国会質疑 > 児童ポルノ法 > 2009-06

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衆議院・法務委員会(2009/06/26/午後)/葉梨康弘議員(自民党所属)

○山本委員長 これより参考人に対する質疑に入ります。
 質疑の申し出がありますので、順次これを許します。葉梨康弘君。

○葉梨委員 自民党の葉梨康弘です。
 参考人の四人の先生方、きょうは本当に御苦労さまです。貴重な御意見を賜りまして、ありがとうございました。
 十五分しか時間がございませんので、簡潔に進めてまいりたいと思います。
 田島先生、今の御意見の陳述の中で、特に欧米では芸術的なものが児童ポルノから除かれているというようなお話がございましたけれども、具体的にどこの国でございましょうか。

○田島参考人 短い時間の中で、ちょっと余り正確に言えなかったと思うんですけれども、単純所持罪もそれから創造物規制も除かれているのではなくて、多くの国はそれを用意しているという理解なんですね。
 ただし、その前提になっている児童ポルノの定義が、ある程度限定的なものであるということを前提にして行われている、そういう趣旨なんです。

○葉梨委員 お聞きしたのは、芸術的なものを除いているという国はどこですかということです。簡潔にお願いします。

○田島参考人 私が知っている限り、例えばイギリスとか、あるいはカナダであるとか、創造物にかかわる規制は設けております。
 ただし、イギリスの場合については、ある程度、例えば写実性という要件があるとか、疑似写真、すなわちある種の写真のように見える程度の写実性が求められるとか、そういう限定をしているとか、そういう要件でやられていると。それからさらに……(葉梨委員「芸術的なものだけで聞いているんですよ。ないんですね」と呼ぶ)そうですね。ただ、アメリカの場合には、二〇〇二年に連邦最高裁の判決があって、単なる創造物の規制は合憲ではない、違憲である、そういう判断が出ていると私は認識しています。

○葉梨委員 具体的な国はないということですね。
 二〇〇二年の連邦最高裁の判決というのは、あれはいわゆる疑似ポルノについての判例ですから、ちょっとここで例を挙げられるのは違うんじゃないかなというふうに私は思います。
 一場参考人にお聞きをいたします。
 この二条の三号が非常にあいまいであるという御意見は承ったわけでございますけれども、それを民主党さんの方が、「殊更に他人が児童の性器等を触り、若しくは殊更に児童が他人の性器等を触る行為に係る児童の姿」「又は殊更に児童の性器等が露出され、若しくは強調されている児童の姿」という形に直されたのが、非常に明確になってよろしいということなんですけれども、基本的に児童ポルノの定義というのは、大体こんなものが出てきたら今よりは相当明確になるということで考えていらっしゃるのかどうか、御意見を承りたいと思います。短くて結構です。

○一場参考人 今よりも随分明確になると思います。今は、普通に考えていただいてわかりやすいと思うんですが、衣服の一部または全部をつけていない子供の姿というのはかなり広過ぎるので、そういう意味ではかなり限定される。
 それで、先ほど前田先生が性器だけというふうにおっしゃいましたけれども、「性器等」というふうに一応「等」がついております。

○葉梨委員 法律の専門家ですから、「性器等」というのは性器と肛門と乳首だけですから、等というので性器の周辺部分は含みません。
 それで、一義的に明確になるということでございましたので、具体的にこの画像は、(パネルを示す)先ほど民主党さんにずっと質疑をさせていただいたんですけれども、「強調」とか「露出」とか「殊更」とかいうのが物すごくあいまいな答弁です。参考人の方々、帰られてから議事録にぜひとも目を通していただきたいんですけれども、私自身は頭が悪くてさっぱりわからなかったというのが実情なんです。
 最終的に立法者の意思というのがありますけれども、この法律が成立をいたしまして、取り締まりに当たって、そしてこれが有罪かどうかを判定するのは裁判所ということになってまいりますから、法律家の考え方として、このような画像、つまり性器などは露出もされておりません、強調もされておりませんという画像は、民主党案では規制対象となりますか、なりませんか。一場先生。

