ビシュナル×フレイ

『ビシュナル×フレイ』




1.
枯葉が舞う季節、農場の脇道を燕尾服姿の男が急ぎ足で過ぎ去った。
旬の作物が大地を艶やかに彩るこの場所へ彼は毎朝、業務の一環で足を踏み入れるが、
この日は特別な用事で向かっていた。
「今日に限ってどうして……せっかく姫のお役に立ってみせるはずだったのに」
自分を戒めるようにビシュナルは呟いた。
彼は、農場の管理者兼この地セルフィアの(かりそめの)姫、フレイに仕える執事である。
ビシュナルは自分の特技である掃除を生かし農場で働くモンスター達の住む、モンスター小屋の掃除を
手伝うとフレイに懇願するが約束の時間は過ぎ、空は茜色に染まっていた。
肌寒い風が頬を撫でるとビシュナルは焦燥感を覚え、足取りはさらに早まった。
数分後、彼は小屋の入口に到着した。小屋と呼ぶには少々大きすぎるこの建物は、人が数人暮らす事も
可能だろう。
周囲に畑仕事に従事する小屋の住民達の姿が見て取れた。
「まだ姫のペット達が外にいるという事は、少しくらいお手伝いできるかも」
ビシュナルは急ぎ小屋の中へ入った。きっと姫は怒っているだろう、それとも呆れているかもしれない、
言い訳などせず平身低頭、詫び入るつもりだった。
「姫? こんな所でお休み……ですか?」
干し草の上に眠り姫が横たわっていた。声を掛けるが反応は無い。
小屋内の大半は既に手をつける箇所が殆ど無いほど片付けられており、取り替えたばかりであろう
干し草のベッドからは
甘く安らぐ香りを漂わせている。ビシュナルは四肢を折り曲げ熟睡する無防備な主人を凝視した。
二つに結われた若苗を思わせる淡い髪が干し草の上に無造作に垂れかかり、純白のノースリーブの
ブラウスから伸びる、
熟れた桃の様なやわらかさを見せる白い細腕、その両腕の隙間からかいま見える山なりの膨らみ。
丈の短い薄桃色と黒チェックのスカートから覗く、絡み合う二本の若木を思わせる艶やかでしなやかな脚、
そして二枚の小さな花びらのような唇からは静かな寝息が漏れている。
豊満な女体から溢れ出る色気とは異なる健康的な色気を漂わせていた。
「姫……綺麗だなぁ……じゃなくてお疲れ様です」
ビシュナルは危うく時を忘れ、彼女の肢体を延々と眺めそうになるが理性を働かせた。
室内とはいえ今の季節にこんな薄着で寝ていては体調を崩しかねない。ビシュナルは近くの棚から未使用の
ペット用毛布を取り出して静かに主人へ歩み寄り、その毛布をそっと身体へ掛けた。
「すみません、すぐに代えの毛布を用意しますので今はこれでお許し下さい」
起きる様子は無い、この広い小屋内の清掃を一人で行っていたのだから相応の疲労が溜まっているのだろう。
「残りは僕にお任せ下さい」
囁くように話し掛け、ビシュナルは静かに清掃を開始した。


2.
