説明及び注意事項(最終更新日:2009/03/27)
①このページに関しては、特段の断りやリンクがない箇所は、まとめ管理人が書いています。管理人は法律の専門家ではありませんので、専門家から見た場合はやや捉え方に問題のある記述などをしてしまう場合もあります。
②質問・情報提供や間違いの指摘等ありましたら、
こちらのコメント欄までお願いします。
③このページの最新更新日は2009/03/27で、ページ構成を変更しました。
目次(関連ページ一覧)
テーマ別まとめ
資料・統計まとめ
議論のまとめ
推進論・反対論等のサイト
規制推進派の議論
規制慎重派の議論
独自の改正案や対案の紹介
各種の整理及び検討(別ページでの詳細検討及び外部リンク)
「児童ポルノ法」の基礎知識
「児童ポルノ法」に関する法律的な検討
「児童ポルノ法」に関する過去の経緯の検討
「児童ポルノ法」関連記事・はてなブックマークでの反応
早川議員のブログのコメント欄での議論のまとめ
「児童ポルノ法」改正案における与党(自民・公明)案と民主党案の違いの整理
両案の概要の整理及び違いの一覧
この問題に関しては、公明党及びNGO・各種宗教勢力が単純所持規制及び創作物への表現規制に積極的で、民主党は本来の法律の趣旨に沿った児童保護に力を入れて、各種の規制には日本国憲法の各種理念との関係や冤罪被害の防止という観点から消極的という構図になっています。
そういった枠組みの下、与党(自民・公明)案と民主党案の違いは、以下の7点になります。
①「単純所持規制」の導入
与党案:導入(冤罪被害の防止に関しては言及なし)
民主案:警察の捜査権拡大や冤罪被害の防止のため、
取得罪で代替
②「単純所持規制」に伴う遡及処罰をどう捉えるか
与党案:法解釈はクリアできるので導入
民主案:
憲法39条の趣旨に反するので導入せず
③創作物への表現規制を前提とした調査の導入
与党案:表現規制を前提とした調査を導入
民主案:
憲法問題もあるので導入せず
④「児童ポルノ」の定義
与党案:そのまま
民主案:警察の捜査権拡大や冤罪被害防止のため定義厳格化
⑤3号ポルノ
与党案:そのまま
民主案:警察の捜査権拡大や冤罪被害防止のため削除
⑥被害児童保護の施策
与党案:言及なし
民主案:被害児童の保護の充実化
⑦保護法益の明確化
与党案:あいまいなまま
民主案:個人的法益保護法として明確に位置づける
⑧所轄官庁
与党案:
警察庁のまま
民主案:犯罪取締り法ではなく、個人法益保護法として明確に位置づけるため
厚生労働省に変更
→
資料:自民案・公明党案・与党案
→
資料:民主党案※リンク先PDF注意
参考サイト
論点1:「単純所持規制」の導入
与党案:導入(冤罪被害の防止に関しては言及なし)
民主案:警察の捜査権拡大や冤罪被害の防止のため、所得罪で代替
関連項目
論点2:「単純所持規制」に伴う遡及処罰をどう捉えるか
与党案:法解釈はクリアできるので導入
民主案:憲法39条の趣旨に反するので導入せず
与党案の「単純所持規制」を導入した場合、法改正後は、法改正前に入手したものでも違法とされる「児童ポルノ」を所有していた場合逮捕されます。
憲法39条「訴求処罰の禁止」は、国民の予測可能性や行動の自由を確保するという自由主義の理念によって支えられている原則のため、与党案が通れば、憲法39条「訴求処罰の禁止」に違反した立法であるという指摘もされています。
日本国憲法 第39条
何人も、実行の時に適法であった行為又は既に無罪とされた行為については、刑事上の責任を問われない。また、同一の犯罪について、重ねて刑事上の責任を問われない。
この件に関しての法解釈は、所持罪は継続犯であり、 単純所持罪の施行後の所持については、新規に単純所持罪が成立して遡及処罰される訳ではないという解釈になるようです。
■[FAQ児童ポルノ・児童買春]単純所持罪(持ってるだけで逮捕される)の施行と刑罰法規不遡及- 奥村徹弁護士の見解
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20080831
所持罪というのは、継続犯なので単純所持罪の施行後の所持については、単純所持罪が成立するということで、遡及処罰されるわけではありません。
現行法(目的所持罪)でも、当初、目的がない所持については、目的所持罪は成立しませんが、目的を生じた以降の所持については、目的所持罪が成立します。
そのため、法解釈上は憲法問題をクリアできるので、実質的な遡及処罰であっても「単純所持禁止」を主張する与党案と、憲法の趣旨に沿って実質的な遡及処罰をせずに取得罪の創設によって代替する民主党案の間で違いが出ています。
論点3:創作物への表現規制を前提とした調査
与党案:表現規制を前提とした調査を導入
民主案:憲法問題もあるので導入せず
日本国憲法
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の
表現の自由は、これを保障する。
○2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
