ビードルとテータムはまず、アカパンカビにX線を照射することで突然変異を誘発させて、成育するためにある特定の化合物を必要とする株(系統)をいくつか作った。
この株は栄養要求株と呼ばれる。
成育するために特別な化合物を必要としない株(野生株)でも、炭素源・窒素源・無機塩類など最小限に必要とする養分はあり、その養分のみで構成される培地は最少培地と呼ばれる。
それに対し、最少培地に各種アミノ酸・ビタミンなどを加えて、どのような栄養要求株でも生育可能にした培地は完全培地とよばれる。
ビードルとテータムは成育にアルギニンを必要とするアルギニン要求株をいくつか得た後、最少培地にアルギニンの代謝中間体を加えてそのアルギニン要求株を培養した。
すると、そのアルギニン要求株は、生育の条件によって1〜3(下図)の三系統に分けられることが分かった。
ビードルとテータムは、この実験結果をもとに次のように考えた。
- X線照射は遺伝子に突然変異を生じさせる。
- 遺伝子は一つの酵素のアミノ酸配列を指定しており、突然変異が生じた遺伝子に対応する酵素の機能は、そのアミノ酸配列が代わってしまうために失われる。
- 機能が失われた酵素が触媒する過程よりも下流は、その反応に必要な基質が作られないので進行しない。
- 一連の反応がすべて進行しなければ、生育に必要なアルギニンが生成されず、その株の生育は不可能となる。
- 突然変異がどの遺伝子(つまりどの酵素)で生じるかはランダムで、突然変異が生じた遺伝子の違いが株の違いとなる。
例えば、アルギニンの代謝中間体であるオルニチンからシトルリンを合成する酵素の活性が失われた株の場合、シトルリンを培地に加えてやれば、シトルリンからアルギニンを合成する酵素はきちんと機能しているために、その株はアルギニンを自身で用意することができ、結果きちんと生育することができる。
それに対し、与える物質をオルニチンに変えてしまうと、その株は、そのオルニチンからシトルリンを合成することはできず、当然その下流の物質であるアルギニンを合成することもできないため、きちんと生育することはできない。
当然、アルギニンを培地に加えてやれば、たとえアルギニンよりも上流のプロセスで必要となるすべての酵素が失活していたとしても、生育することはできる。
最終更新:2009年05月25日 10:55