○一場参考人 先ほどの定義ですね。児童ポルノに直接に該当するかどうかといえば、あの定義を前提にすれば、ならないと思います。

○葉梨委員 前田先生、これはやはり多分、法律家の目から見て、あの定義を前提としたら、ならないです。
 そうなりますと、先ほど盗撮の規制は有意味というふうに言われましたけれども、ほとんど無意味になるんではないかなというような感じを持ちますが、いかがでしょうか。

○前田参考人 私が先ほど申し述べたのは、そういう趣旨です。ですから、盗撮みたいなもので、先ほどアグネス・チャンさんがおっしゃったように、自分の裸が写されて、それが永遠に流れるというときに、性器が写っているかどうかということはそんなにバイタルなことではないんですね。
 ああいう写真画とか、トイレとか、それからあとSMですね、そういうもので性器が写っていないものが永遠に蓄積されて残っている、それでもいいという定義を私は問題だと申し上げたんです。

○葉梨委員 それでは、アグネス・チャン参考人に伺います。
 現在、これは衣服を脱いだ人の姿で、(パネルを示す)当然性的好奇心をそそるもの、性欲を刺激し興奮するものであります。ですから、これは明らかな児童ポルノだというふうに私は思います。このようなものが、法律家の目から見て、新たな民主党案では含まれなくなるということについて、御感想をお願いいたします。

○アグネス・チャン参考人 それは子供たちにとっては大変な問題になります。体は自分のものです。みんなに見られたり、それを楽しんだりするというのは、自分の意思に反した状況だったら全部人権侵害だと思います。だから、ぜひそれを規制してほしいです。
 持っていてもいけない、撮ってもいけない、配ってもいけない、もらってもいけない、買ってもいけないと、ぜひ法律で取り締まっていただきたいと思います。

○葉梨委員 それで、もう一つ。持ってもいけないということで、ちょっと午前中の質疑で、幾つか民主党さんからもお聞きをしたんです。
 今の民主党の改正案によれば、例えば、たくさんの児童ポルノを自分のうちで蓄積して持っている、そしてそれが、だれかれのポルノ写真、画像を持っていますよというふうに外で言っても構わない、そういう行為は規制はされませんよということらしいんです。それから、たくさんの児童ポルノを相続で受け取るという行為も、これも規制もされない。それから、自宅で児童ポルノの画像を持っておりまして、それでこれを友人と一緒に見る、自分の性的好奇心を満たす目的もあるわけですけれども、友人からお金をいただくというような行為も規制をされないということになるわけなんです。
 今もお話ございましたけれども、民主党の定義というのは、多分、法律家の目から見ても相当絞ったものになっているわけですけれども、少なくとも、あいまいだというような御意見は承ったんですが、今言われたような例について、今の現行の児童ポルノの定義のままでもやはりこれは私はいけないことなんじゃないかなというふうに思うんですけれども、一場参考人から御意見をお願いします。

○一場参考人 やはり法律をつくるときは、何が違法かどうかが普通の一般の方にわかるような明確なものでなければいけないと思います。そういう意味では、処罰をしたいという事情はわかりますが、明確でない定義はやはり改める必要があると思います。

○葉梨委員 法律的な話とはまた別にお聞きいたします。
 ユニセフの関係で、今いろいろな形で今の児童ポルノの日本における取り締まりの状況も見られていると思いますけれども、例えば、アグネスさん、そこで冤罪が起こったとか、そういった例を聞かれたことはありますか。あるいは、今の日本の児童ポルノで規制をしているという対象が物すごくあいまいだというような印象を現場の声として持たれたことはございますでしょうか。