憲法21条2項の「検閲」の意味については、最高裁判例が出ています。
この場合の論点は3つのレベルに分かれます。
①狭義の「検閲」に該当し、憲法違反の可能性があるという問題
②狭義の「検閲」には該当しないが、国家が情報に線引きを行うという「表現の自由に対する制約の一般的なあり方としての是非」としての問題
③日本の場合は、法的根拠がなくても「お察し」による実質的な検閲機能が働くため、過剰コンプライアンスによる文化の衰退を招き、コンテンツ産業に壊滅的打撃を与える可能性があるという問題
①から検討していくと、ポルノは「思想内容等の表現物」なのか?という議論はありますが、そのような表現物を目にして不快になる人がいる事からも、「思想内容等の表現物」として捉える事が可能です(なぜ不快になるのかという説明は、女性学的な見地からの説明で関連項目を参照して下さい)。
この場合、最高裁の「検閲」の定義を引用して定義に当てはまるかの検討で「これこれだから、検閲に当たる」という論にもっていき、規制を正当化するようなデータや統計が存在しない事(その事は政府も答弁で認めています)と合わせて訴訟を行った場合、違憲判決が出る可能性があります(実際には、多大な費用と時間をかけて違憲訴訟を戦う人はいないと思いますが)。
→
共謀罪、児童ポルノ法などの反対論の際に出てきた「立法事実」というのは、どのような概念なのでしょうか?
②に関しては、狭義の検閲には該当しないけれども、「表現の自由に対する制約の一般的なあり方としての是非」としての問題になるという点です。憲法の法解釈としての「検閲」という概念は、ある物を出版の前に国家機関が審査し、場合によっては発行禁止処分にすることをいいます。そのため、仮に表現規制を導入した場合でも、憲法の法解釈上の論点としての「検閲」には当たらず、国家や国家機関が情報に線引きを行い「思想・良心の自由」「言論・表現の自由」を侵害するという「表現の自由に対する制約の一般的なあり方としての是非」の問題になってくるという考え方です。
③に関しては、「表現の自由に対する制約の一般的なあり方としての是非」の問題に加え、日本の法文化としては法的根拠がなくても「お察し」によって自主規制が始まり、それによって実質的な「検閲」が行われてしまうため、過剰コンプライアンスによる文化の衰退を招く事、コンテンツ産業に壊滅的打撃を与える可能性があるのではないか?といった問題の指摘もされています。
関連項目
論点4:「児童ポルノ」の定義
与党案:そのまま
民主案:警察の捜査権拡大や冤罪被害防止のため定義厳格化
参考サイト
論点5:3号ポルノ
与党案:そのまま
民主案:警察の捜査権拡大や冤罪被害防止のため削除
論点6:被害児童保護の施策
与党案:言及なし
民主案:被害児童の保護の充実化
論点7:保護法益の明確化
与党案:あいまいなまま
民主案:個人適法駅保護法として明確に位置づける
論点8:所轄官庁
与党案:警察庁のまま
民主案:犯罪取締り法ではなく、個人法益保護法として明確に位置づけるため厚生労働省に変更
民主党案は、所轄官庁を(犯罪取締りを行う)警察庁から(児童福祉・児童保護を行う)厚生労働省に移管し、社会保障審議会による被害児童に関する
施策の定期的な検証・評価の実施、厚生労働大臣に対する意見具申を行うという提案をしています。
誤誘導及び誤情報の訂正
「児童」といわれる年齢の日本と世界での違い
日本 18歳未満に見える(ヌード芸術も不可)
アメリカ 18歳未満(ヌード、芸術は可)
イギリス 13歳未満
フランス 15歳未満
ドイツ 14歳未満
ロシア 無し
イタリア 14歳未満
ノルウェー16歳未満
スイス 16歳未満
デンマーク15歳未満
キューバ 13歳未満
スペイン 13歳未満
そもそもの問題は、「単純所持規制」や「表現規制」ではない事
児童買春、児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童の保護等に関する法律は、 国内における援助交際や東南アジアにおける買春ツアー等が社会問題となっていた中、児童買春、児童ポルノに係る行為を処罰し、児童を保護するため、平成十一年に議員立法により制定されたもので、同法附則においては、施行後三年を目途として、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものと規定されております。
児童ポルノ法施行後、10年が経過しようとしていますが、その間におけるそもそもの問題であった東南アジアでの児童買春問題はどうなったのかについては、
「青少年問題に関する特別委員会(2008/04/10)」で民主党の吉田泉議員が質問した結果、これまでの統計は以下のようになっているという返答がされました。
平成十一年十一月の児童買春、児童ポルノ禁止法施行後、平成十九年末までに検挙いたしました児童買春事件の検挙件数及び検挙人員は、一万二千二百三十五件、八千百三十七人、児童ポルノ事件の検挙件数及び検挙人員は、二千五百五十五件、千八百二十五人となっております。
