ヒストリー
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今から15年ほど前。3人の日本人科学者の研究を基にして、DTの開発が始まることになりました。
淡島喜八郎、
緋瓦直樹、
戻橋一郎を中心とする多くの科学者が、農水省管轄の研究プロジェクトに参加していました。プロジェクトの目的は、新しい
遺伝子改変技術を使った農作物、家畜の品種改良でした。
しかしこのプロジェクトは、結局志半ばにして空中分解を起こします。理由の一つは、予算の削減という経済的なものでした。
当時
遺伝子改変作物、ひいては遺伝子工学研究全般に反対する世論がにわかに広まり、最終的に国会は研究の中止を決定しました。研究成果の一部が外国企業へ漏洩していたらしいことも、議員たちの不興を買った原因です。
プロジェクト中止のもう一つの理由は、中心人物の一人、
戻橋博士が死んだことです。彼はアフリカ、ナイジェリアで研究にとってきわめて重要な発見をしたのですが、その帰途、飛行事故で帰らぬ人となりました。
彼が発見したものは、
デーモンウイルスと呼ばれています。この
ウイルスに感染した細胞は、でたらめな
RNAを作り続ける性質がありました。この
RNA合成プロセスと電気信号で制御できるようになれば、人は自由自在に
遺伝子を作ることができるようになるはずです。
とはいえ、研究は中止されました。
緋瓦博士をはじめ、多くの科学者たちは、以前の職場へと戻っていきました。
一方、
淡島博士ら数人の科学者は、研究を続行することを決意していました。
オステルンというヨーロッパの化学工業メーカーが彼らに手を差し伸べました。淡島博士らはドイツへ渡り、数年後に研究を完成させることになります。
最終更新:2022年06月26日 01:00