緩やかに目蓋が開かれていく。
落日が雲を青紫色に染め上げている様が窓から覗き込む。
干し草の甘い香りが再び心地良い眠りへと誘惑するが、目に映る風景に違和感を覚え堪えた。
目を移すと視界には吊り下げられた照明から不安定な灯かりに照らされ、周囲の影がゆらゆらと躍るように
映り込む。
フレイは上体をゆっくりと起こし辺りを見回すが、まどろむ意識では何故自分がベッド以外の場所で
目覚めたのか理解出来なかった。しばらく遠くを見つめていると小屋の入口から男の呼び声が小屋に響いた。
「姫! お目覚めでしたか」
毎朝この声の主に起こしてもらっている事を思い出し、すぐに意識が鮮明に戻る。
「ビシュナルくん、どうしてここに? 私、小屋で寝てたの?」
フレイが開口一番に問いかけると、ビシュナルはフレイの前に歩み寄る。
「はい、部屋までお運びしようかと思ったんですが、起こしてしまうかと思い……」
そこで言葉をつぐみ、伝えようとしていた話に切り替えた。
「姫……僕は姫との約束を破ってしまいました」
「え? やくそく?」
「今日この小屋の掃除を手伝いたいと、僕の方からお願いしておきながら遅刻しました」
そういえば昨日言っていた、とフレイは思い出す。
「姫、ごめんなさい!」
頭を下げ、謝罪の言葉を述べるビシュナル。一見、女性と見分けのつかない端整な顔立ちから発せられる、
優しさを帯びた低い声。毎日顔を合わせ見慣れているがフレイはじっと彼の顔を黙って見つめていた。
眺めるだけで身体中に熱を感じ、自身の鼓動が全身を揺さぶると錯覚した。
「姫、やっぱり怒ってますよね……」
ビシュナルは重そうに顔を上げそう言った。沈黙を守っていた所為かあらぬ誤解を与えてしまったようだ。
「えっ!?」
話を聞いていたにも関わらず、返答すべき言葉を何も考えなかった。
焦り、顔を紅潮させ周囲を見回すとフレイは小屋の変化に気付いた。
「小屋の中、疲れて寝ちゃう前よりすごくキレイになってるよ。ビシュナルくんがしてくれたんだよね?」
ビシュナルに視線を戻して微笑み問いかけた。
「いいえ、ほとんど姫がされたんですよ。僕は全然何も……」
「そんなことないよ。まるで新築した時みたいキレイだし、私だけじゃここまで出来ないよ」
事実、新築と遜色ないほどに仕上げられている。
「姫、勿体ないお言葉です。でも、遅刻して姫に負担をかけた事に変わりはありませんよ」
「私はビシュナルくんの都合さえよければ、って言ったよね? 時間まで約束してないよ。
 それに私の仕事なんだから私が一番頑張るのはあたりまえだよ」
フレイは立ち上がり、干し草のベッドから降りて長身のビシュナルを見上げる。
「だから約束は破ってないしキチンと守ってくれたよ。ありがとう」
主人の満面の笑みをビシュナルは見つめる。愛しさが溢れ、何より心満たされた。
「ですが僕の方から持ちかけた約束ですから! 執事としてけじめをつけさせて下さい!」
本当に実直過ぎる人だと笑顔を崩さぬままフレイは閉口した。
「姫、僕に罰を与えて下さい! 畑仕事でもペットの世話でも何でもやります!
 僕の事は召使いとでも思ってください!」
「ちょっと! 執事が召使いって……えぇー!?」
突拍子もない事を口にするビシュナル、フレイは困惑を隠せないが彼の何でもやるという言葉に心惹かれた。
きっと彼なら手前勝手な要求でも承諾してくれる、と心が強く彼を求めた。
「ほんとになんでも?」
「はい! 執事に二言はありません!」
彼は間髪を容れず返答した。