○アグネス・チャン参考人 むしろ、外国のいろいろな会議に行ったときには、日本の法律が甘いというような話を聞きます。この前もユニセフのシンポジウムでFBIの代表の方が来たんですけれども、その方が言うには、アメリカにはいろいろな取り締まる道具があるんですが、今の段階では、日本はやはり法律が不十分なので協力することがなかなかできない、だから早期にやはり法整備をして、手を組んで、今この広まっている状況を取り締まりたいと言われているんですね。
 しかも、もちろん冤罪というのは防がなきゃいけないと思うんですけれども、でも、大勢の子供たちが犠牲になっているんです。その子供たちはどうするんですか。さっき言ったように、この単純所持をもし禁止しなければ、永遠に残るんですよ。さっき先生もおっしゃったように、例えば、裁判の中で繰り返し繰り返しそのことを聞かれてとか、みんなに知られて嫌だ、その人権を守りたいというんだったら、では、インターネットで毎日繰り返し繰り返し見られている子、その気持ちはどこで私たちが保護できるのか。
 だから、もちろんそういう意味では議論を重ねた上で、何とかその所持を禁止していただきたいです。

○葉梨委員 前田先生に伺います。二問です。
 こちらの画像、(パネルを示す)これは法律家の目から見て民主党案では該当するのかどうかということが一つ。
 それからもう一つは、児童の権利条約の選択議定書に書かれた定義について、一場先生から、こちらの方は明確だというふうなものがありましたけれども、あらゆる性的な部位というようなことになってまいりますと、これまた不明確だという議論が起こってまいります。ですから、現行の児童ポルノ禁止法とそれから児童の権利条約の選択議定書の定義と、私はどっちもどっちじゃないかなというような感じを持っているんですけれども、二点について、時間がないので簡潔によろしくお願いします。

○前田参考人 初めにつくったときも物すごく苦労して定義をして、完全に限定するのは無理なんですが、ですから、民主党案だとそれは外れる可能性が高いということですね。性器が写っていないし、性的なものの中で、SMが入るかどうかというのは分かれてしまう。そうすると、恣意的とおっしゃるけれども、さっき申し上げたように、捜査というのは非常に実は限定的にやりますから、結局、性器がこれだけ写っているのに、ちょっとかすっていてもだめという運用になっちゃう可能性が非常に高いと思います。
 選択議定書のものでいっても、だから差はないんだと思うんですけれども。質問の意味がちょっとよくわからないんです。

○葉梨委員 もう一度、質問の意味は、今の現行法の定義は極めてあいまいだという御意見がお二人の参考人から出たわけですけれども、では、あの定義を全部児童の権利条約の選択議定書の訳文に移しかえれば、あいまいじゃなくなるのかどうかということです。

○前田参考人 それは、そうではないんですね。あの範囲で可能な限り明確にして、何より問題は、さっき御意見があったんですが、現状を変えて問題があるところを直していくということなんですが、あの二条の三号でどれだけ広くてどれだけ問題が起こっているかということなんですね。
 現実に、それでも狭過ぎるから広げようという議論をしているときに、あれで広過ぎるから狭くしなきゃいけないと。ただ、現実にどういう侵害があってどんな問題が起こっているか、一度も出たことがないと私は思います。

○葉梨委員 最後の質問ですが、今の議論、本当に十五分しかございませんでしたけれども、定義の問題、単純所持の問題、ほかにも将来の研究の問題とか、いろいろ問題点、対立点があるわけですが、アグネス参考人には、与党案をベースにこれから児童ポルノの問題に対峙していった方がいいのか、民主党案をベースにこれから児童ポルノの問題に対処していったらいいのか、どちらがよろしいと考えられるか、お聞きしたいと思います。

○アグネス・チャン参考人 正直に言った方がいいんだったら、私は、単純所持を規制する与党案に賛成したいと思います。
 民主案の中でもいいことはあると思います。ただし、やはり単純所持はぜひ党派を超えて賛成していただきたい。これは、こんなにいっぱいいっぱい、子供がこの辺にいるんです。見えますか。その子供たちの声を聞き、ぜひお願いしたいと思います。

○葉梨委員 参考人の皆さんには、私も午前の議論の興奮が残っていまして、ちょっとアグレッシブになってしまいまして、まことに申しわけございませんでした。
 以上で質疑を終わらせていただきます。ありがとうございました。

