1th 新しい住民
一階の硝子戸の手前で俺は携帯を取り出した。
「あ、もしもし、優兄(ゆうにい)?今着いたよ、うん、そう、一階のフロアにいる。え?降りてくる?いいよ、ナンバー教えて……うん……了解」
片手には荷物を持っていたから、右肩に携帯を挟んで左手で聞いたナンバーをオートセキュリティーに打って、解除した。
そこからは、自動になっている硝子戸を通ってエレベーターに乗った。廊下をしばし歩くと、そこが優兄の家だった。
「こんにちは。来たよ優兄」
簡潔にこう言い、扉をノックすると優兄が扉を開いて出てきた。
「やあ、いらっしゃい、待ってたよ、霊君。さあ、上がって上がって」
そそくさと俺を部屋に上げると小柄な俺の体を引っ張って、ある一室へと連れて行った。
小綺麗にまとめられた部屋で、俺が好きそうな感じに白黒調にレイアウトされている。
さすが優兄、俺の好みがわかってるな。
「この部屋は自由に使ってくれていいよ。さ、とりあえず疲れたろう?晩御飯食べて後の事は明日にしよう?」
俺は曖昧な相づちを打ちながら優兄を手伝う。
何回も来ているから、勝手はわかっている。
全ての料理を運び終わって座ってから優兄はこう言ってくれた。
「高校入学おめでとう霊君」
何だか嬉しくて、照れ隠しに乾杯したグラスのお茶を一気に飲み干した。
――これから、待ちわびた高校生活がようやく始まる。
最終更新:2008年02月10日 02:30