その答えを聞きフレイの心はさらに過熱する。
「……じゃあ、今夜は私の恋人に……なって?」
我知らず言葉を漏らした直後、フレイは我に返った。彼は真剣につぐないをしようとしてくれているのに、
その思いを踏みにじったのではないか。フレイは俯いた。
「えぇっ! 姫、本気ですか!?」
フレイは以前、勇気を振り絞りビシュナルに自分の想いを伝えた事があった。
その時、ビシュナルは本気にしなかったのか結局冗談話と思われた。
「いえ、ひ、姫のお望みであれば、是非その大役を僕におまかせ下さい!」
フレイは耳を疑った。見上げると顔を紅潮させ全身を震わすビシュナルの姿が目に入った。
「今夜だけ、というのはすごく残念ですけど……」
「……え?」
彼の呟いた声はフレイの耳に届いていた。
「で、では姫、早速ですが恋人同士らしくデート……しませんか?」
ビシュナルの両手がフレイの手を取り、温かく包み込む。
「あ、う、うん。でもこんな時間から?」
既に日は落ちていた。祭事やホタルの舞う夏であれば夜のデートも素敵なものと成りえるだろう。
だが木枯らし吹く夜を楽しむ方法など二人は知らなかった。
「じゃあ他に恋人同士がする事……」
二人は顔を見つめ合う。ほんの数秒見つめ合っただけが何倍もの時間に感じられた。
「ひ、姫、いくらなんでも早すぎるのでは……」
ふいに口を開き、握っていたフレイの手を離し、後ずさる。
ある日は彼女を抱きしめキスを交わし愛を囁き合う。またある日は自分と繋がり淫らに喘ぐ。
そんなフレイの姿を妄想し、目を泳がせ顔を火照らせていた。
「え、早いって?」
突然の反応にフレイはきょとんとする。
どちらかの自室で遊ぼうかとフレイは考えていたが、ビシュナルは別の事を想像しているようだ。
興奮した彼の様子を見ていると、何を考えているのかおおよそ見当はつきフレイも顔が紅潮した。
彼からその行為を求められるのに抵抗は無い。もしそれを受け入れる事で彼が自分だけを見てくれるなら
これはチャンスかもしれない、とフレイは思い立った。
「私は部屋で遊ぼうかなって思ったんだけど、ビシュナルくんはなにを考えてるの? 顔、真っ赤だよ」
フレイはわざとらしくほくそ笑んでビシュナルへ問う。
「え!? 僕はその、変な事なんて……何も考えてませんよ」
「変な事ってなにかな?」
フレイはビシュナルとの距離を詰め、はにかみつつ上目使いに見つめた。
「姫、ち、近い……それに分かってて意地悪してますよね……?」
「ね、教えて。ビシュナルくんの考えてる事をしてみせて。今夜だけなんだよ?」
互いの息づかいが確認出来るほど迫る。
「なんでもしてくれるんだよね?」
二人の心臓は、未だ体感した事無いほど打ち鳴らされていた。
「は、はい僕達は今恋人同士ですし、姫がお望みなら何でもします……だから意地悪は無しですよ?」
意を決したのか、ビシュナルは一歩下がり凛とした態度へ戻った。
恥ずかしさで頭が炎上しそうなフレイは、彼が離れた事に安堵した。
「ぼ、僕の知識で姫に満足して頂けるか不安ですが、今夜は精一杯姫にご奉仕します」
強引に誘惑したも同然だが、これで彼への想いが冗談でない事を証明出来る。
彼が自分に好意を持ってくれているのなら、今夜だけの関係で終わらせる気は無かった。
フレイはこれからされる事への期待と少しの不安を抱きつつ思案していた。
その時、空を漂っていた視界が急に影で覆われた。何の影か理解した頃にはゆっくりと
その小さな唇を温かな熱にふさがれていった。


3.