衆議院・法務委員会(2009/06/26/午後)/小宮山洋子議員(民主党所属)

○山本委員長 次に、小宮山洋子君。

○小宮山(洋)委員 民主党の小宮山洋子でございます。四人の参考人の方には、いろいろ御意見ありがとうございます。
 私も、解説委員をしていたころから、スウェーデン会議の前後からこの問題とずっとかかわってまいりまして、きょう審議入りをしたことには、いろいろ私としての感慨もございます。
 先ほどの、午前中の審議の興奮が残っていたとおっしゃいましたけれども、けんか腰にやったら、これは党派を超えて成案は得られません。私は、国会の状況がいろいろあることは私自身も十分承知した上で、この問題は何としても子供たちのためにここで成案を得るべきだと思っているんです。
 そのために、民主党からも、いきなりここでチャンチャンバラバラやったのではなかなか成案になりにくいから、それこそ人権にかかわる、私がかかわってきたものでも、DV防止法とかその改正、あるいは児童虐待防止法の改正とか、これは、理事会のもとに法案をつくった人たちが作業チームをつくって、そこで成案を得る作業、努力をして、それを上げて委員会で採決をするという過程を、子供や女性の人権にかかわる形で、この十年、私がかかわっただけでも何度もやってきているんですよ。
 ですから、法務委員会で、多くの法案についていろいろな対立があることは十分承知した上で、きょうせっかく審議入りをしたんですから、相手のどこが悪い、ここが悪いと言い出したら、絶対これはできないんです。何とか、一〇〇%はできないから、それぞれのいいところを生かして、当面、皆様にとっても一〇〇%はきっといかない、でも、子供たちを今より少しはましな状態にするために、六〇%、最初は六十点かもしれない、それでも今のゼロから六〇になれば、それは大きなことなんですから、ぜひそういう努力をしていきたいというふうに私は思っています。
 それで、この問題につきましては、御承知のように、九六年のスウェーデン会議で、これは政府だけじゃなくてNGOとか、特にこの問題についてはユースと言われる若い人たちが主体になってかかわって、スウェーデンとそれから二〇〇一年の横浜と、ずっと積み重ねてきたわけですね。
 本当は、昨年十一月のブラジル・リオデジャネイロの会議の前に、今のこのネットの時代にあって児童ポルノの規制をということで、私たちも、非常に党内に、やはり別件逮捕ですとか冤罪とかいうことに対する危惧もある中で、やはり定義を明確化するというのは悪いことではない。狭くすることとはまたちょっと違うと思うんですね。明確化することによって何が犯罪になるのかということが明らかになれば、警察も取り締まりはかえってしやすくなるというようなこともありまして、定義を明確にしてきちんと、単純所持と訳したことが私はちょっといけないんじゃないかと。
 この間のリオデジャネイロ会議の宣言の中でも、意図的なというふうに日本語に訳す英文が使われているんです。私たちは、意図的に、反復をして、お金を出してというようなことで規定をしようとしている。ですから、そこを、別に狭くするのではなくて、明らかにしていくという作業を私たちはしてきているというふうに思うんですね。
 そうした中で、やはり、いろいろな懸念を超えて、子供の人権をより守れるためにはどうしたらいいか、そういうことをぜひ、きょうをきっかけに、時間は余りありませんけれども、しっかり取り組んでいけたらいいんじゃないかなというふうに思っています。
 それで、先ほど申し上げたような、理事会のもとにそうした協議をするチームを早急につくって、何とかそのいいところ、いいところを生かしながらやっていければいいと思うんですが、その際に、四人の参考人の方に、この点だけは必ず入れてほしい、ここは留意をしてほしいという点をそれぞれのお立場から伺えると、その作業をするのに参考になるかと思いますので、四人の方に順次伺っていきたいと思います。