特に、児童ポルノ事件につきましては、平成十七年から検挙件数、検挙人員とも大幅に増加をし、現在まで高水準で推移をしております。この増加につきましては、平成十六年の同法の改正による取り締まりの強化などが要因の一つとして挙げられるものと認識をしております。
また、 国外犯の検挙状況につきましては、これまで、タイ、カンボジア、フィリピンでの日本人による児童買春、児童ポルノ禁止法違反事件で十件、十六名を検挙しております。その内訳は、児童買春事件が六件、六名、児童ポルノ事件が四件、十名となっております。
日本ではコンビニで「児童ポルノ」が売られているという事について
そもそも、現行の「児童」の定義が18歳以下となっている上に「児童ポルノ」の定義も曖昧で広すぎます。
ジャニーズJrの半裸の写真や女子高生の水着写真も「児童ポルノ」に該当する可能性がありますし、「準児童ポルノ」という概念を用いればなんでもコンビニで売っている事になります。
「風紀を乱す猥褻物」に該当する雑誌等がコンビニで売られているケースもあるという事は事実ですが、一般の方が「児童ポルノ」と聞いてイメージする「小学生・中学生を虐待している雑誌・写真」を取り扱っているコンビニというのは、どこにあるのでしょうか?
なお、「誰でも閲覧可能」という枠組みで捉えた場合、問題となってくるのはインターネット上にある「児童ポルノ」に当たるコンテンツになると思いますが、こちらは現行法の提供目的所持で摘発は可能です。
日本は児童ポルノサイトが世界で3番目に多い国であるという事などのNGOが主張する統計や数字について
日本での「市民運動」をしている団体の場合、日本の状況を国際的に批判させて自分達の主張に国際的な権威をつけようとするため、国際会議などで主張する統計数字や事実は主観的で過大評価している事がほとんどです。
インターネットの発達前は、その種の主張も検証に晒されなかったため問題が表面化しませんでしたが、昨今では広く検証に晒され、検証を行わずに一方的な情報を流してしまう一部のマスメディアの情報の信頼性も低下していっているという構図になっています。
「性的搾取」反対の世界会議 準備会合(2008/10/11)
http://www.yomiuri.co.jp/komachi/news/mixnews/20081011ok01.htm
子どもの性的搾取とは、買春、人身売買、ポルノなど、子どもを性的な対象として扱う虐待行為を言う。
性的搾取の中でも、状況が悪化しているのが児童ポルノの問題だ。米国では、認知された児童ポルノのサイト数が2001年に2万だったのに対し、06年には34万と激増。準備会合では、日本も児童ポルノのサイトが多数つくられている国の一つとなっている現状が指摘された。
国際NGO「ECPAT/ストップ子ども買春の会」共同代表の宮本潤子さんの報告によると、05年3月~06年10月の集計で、日本は、米国、ロシアに続き3番目に児童ポルノのサイトが多い国という(ECPATスウェーデンホットライン調べ)。
上記の数字に関しては、日本のみイラストを「児童ポルノ」として統計に入れた疑いがあるなど、統計数字の出し方への疑問が指摘されています。
1998年、日本に「児童ポルノ」の法規制を求める際のICPOの主張では「世界中の商業サイトで見ることのできる児童ポルノのうち80%にもあたるものが日本からのもの」との事でしたが、その事自体が規制を求めた「市民団体」の主張する数字で、同時期に「カナダの税関を通過している児童ポルノのうち80%に当るものが日本製」というICPOの出した数字と一致しています。
また、仮に「世界中の商業サイトで見る事のできる児童ポルノの80%が日本製」という当時の事実認識が正しかったとしても、その状況は法規制を制定してから劇的に変化しています。
2002年3月20日の参議院・内閣委員会で触れられていましたが、
「インターネット・ウオッチ・ファンデーション(インターネット監視財団)の調査では、一九九七年に日本は世界シェアの二三%だったんですが、二年後の九九年には二%に減少しています」というのが、英国の半官半民の財団(
「Wikipediaの一部を「児童ポルノ」としてブロックした事もあります」)の調査による日本の「児童ポルノ」の世界シェアの推移です。
三番目の数字は、今度は児童ポルノの発信度です。これは、英国のインターネット監視財団という半官半民の財団、これの数字によると、アメリカが全体の五四%、ロシアが二八%、ヨーロッパが八%、アジアが七%。日本はそのアジアの中に入っているわけですから、これも日本はせいぜい数%というデータがあります。
何かこういう数字を見ますと、私は、日本は、性犯罪、そして児童ポルノの利用さらには発信、いずれもG8の中では一番低いレベルにあるんじゃないかというふうに推測したわけであります。
「児童ポルノ法」に関するQ&Aなど
不特定多数の人間を無差別に社会から葬り去る「究極の情報兵器」としても使えるのではないでしょうか?