ビシュナルはフレイの背後に回り、彼女の小さな身体に手を回し抱き寄せた。
うっかり彼女の胸の膨らみに触れた事に驚き、バランスを崩しフレイを抱いたまま
干し草の上に広がる毛布に尻餅をついた。
「きゃっ」
「わわっ、ごめんなさいっ姫」
フレイがビシュナルにもたれ掛かる体勢となった。
服越しでもお互いの温もりが伝わるかのように二人の身体は熱を帯びた。
「姫……すごくやわらかくて温かい……」
囁きがフレイの耳を撫でる。
「ビシュナルくん、こうしてるとやっぱり男の子なんだね」
フレイはしなやかな木の枝を思わせる両腕に捕らえられ、背中には暖かな日差しの中で腰掛けた、
木の幹のような温もりとたくましさが伝わった。
「僕はいつだって男ですよ」
ビシュナルは不満気に言葉を漏らす。
「えへへ、だって女の子みたいな、ん……」
言葉を遮らせたのか、ビシュナルは片腕をフレイの服の中に侵入させ、彼女のお腹を撫でその柔肌を弄んだ。
もう片方の腕で膝を折り曲げた足に手をやり、やや強引に一足ずつブーツを脱がせると、彼女の汚れ一つ無い
艶やかで弾みのある脚はむき出しとなった。
足先から太ももの付け根までを余す所無く、丹念に優しく揉みしだくと、フレイは甘い吐息を漏らし細脚を
絡ませる。
「ビシュナルく、ん……やらしい、よ」
脚に残っていた疲労感がくすぐったい痺れに変わる。
心地よいが自分の一部ではないような感覚をフレイは味わった。
「姫が僕をいやらしくさせるんですよ……」
「私、なにも、んっ」
横を向いたフレイの首筋に吸い付いた。まるで子犬がじゃれるように絶え間無く、彼女の香りと味を脳裏に
焼き付ける。
「や、あ……私、汗かいたから汚いってば」
ビシュナルは無言で更に強く吸い付いてくる。
誰にも預けた事の無い自分の身体が、少しずつ愛しい彼にだけ知れ渡る。
初めて味わう感覚がフレイの胸奥をじりじりと炙る。
ふと気付くとビシュナルの両手がお腹をゆっくり撫でながら上へ向かっていた。
その手は少し震えている。彼の緊張が伝わる気がしたが、その動きは少しむず痒かった。
心地よい暖かさとむず痒さから逃れるように、腰が反射的に小刻みに捩れた。
ビシュナルは本能的にフレイの身体を抱き寄せ強く密着し、その動きを味わった。
抱き寄せた動きの弾みで両手の位置が変わり、フレイの柔肌に手を戻したつもりが二つの山なりを両手に
収めていた。
「あっ」
二人同時に口にした声は異なる意味が含まれていたかもしれない。
ビシュナルはフレイの顔を見つめた。紅潮し目を少し細め恥じらう表情。
フレイも目線をビシュナルの顔へ移すと、彼もまた同様の表情。
きっとお互い似たような顔を見せているのだろうと二人は感じた。
「……姫」
ビシュナルは囁き、両手の指を徐々にフレイの膨らみに沈めた。
「あぅ……ん……」
下着越しとはいえ、初めて触れるその柔らかさに驚きを隠せない。触れると沈み、離せば即座に戻る弾力。
このような果実が存在しえるのが不思議でならなかった。
思い通りに形を変えるフレイの部分に酔い、さらに撫で回すように両手を這わせる。
豊満とまでいかないが、決して小さくはないそれはビシュナルの手により歪み続ける。
度々下着越しに触れる先端からチクリと電流がフレイの体幹を巡り、疼きが全身に芽ぐむ。
「んっ……ちょっと、あぅ……苦しい、かも……」
ビシュナルは即座に手を服の中から取り出し、フレイの様子を伺った。
「す、すみません姫、強すぎましたか?」
「ううん、そうじゃなくて服が……」
呼吸を乱しながらフレイは口にする。
小屋に着いた時もビシュナルはフレイの姿を少し眺めていたが、彼女のブラウスはボディラインを強調する