○前田参考人 今の御指摘もごもっともで、やはりどこかの新聞の社説にありましたけれども、与野党のあれを乗り越えて、ともかく案ができるということが大事だというのはおっしゃるとおりですね。
 どうしても入れてほしいというのは、やはり、先ほど申し上げたんですが、今の、ここまで苦労してやってこられたものの積み上げでやっていただきたい。ということは、どこにどういう問題があるからどう直すかなんですね。そのときに、定義が不明確だという問題点の指摘はそんなにないんですね。それよりむしろ、やはり今でも狭過ぎると。現実にPTAなんかの方に伺えばわかりますが、現実に流れている画像とか周辺的なものも含めると、やはりもうちょっと考えていかなきゃいけない部分がある。そのときの出発点はやはり現実だということ。
 あと、やはり単純所持的なものを、さっき申し上げたように、ネット社会において有効な規制をしていく、ブロッキングや何かを考える上で、ぜひ、処罰という前に、違法であることの宣言は明確にやっていただきたいということを特に強調しておきたいと思います。

○一場参考人 やはり定義の問題はぜひ、あいまいなままであってはいけないと思います。
 それで、先ほども、性器に限定し過ぎると取り締まれないものも出てくるのではないかというお話がありましたけれども、その妥協案というか、私が、今ここで考えたんですが、選択議定書にあるような、「性的な目的のための児童の身体の性的な部位のあらゆる表現」とか、そういったような工夫をして、性器に限定しない形の、何かもう少し絞り込みがかかった要件を考えるということも一つはあろうかと思います。
 なぜ与党案に反対するか、現行の定義に反対するかというと、本当に、どんな子供の水着の写真でもみんな入ってしまうようなものを絞るものとして、「性欲を興奮させ又は刺激するもの」、こういう主観的な要件だけで限定するというのは、だれがそれを判断し、どういうふうに判断するか、非常に、捜査権の恣意的な濫用を招きかねないということで危惧されます。その点はきつく言いたいと思います。
 それから、先ほど申しましたように、関係機関の中に、ぜひ警察、検察、裁判所を入れていただきたい。刑事司法手続の中で子供を保護していただきたい、それを申し上げたいと思います。

○アグネス・チャン参考人 私は、やはり児童ポルノの単純所持を禁止していただきたいです。国はそれを認めない、持っていてもいけない、自分一人で楽しんでもいけないんだと。買ったり、手に入れたり、配ったり、売ったりしなくても、持っていて楽しんでもこれはいけないんだというようなことを明確に法律の上で示していただきたい。それが私の一番大きなこだわっているところです。

○田島参考人 先ほど言ったことで基本的には尽きるんですけれども、別な角度でいうと、やはり、本来の子供の人権の保護というものをきちんと念頭に置いていろいろな作業をするというのが私は大事かなと。そこからはみ出し過ぎてしまうと、子供の権利の保護というよりも、もうちょっと広い、社会における表現の自由をややはみ出した形でその規制をするとか、あるいは人々の価値観の領域にも触れてくるところに入ってしまうとか、やはりそこが私は大事かなというふうに思います。
 ですから、その意味では、現行法の、現在の基本的な枠組みが果たしてどこまでいいのか悪いのかということもしっかりした議論をした上で、それでさらに新たな方向なり規制が必要であるということであれば議論をする、それが大事かなというふうに思っています。

