トル=ハルバーン、幼き日から見る夢は、幼少の記憶、少年兵であった頃。初めて他人の命を奪ったあの日の思い出であった。
悪夢にうなされ目が覚める、過去の忌まわしき記憶はトルの心の奥深くに根を張っていた。
“ゲイル将軍”かつての彼の主であり、父親代わりでもあり、暴君でもあった。そして憎むべき相手でもあった。
時折り思い出すのは、将軍の命令に背いたあの日、抑制された日々から解放されたあの日であった。
トルたちは新たな扉を開いた、
ガルディア老が選定した新たな扉は、トルにとっては懐かしい扉であった。
旅客機、それは
アーキー世界にはない機械文明によるもの。今度の旅の行く先は魔法文明が失われた
アルファ世界であった。
トル達を待ちうけていたのは、荒れる飛行機の中、炎が巻き起こり、飛行機は空中分解を起こす。
辛うじて着陸した場所は、絶海の孤島、トル達は生き残った10人の乗客達と共に島の散策に乗り出した。
足跡を発見したのはダブルエスと呼ばれた男であり、彼は自身を傭兵だったと身を明かした、彼に付き従うのはジョンと呼ばれた少年であった。
一行は足跡をたどり、無人の屋敷へとたどり着いた。
そこで待ち受けて居たのは”モロー”と呼ばれる、動物と人間を掛け合わせたような存在であった、知力があるのか武器を手に襲うモローを、警察官のサム、そして兵士であるシェパードと共に退治、屋敷の捜索に乗り出した。
屋敷を探索した結果、この島は“エクセリオ島”と呼ばれ、島全体が人体実験の施設であったとされた、そしてこの屋敷はその施設の管理者
“Dr.ウェイロム”の屋敷であった。 そしてウェイロム博士の手記がみつかり、彼自身が望んで居た結果がこの島では得られなかったという、あらたな種の創造により世界をより良く変えていこうとした彼の思想は、軍国につけこまれ利用された、そして別方面の協力者の名前が挙がった。
“
虚無の道”そして“サングファン”なる存在であった、手記によればこれらの実験の原理はサングファンの提唱によるものであり、“モロー”達はウェイロム博士が、虚無の道がもたらした失われた技術(つまり魔法)により生み出された存在であった。博士の手記には、すべてを終わらせ、この悪夢を食い止めたいという強い熱意がこめられていた。
これに感銘を受けたのが学者であるケン・イトウであった。彼自身、ウェイロム博士の教え子であり、ジェイクと呼ばれた少年を軍国の実験場から連れ逃げていた最中であったと明かした。そして、手記には、この島に古くから眠る古船があるとされていた。未知なるその船には、“リヴァイアサン”と言う銘が打たれており、船自身が謎のブラックボックスを秘めているとも記されていた。トル達は島の脱出にこの船の入手を決意、さっそく捜索に取り掛かろうとしたところ。突如の敵襲。
屋敷に備えてあった罠装置を用い、敵のモロー軍団を退けるも。ベアータイプのモローと遭遇、トル達はこれらを撃退するも。裏手からの屋敷の侵入によりジェイクが連れ去られた。トル達は、ただちにこれらを追う、そして屋敷の管理モニターにより調べた結果。この島の中央にもう一つ、古くからある船があると記された、その船は機能を大半失っていたが、現場に向かい調べた結果、船には移送テレポート機能が備わっており、そのテレポート先には、モローの研究場。エクセリオがあった。
トル達は、連れ去られたジェイクはここに居ると確信し、進入に際しての編成を練った。テレポート移送機械のハッキングを、機械系に強いとされた少女カレンに託し。彼女の護衛としてサムとシェパード、そして医者のエレンを遺した。残りは音楽家のウィンブルドン、エクソシストであったキャラモン神父を同行させる事にした。
エクセリオの内部は、最先端の機器が備えられており。遺伝子操作の技術と秘術によるプラントにてモロー達が生産されていたのであった。
襲い掛かるモロー達を撃退し、トル達は地下へと進んでゆく。そこで聞こえて来たのは男二人の声。一人はサングファン、そして・・・もう一人、トルはその声を耳にしたとたん憎悪と、悪夢を思い出した。ゲイル将軍その人であった。
サングファンは通信により、言い争いをしていた。内容は、そちらで逃げられた組織の裏切り者を確認したから引き渡すようにと、ジェイクとイトウの事か?いや、内容からするにそれは違うようだった・・・。その内容から察するに、ダブルエスそして彼に付き従うジョンを指す内容であった。トルはこの会話に違和感を覚えた、そう深い記憶の海に眠るわだかまりがトル自身にふつふつと湧き上がった。
サングファンは知ってか知らずか、これを拒否した。それに激昂したゲイル将軍は島の爆撃を宣言、サングファンはひょうひょうとそれに応えた。通信が終わり、彼はつぶやいた。
