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「０６　それでも１つの恋愛感情」を以下のとおり復元します。

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<p>０６　それでも１つの恋愛感情</p>
<p>「……で？これは何がどうなってんだ？」</p>
<p>最凶の切り札、最終兵器、『死神秋様』秋華会長は、楽しそうに笑いながら尋ねる。俺は現在の状況と、弥生先輩の考察を手短に説明した。</p>
<p>「ふうん。まっ、どーでもいいや」</p>
<p>どうでも良いらしかった。</p>
<p>「要するに、こいつは敵なんだろ？　──殺ってやるよ」</p>
<p>
会長はそう言い終わると同時に、強く床を蹴り、宙へと舞い上ががる。あり得ない跳躍力で巨人に接近し、そのまま鋭い角度からの延髄斬りを決めた。巨人の首が抉られるように崩壊し、それに続き、体全体が崩れ落ちていく。</p>
<p>「なんだ、意外と大したこと……」</p>
<p>
拍子抜けだ、という表情で着地した会長だったが、その顔が一瞬、苦痛に歪む。巨人を構成していた荊が、今度は会長の体に巻きつき始めていた。しかし、そんなこと取るに足らない、寧ろこの状況を楽しむかのように、秋華会長は笑って見せた。</p>
<p>「絵馬、お前は先に行け」　笑い終わると、会長は命令口調で俺に言った。</p>
<p>「でも……」　「早く行け。主役はお前に譲ってやるよ」</p>
<p>会長は悪戯っぽく笑う。荊に覆われ、次第に会長の姿が見えなくなっていく。俺は一度だけ頷き、５階へと続く階段を上り始めた。</p>
<p>「オイ、ツウワモードニハイルゾ」　「は？」</p>
<p>階段の途中、突然オルスがそう言ったかと思うと、♪♪♪と例の音楽が流れた。</p>
<p>『……絵馬、聞こえるか？』　「先輩っ！？」</p>
<p>嘴から聞こえてきたのは、弥生先輩の声だった。</p>
<p>『私は無事だ。だが、奇妙な空間に閉じ込められてしまったようだ。他の連中も、おそらく別の場所に捕らわれているのだろう』</p>
<p>あくまでも冷静な声で弥生先輩は言う。</p>
<p>『そっちはどうだ？』　「……今、パソコン室に着いたところです」</p>
<p>何の変哲も無いスライド式のドアの前で、俺は足を止める。</p>
<p>「先輩、もし俺がこの事件を解決できたら、」　『何だ？』</p>
<p>「俺を生徒会長にして下さい」　『それは秋華が認めないだろう』</p>
<p>ですよね、と俺は軽く笑い、パソコン室のドアを開けた。</p>
<p>教室の中には、ある筈の物が一切なく、ただ１つ、黒衣を纏った人影だけがそこにあった。</p>
<p>「──ああ、ようこそ、我が城へ」</p>
<p>その人影は、芝居掛かった口調でそう言った。深く被ったフードで顔は見えない。</p>
<p>「あんたが、魔法の行使者か」</p>
<p>「そうだよ。あたしは荊の城の魔法使い。君はあたしを倒しに来た王子様」</p>
<p>
「……勝手に決めんなよ」　俺は口の中で呪文を唱える。瞬間、目の前の空気が燃え上がり、火球となって人影を襲う。しかし、それは相手の体を通り抜け、後ろの壁に炸裂した。</p>
<p>「ああ、駄目だよ。そんな魔法は効かないの。だって、あたし──」</p>
<p>実体が無いから。人影はそう言い、僅かに見える口元に笑みを浮かべる。</p>
<p>「幽霊みたいなものね。ドッペルゲンガーに近い存在なの」</p>
<p>「ドッペル、ゲンガー？」　「そ。」</p>
<p>人影はくすくす笑い、ゆっくりとフードを外す。露わになったその顔は、</p>
<p>「六橋、さん……？」</p>
<p>クラスメイトの少女、六橋はじめのものだった。俺は思わず、一歩後ずさる。</p>
<p>「どうしたの？大切なクラスメイトは攻撃出来ない？それなら──」</p>
<p>
こっちからいくよ？　そう言うと同時に、床を割って太い荊が現れた。荊は鞭のようにしなり、俺の左腕を打つ。打撃というより斬撃だ。命中した箇所から赤い血が噴き出す。</p>
<p>「駄目でしょ、ぼんやりしてたら」　間髪容れずに二撃目が襲う。俺はそれを右に走ってかわす。腕から滴った血が床を濡らした。</p>
<p>「逃げるのは上手なんだね」　六橋さんが指揮者のように腕を振る度に荊の数は増え、俺を追い詰める。</p>

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