この点に関しては、法運用面でのリスクを完全に排除する事はできなかったため、与党(自民・公明)案でも
早川修正案が一部採用され
「自己の性的好奇心を満たす目的」での児童ポルノの所持に限って処罰対象となったため、「究極の情報兵器」で処罰されるリスクは無くなるようです。
民主党案に関しては、「単純所持規制」は入っていませんので、元々この種の問題は発生しません。
自分の子供の入浴写真を持っていても罪になるのはおかしいのではないでしょうか?
「児童ポルノを定義できない法務省」って議員から突っ込むのは法務省に気の毒ですよ。 - 奥村徹弁護士の見解
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20080303/1204526863
「若い夫婦がブログで行っている育児日記で子供の裸の写真をアップした場合」については、3号ポルノの性欲刺激要件が問題になりますが、一般人基準で判断するといいつつ、0歳児の裸で興奮する人も少なからずいるので、それを一般人に取り込んでしまうと、一般人基準で性欲刺激するという認定が可能です。奥村が知る限り、0才の児童ポルノ、6才の児童ポルノが認定されています。
「単純所持禁止」が導入された場合、子供の写真を「提供」ではなく「所持」しただけで罪になるようになってしまい、多くの方から懸念が寄せられていましたが、この懸念は立法段階で基準を明確化しない限り払拭されませんでした。
この懸念を受けて、与党(自民・公明)案でも
早川修正案が一部採用され
「自己の性的好奇心を満たす目的」での児童ポルノの所持に限って処罰対象となったため、立法段階での基準の明確化で対応が図られるようです。
民主党案に関しては、「単純所持規制」は入っていませんので、元々この種の問題は発生しません。
30歳の女性が子供の頃に撮影したヌード写真をブログにアップした場合でも「子供の人権侵害」で処罰されるのは何故なのでしょうか?
児童ポルノ対策は「出会い系サイト規制」の方が効果的ではないでしょうか?
「子供の人権保護」という側面を重視するならば、「被害児童のケア」もすべきではないでしょうか?
「児童ポルノ法」制定当初はこれも法案に盛り込まれいたはずですが、今では少しも触れられていないそうです。
民間NGOで、児童虐待防止キャンペーンを行ってる「オレンジリボン」運動などもありますが、そういった活動をしている団体のサポートをするなどの声明が一切無いという点も指摘されています(この活動に関しては、日本ユニセフ協会は協賛団体のメンバーではないそうです)。
国は児童ポルノ・児童買春被害者の救済を怠っている - 奥村徹弁護士の見解(2008/05/26)
http://d.hatena.ne.jp/okumuraosaka/20080526/1211755257
法律が予定しているのは、責任は加害者に、被害者ケアは「関係行政機関」にという体制である。交通事故にたとえると、責任は加害者にあるが、治療については救急医療体制が整えられて医療機関が行うこととされているのと同じである。
ところが、児童買春(かいしゅん)被害については、法律上体制が義務づけられているにもかかわらず、実際に「関係行政機関」がケアを行うことはない。
「単純所持禁止」が成立した場合、冤罪事件の増加などは予想されますか?
海外では、多数の具体例があります。
日本の場合でも、2009年に逆転判決が出た足利(冤罪)事件の原因の一つには、被告に対する偏見があったといわれていますので、そういった事が助長される可能性はあります。
→
刑法・刑事政策/足利冤罪事件
この種の法案は米国では何度か連邦最高裁で違憲判決が出たそうですが、その内容はどんなものでしょうか?
最近の新聞報道・ブログ記事
児童ポルノ法に関する新聞報道
児童ポルノ法に関するブログ記事
#blogsearch2
合計: - 今日: - 昨日: -
最終更新:2009年07月16日 08:38