タイトな物だ。
普段は胸当てやポーチ、装飾品の類で目立たないがくびれた腰、はっきりと分かる瑞々しい胸の膨らみ、
改めて間近で見ると、よくこの姿に目を奪われずに済んだものだ。
ともあれ、窮屈な服であるに関わらず強引に手を押し込んだ自分をビシュナルは恥じた。
「……コレ、脱いじゃうね」
言葉を漏らすとフレイはビシュナルから少し離れ、背を向けたまま手早く脱ぎだした。
「えぇ!?」
彼女の急な行動にビシュナルの心臓は跳ね上がるようだった。燃え上がるような体温を逃そうと汗が全身から
にじみ出す。
燕尾服を着ていられず彼も上着、ネクタイ、ベスト、シャツと次々と脱ぎ捨てた。
「えっと、コレも外した方がいいの、かな?」
背を向けたフレイの両手は白い下着の肩ひもを触れていた。
曲線を描く小さな肩、白く儚げな背中とくぼみ、その両脇を彩る淡い緑の髪。ビシュナルは再度抱きしめたい
欲求に駆られる。
「はい、僕におまかせ下さい」
「えっ?」
言い終わるが否や下着のホックが背中にある事を確認すると、ゆっくりとフレイの背中を味わうように
指を這わせた。
「ひゃあ!」
背中まで弄られるとは予想外で思わず声を上げ、腕をピンと下に伸ばし背中を反らせた。
同時に胸元が少し寒くなったと思うと、自分の胸部を覆う物が無い事に気付き、外気が直に伝わっていた。
飾り気の無い無地の下着が膝下の干し草に横たわっている。
こんな事になるなら、もっとかわいい下着をつけておけば……とフレイの心が呟く。
「ビ、ビシュナルくん? あの、なんだか手際いいんだね……?」
素肌の大半と、はだけた双丘を晒す恥ずかしさを堪えながら疑問にする。
「執事ですから、男女いかなる着付けは必須知識ですよ」
得意げに語るビシュナル。
「そ、そういうものなのかな」
納得出来るような出来ないような面持ちでいると、フレイの背中に細く引き締まったビシュナルの肉体が
密着した。
直に触れ合う肌、服越しとは比較にならない暖かさがお互いの心身を熱くする。
フレイは温もりを堪能していると、自身の二つの先端から激しい電流が内側に伝った。
「ゃあんっ!」
ビシュナルの両手は彼女の素肌の双丘を捕らえ、再度弄んだ。
先端を指で挟み、その側面を弱く時々強く擦る度にフレイの口から甘く熱い声が響く。
「姫、僕はちゃんと……ご奉仕出来ていますか?」
答える余裕も与えず撫で回し敏感な所を擦りあげ、そこを上から小さく押した。
「やぁっ……!」
フレイは嬌声を上げ身を捩ろうとするが、ビシュナルの身体に捕らえられ逃げ場が無い。
自分の意思とは無関係に快楽を求めつつある身体に対し羞恥を感じた。
やがて止む事の無い愛撫に切なさを覚えはじめると、彼女は自身の中心から熱と疼きが沸きあがる事に
気付いた。
羞恥心から膝を上げ、愛撫を続けるビシュナルの手の前で膝をもじもじと擦り合わせる。
無意識にさらに強い快楽を彼に求めたのかもしれない。
「っ姫……」
それ以上の言葉は発さず、両手をフレイの丸く張った二つの桃肉へと添えた。
「ふぁ……」
その手がどこへ行こうとしているのか瞬時に理解した。
密着した身体からお互いの高鳴る鼓動が感じられる。
ビシュナルは緊張のあまり手が痺れ、思うように動かせられずにいた。
そのせいか、焦らすように手を這わされているフレイは全身の疼きがさらに沸き立った。
「姫、あの……ショーツを脱いだ方がいいと思いますので……」
フレイの耳元で力無く話す。
「はぁ……はぁ、そう……だね」
視線を僅かに交わし承諾を得たビシュナルは、痺れる両手で僅かな部分のみ覆い隠すだけの、
