量が減少すると、ラクトースと結合するリプレッサーの量も減少し、その反対に、オペレーターと結合するリプレッサーの量が増加する。
- オペレーターにリプレッサーが結合すると、DNA下流に向かったRNAポリメラーゼの移動が妨げられ、mRNAの転写がストップし(上記のプロセス2)、ラクトース分解酵素の合成がストップする。この過程がフィードバックである。
- その後、何らかの理由で培地中のラクトース量が増加すると、上のプロセス1が再開される。
- このように、ラクトース分解酵素は、必要なときに必要な分だけ、自動的に合成されることになる。
最終更新:2009年05月25日 10:48