「将軍の愚かな失態の尻拭いをただでするのはつまらん、なれば我が秘術の業をもって、自らの意思でなぶるほうが何倍も愉快よ」狂人はそう言い放ち、トル達に問うた。
「自らが意志で抗って見せよ、そうでなければモルモットとしての歯ごたえは無い、下でまっておるぞ、博士と共にな」
トル達は、地下へと向かう。道中実験室の片隅で、ジェイクを救出。屋敷でみつけたキーワードを入力して、実験プラントを凍結した、意志のなかったモロー達は、かつて人間であった頃の記憶を呼び覚まし、自らの魂を取り戻した、真なる意味で新しい種として彼らは独立し、確立した。そしてそしてそれを見届けたトル達は隔離された実験プラント場へと足を踏み入れた。ウェイロム博士、彼が遺した悔恨、それを根絶やしにするために。
地下で待ち受けて居たものは、サングファンの意識に取り付かれたウェイロム博士であった。彼自身の意識は既に無く、ウェイロム博士自身が実験体とされていた。その姿はおぞましく、この世のものとは思えない存在へと変質していた。
これがサングファンの秘術によるものなのか、トル達はウィンブルドンの犠牲を出しつつもウェイロム博士を倒し彼の魂を解放、一瞬意識を取り戻したウェイロムはジェイクへと意志を託した、彼自身が秘めたサイオニクスの力を解き放って・・・・。
エクセリオが爆撃による崩壊をうけようとしていた、ジェイクは自らの力によりトル達をエクセリオの外へと飛ばした・・・。カレン達と合流し、彼女の解析によりテレポーターの設定値を変更した。
リヴァイアサン号、そこへ向かって。
リヴァイアサン号は火が落とされたまま、静かに眠っているかのように島の洞窟の内部にあった。中で待ち受けて居た者は、Mrエイトボールと呼ばれるウォーフォージドと呼ばれる存在であった、
「第四世代超次元間航行用超弩級万能次元戦艦リヴァイアサン号、艦長を求める、コードナンバーを入力されたし」
それに答えたのはダブルエスであった。
彼は、長年この船を捜し求めていた、自分自身のルーツを探るために、そして彼自身、謎の男の勧誘により“
レッドクローク”のメンバーとして暗躍していたと告げた。そして捕らえられた収容施設にてジョンと出会い、彼と共に逃げ出して来たのだと答えた。そしてリヴァイアサン号、この船は次元を超える手段を持つ船であり、己をレッドクロークに誘った男にこの船の捜索と入手を依頼されていたと告げた。
トルの記憶が交差した、かつて捕らえられ、自らを救った男の存在をおもいだした、そして彼自身はその後行方不明となり・・・。いや、正確には離れ離れになってしまったのであった、その場所の名前はエクセリオ島であった。トルはジョンと目が合った、どこか奇妙な類似性を感じていたが、そこ少年は間違いなく、かつてのトル自身であった。運命はトルたちの介入により、いつの間にか変わっていたのであった。記憶の修正特有の頭痛に苛まれながら、トルは思った。悪夢が、ひとつ消えてゆく。底から先の記憶が少しよみがえった。
意識を戻すことの無かったモロー達が、トル達へと迫りリヴァイアサン号もろとも、破壊しようと試みた。島の外へと出る扉の装置が破壊され、遠隔操作は不能となった。
誰かが手動であけるしかない・・・・、キャラモン神父は、自らに課せられた運命を悟り、船外へと飛び出た、わずかな間であったが、仲間を救う為に。
「往け、これがわたしの自由への手向けだ」彼が最期にそう言い残し、外へとハッチの扉をたたいた、その手には巨大なロザリオがしっかりと握られていた。リヴァイアサン号につれられ、トル達の視界から消えるまでその姿は崩れる事はなかった。
船が次元の海に突入する瞬間、島は光に包まれた・・・。
ダブルエスは、自らの名をシーサーペントと名乗った。レッドクロークによるコードネーム、彼はリヴァイアサン号を改め、シーサーペント号と名づけた。
ジョンは、シーサーペントの養子として育てられ、彼の本名の姓であるハルバーンを与えられ、シーサーペントの父の名であるトルを授けられた。ジェイクはトルを、ハルと呼び。トルはジェイクを
“
ジェット”と呼ぶようになった。そして、残った10人は
海蛇海賊団として、アーキー世界に渡り、世界を裏から支えるレッドクロークの一団として活躍した・・・・。
トルの記憶がよみがえる、気が付けばそこはホームであった。もうひとつ、入れ替わった記憶。それは前回、爆撃されたシーサーペント号。その姿は、爆撃されてもなお、装甲版をはがし、空へととび立ち、その偉大なる巨体を持って敵を迎え撃ったのである。
トルの悪夢はひとつ消え去った、しかしまだ未だにかれには黒い風が吹いていた。その風は彼を不安にさせ、恐怖を覚えさせるその名。ゲイル将軍、彼の存在、そして虚無の道のかかわりが、彼の運命にいやな風を吹かせていたのであった。
最終更新:2013年06月24日 18:56