その扇情的なスカートを捲りあげた。スカートの内側だった所へ侵入しショーツのサイドを掴むと
力を込めてそれを下ろした。
フレイは力の入らない腰をなんとか浮かせると白い繊維が脚と擦れ、シュルシュルと音を立てながら
ビシュナルの両手と共に足首を離れていった。
外気が自分の秘部に触れる感覚に慣れず脚を閉じようとすると、すかさずビシュナルの指が
フレイの中心の閉じられた部分へ添えられた。
「あっ、あぅ……」
物言いたげなフレイの横顔。上体を伸ばし彼女の唇を自分の唇で挟むようにふさいだ。
ビシュナルの中指が裂目を擦りはじめる。横へ撫でると一瞬秘部が露わになり潤い続ける柔肉に触れ、
彼の指とフレイのそれは灯りに照らされ、徐々に雨後のごとく濡れた光沢を見せていた。
「ぁんっ……くぅ……ん」
淫らな声を押し殺し、下腹部を襲う快感から逃れようと何度も腰を捩るが、やはり彼がそれを許さなかった。
やがて空いていたもう片方の手で裂目を開き、濡れた指を中に這わせ秘部を探った。
「ビシュ……ナ、んぁあっ!」
意図せず、探る手が敏感な小さなつぼみに軽く擦れた。
痛みと快感の熱波がフレイの中心から広がる。程なくして彼の探る指がフレイの中へ侵入した。
濡れた肉壁へ辛うじて指は入るが、異物の侵入を拒むように締めあげられ半分も通れそうに無い。
「すごい……」
ビシュナルは自分自身がこの中に居たならどうなるかと想像すると、ただでさえ痛いほど怒張したものが
さらに血を滾らせる。
奉仕なのだからと、これ以上無理に押し入れ苦痛を与える訳にはいかないので、そのまま指で撫で回すように
フレイの中を愛撫する。
「やぁ! んっ……あぁ……」
切ない喘ぎ声とぬちゅりと卑猥な水音が小屋へ静かに響かせる。
裂目を開いていた手を放し、再度双丘の片割れを掴みその先端を強めに挟み込むと淫らな声は押し殺せなく
なり、捩る身体は淫猥な踊りに思えた。
幾度も執拗にフレイの中の肉壁を撫で回すと、水音はさらに深みを増していく。
ふとフレイの秘部を見下ろすと、彼女の乗った毛布には広がる染みが見えていた。
「んやぁ……ビ……シュ、あぁっ……!」
ビシュナルはどれほどの時間、フレイの大切な部分を責めたのか。何かを訴えたそうな様子に気付き
愛撫の手を緩める。
「ぁ……あの、ね。えと……そろそろ……」
俯き羞恥に耐えるフレイの横顔がビシュナルの目に映った。その視線は虚ろだが虚空とぬめる秘部に
差し込まれた指とを交差していた。
「ひ、姫、それだけは……」
不意に拒絶するように言った。
「……やっぱり、私じゃ嫌……かな」
消え入りそうな震える声で呟く。
「違いますっ! これ以上は姫が本当に好きになられた方とするべきです!」
「す、好きでもない人にこんな事してもらうワケないよ!」
ビシュナルは目を大きく広げ呆然とした。
「えっ……? 僕はご奉仕を、その……主人の欲求不満を解消するのも執事の務めと昔、本で……」
信じられないといった面持ちで独り言のように呟く。
「仕事だからしてくれたの?」
ビシュナルは首を大きく横へ振る。
「それも違います! 僕が姫を女性として大好きだからですよ! 僕だって男です。こんなにも大好きで
 可愛い人から誘われて、ノーなんて言えませんよ……!」
反射的に言葉にし、ビシュナルは押し黙るが、その言葉を聞いたフレイは心から至福を感じ、心身を
取り巻く快楽が激しく燃え上がった。
「私だってずっと前から大好きだよ……」
ビシュナルは心臓を鷲掴みされたような気分を味わった。だがそれは生まれて初めて味わう心地のよい
ものだった。


4.
お互いに問いたい事がいくつかあった。
しかし燃え上がった二人の若い情欲がそれを暫く掻き消した。
ビシュナルはフレイを毛布の上に仰向けに寝かせ、彼女の両脚を開いた。
正面から覗くフレイの露わになった肢体と、男を待つ蜜液に塗れた秘部。
眺めるだけで情火に焼かれそうなほど彼の脳を痺れさせる。
「姫、それでは……」
怒張した彼の肉茎がフレイの目に映る。初めて見る彼の一部を前にして目を丸くした。
「あっ……そ、ソレ……」
怖気づきそうになり、ビシュナルの顔へ視線を移した。
女性と見紛う彼の顔は愛らしいと思えるほど羞恥に歪んでいた。でもそれはお互い様かとフレイは微笑む。
ビシュナルの下腹部が迫り、彼の穂先がフレイの小さな花弁とつぼみを撫でると、愛しい嬌声が漏れる。
ゆっくりと穂先が花弁を押し分け、水音を響かせながらフレイの中へ飲み込まれていく。
「うっ……くぅ……!」
ひだが穂先に触れたと思うとそれはたやすく押し広げられた。
苦痛の色を示す声が耳に入り、ビシュナルの侵入は止まった。
半分ほどが彼女に飲まれ、彼の敏感な先端をぬめりうごめく肉壁が圧する。
「くっ姫、大丈夫ですか……?」
「う、うん。だいじょうぶだよ」
微笑み返答するが、眉は少し寄せられていた。慣れない異物感が呼吸を乱す。
ビシュナルは自分自身を愛しい主人の中へ突き立てる喜びと背徳感に陶酔し、これまで感じた事の無い
快楽を受けていた。
「うぅ……姫……無理はしないで下さいね。や、やめたくなったらいつでも……」
「へ、へーきだよ……まだまだガマンできるよ」
ビシュナルは頷き、再び肉茎が彼女の中を進み出した。
「はっ……ぁ、やっ……あぁ!」
肉を裂くような痛みと、愛しい人を自らの中に受け入れる快楽が天秤に揺れていた。
やがてビシュナルの侵入が止まると、フレイの最奥と触れ合った。
フレイの顔はさらに紅潮し頬を涙が伝う。
「ぁ、あ……奥に」
ビシュナルとの距離はゼロになっていた。
太い彼のものを余さず包み込む感覚が不思議でならなかった。
「姫、一旦……抜きますか?」
気遣う声がフレイの耳に入った。
「ううん、このままがいい」
「では、しばらくこうしていましょう」
これ以上動くと限界に達しそうな程、彼のものは太くなり脈打っている。
温かくぬめるフレイの中を、刺激して締め上げられぬように堪能した。
しばらくしてお互いの呼吸が整った頃、フレイは腰を僅かに前後した。
「あぅ! 姫? まだ痛みがあるんじゃ……」
「ゆっくりなら大丈夫みたいだから……ビシュナルくんもガマンしてて辛いだろうし」
唇を噛み締めた彼の表情から察したのか、自分の中で強く脈打つ肉茎から感じ取ったのか、
ビシュナルの思いは見透かされた。
「その、あんまり激しく……しないでね?」
紅潮したフレイの笑みが浮かぶ。
「……はいっ」
ビシュナルはフレイの脚に両腕を絡めると、ゆっくりと注送が始まった。
大きく腰を引き、時間を掛け感触を余さず味わうよう差込み、最奥を突いた。
「はぁ……あぁ、や、あぁっ……!」
敏感な入口付近を穂先の傘で引掻かれ、最奥を突かれると彼女の中に留め止めなく蜜液が溢れ、卑猥な
水音が部屋に響き渡る。
その音に耳を犯されるような悦びを覚えビシュナルの腰は何度もフレイと離れ、密着した。
繰り返す内に最奥に辿り着く時間が早く感じ、結合した部分を見ると自分の動きに合わせ、小さく
フレイの腰が前後している。
「ひ、姫……気持ち、いいです……」
彼は肩で呼吸しながら穂先が痺れるような熱さを感じていた。
「ん……ぁんっ!」
フレイは無意識に自らペースを早めた。再び擦り切るような痛みが襲うが、敏感な部分を彼の肉茎に
犯される感触を一秒でも早く味わいたかった。
「姫、無理は……だ、ダメです!」
彼女の身と自分の限界の事を案じて言った。
「あぁんっ! なに……これ……!」
腰の動きが徐々に早くなり、自分と別人のものが動いていると錯覚した。
「んくっ……姫、もう……!」
フレイは中で注送を繰り返す彼の肉茎の震えを感じた。
彼が動く度にぐちゅりぐちゅりと秘部が音を立て新たな蜜液を吐き出し、強く彼のもの締めつける。
やがて彼自身の注送が激しくなり、上体をフレイと重ね合わせ、彼女の細腕ごと抱きしめた。
「んんっ! あぁぁーっ!」
一際大きな嬌声を上げるフレイ。
そしてビシュナルは大きくフレイの最奥を突いた。
「くぅっ!」
ビシュナルが震え呻いた瞬間、彼の先端から熱い飛沫が撒き散らされた。
何度も何度も、フレイの最奥の果てを自らのもので満たそうと肉茎が震えた。
「ぁ……ぁ……」
フレイの視線は虚空を泳ぎ、声にならない喘ぎを上げる。
最奥がうねる気がした、彼の吐き出したものを得ようとする為に。
二人はしばらく肩で呼吸し、繋がっていた。
ビシュナルの穂先はまだ思い出すかのようにピクリと跳ね、残滓をフレイに送る。
ビシュナルは名残惜しさを堪え肉茎をゆっくりと引き抜いた。
フレイのひどく濡れた秘部は彼女の血が混じり、薄赤い蜜液が溢れている。
最後の最後で欲望の赴くまま彼女を犯した事をビシュナルは恥じていた。

「初めて姫に好きと言われた日は、心臓が飛び出そうだったんですよ? でもどうして僕の事を?」
「セルフィアに来て何も分からない私に、生きる術を教えてくれたのはビシュナルくん。
 私が危険な場所へ向かうとき、いつも横にいてくれたのもビシュナルくん」
毛布の上で二人は裸で抱き合い語り合う。
「それはビシュナルくんにとって仕事だからかもしれないけど……でも、いつの間にかこんなに好きに
 なっちゃった」
満面の笑みを彼に向けた。
「それで僕の為に……身を捧げてまで僕の事を……」
嬉しさに胸を貫かれ、彼の頬に涙がこぼれた。
「んっ」
ビシュナルの唇をフレイの小さな唇がふさいだ。
「最初は嫌われちゃうかと思ったけど、思い出で終わらなくてよかったよ」
「……僕は幸せ者です。それなのに姫の事は主人だ、自分は見習いだ……なんて言い訳して
 自分の気持ちを伝えもしなかった僕は本当にダメですね」
「じゃあもう一度、改めて伝えて?」
悪戯っぽくフレイは笑う。
「え?! ……はい、姫……一目見たときから好きでした。今は大好きです!」
真直ぐにフレイの目を見て想いを伝えた。
「あ……えへへ……」
恥ずかしくなり、フレイの顔は紅潮し口をつぐんだ。
静寂が小屋を包み二人は安息を感じ取っていた。今ここはまさに二人だけの世界……そう思っていた。
「ところで姫、夜も更けてきましけどペット達は?」
「あ!」
この場所が彼らの家だという事を、二人は情欲に溺れ忘れていた。
反射的に二人は起き上がり入口を見るとそこには、仕事を終えたペット達が入り辛そうにこちらを見ている。
「い、いつから見られてたんでしょう……?」
「……」
恋人達は早々に後始末をして逃げるように小屋を後にした。
小屋を出ても、背後から刺さるような視線を感じた気がした。
その後、誰も棲まないモンスター小屋が一軒建ったとか建たなかったとか。

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最終更新:2021年08月17日 16:27
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