○小宮山(洋)委員 誤解がないように申し上げると、民主党の案というのも規制はしているんですよ。
 それは、単純所持というと、それこそ送りつけられて知らない間に入っているのもそうなるんじゃないかというようなことがあるので、自分で意図して、お金を出して、複数回という、その複数回ということにいろいろ疑問もあるかもしれないんですけれども、なかなかさかのぼってやるのは、私自身は、全部禁止したいと本人は思っていますけれども、党内でやはりいろいろな疑念があることも乗り越えないと成案にはならないんです。(発言する者あり)正直に言っていますよ。それで、一番このことに対して懸念を持っていた枝野さんにつくってもらったんです。ですから、ここまでなら必ずできるということなんですよ。
 ただ、今までにそういうようなことがなかったかというと、この児童ポルノに関してはまだ摘発例が非常に少ない。その少ないことの理由としては、今、一場参考人がおっしゃったように、性欲を刺激するかどうか、以前、最初つくるときは、わいせつかどうかという話もあったわけなので、これは個人個人の感覚によって違うからそんなことは警察が取り締まれないということになってしまうわけです。
 ですから、今回、定義を明確にしたということは、私は、これは子供たちのためにも非常に役立つことだと思っているし、少なくともこれから先、子供のそういうような映像を繰り返し繰り返し見たりして人権を侵していくということが防げるような形になるのであれば、そこはすべてベストを求めるのではなくて、そこのところをしっかりすり合わせてやっていけばいいのではないかと私は思っているんです。
 それで、アグネスも解説をされていたときに、各国の定義はいろいろ、ばらばらだというようなこともリオの会議で言われたとおっしゃっているわけですね。
 ですから、そういう意味で、国際的な基準にするということと、日本の中で多くの人が納得をしてやれることというのは、子供の権利のことと、先ほどからおっしゃっている報道の自由ですとか、それぞれの、一人一人の、別件で、冤罪が起きないようにとか、そういうことも配慮するのはやはり法律をつくる私たちの責任ですので、そこのバランス、どこでバランスをとるかで軸足の置き方がそれぞれ少しずつ違う。
 だけれども、これは党派を超えて、人権にかかわるものをつくるときには必ずぶつかってくる問題で、そこは、私は、お互いを非難し出したら切りがないので、何とかいいところで成案を得るようにというその努力をしていくということは、多分、きょうの参考人の皆様の総意でもあるのではないかというふうに思うんですね。
 ですから、定義の問題と、単純所持というか意図的な所持というか、その意図的な所持のところについては、民主党の方が罰則はかえって強くつけているんです。限定してはっきりしたもののところにはきちんと科罰も多くする、そこはしっかりとした考え方にのっとっていると思うんですね。
 そのことと、あと、先ほど、カリヨンでもいろいろやっていらっしゃいますけれども、一場参考人がおっしゃったような、被害を受けた子供のケア、そして子供が二次被害を受けないようにというところは、まだまだ日本の中で取り組みがおくれていると思いますので、先ほどは時間が足りなかったかと思いますから、そこのところをもう少しおっしゃっていただければと思います。

○一場参考人 刑事手続の中で、つまり、一番最後は裁判所なんですが、警察、検察の中で子供たちに対する配慮を、本当に今の段階では余り考慮されていない。それをこれからはぜひ具体的に、いろいろな制度が各国にあります、それも研究の上で具体的に取り入れられたら本当にすばらしいことだと。その中で、傷ついて死んでしまった子もいますから、そういった子供たちの二次被害は是が非でも回避したい。
 それから、最初の段階できちんと子供の話を聞くということは、今の司法面接はビデオで撮るんですが、ビデオで撮ってきちんと残すということは、その後の繰り返しの質問を減らすことにすごく効果があるんですね。そういうことを取り入れてほしいと思います。

○小宮山(洋)委員 もう時間が少なくなってまいりましたが、先ほど田島参考人が、現行法をそのままにするのではなくて、そこを精査することから成案を得るようにという御発言をいただいたんですが、それも、それぞれが案を持った上で合意を見ていくための一つの方法かと思いますので、最後にその点をもう少しお話しいただいて、私の質問を終わりたいと思います。

○田島参考人 私が一番そこの点で思うのは、やはり定義の部分ですね。特に三号ポルノの部分ですね。そこをやはりちょっと詰めて、民主党にしても自民党にしても、私はぜひ詰めてやっていただきたいと。それができないと何もしなくていいということじゃないと思うんですね。それをやった上で、ではどこまで、どういう形で、規制が必要な部分は規制をして、あるいは、規制をしてはいけない部分もまたもちろん同時にあるわけですけれども、私も、ある部分で、かなり限定、絞った上で、厳しい処罰が必要であるという箇所は当然あり得ると思うので、そういう形でぜひ進めていっていただけたらというふうに思います。

○小宮山(洋)委員 ありがとうございました。ちょっと、半分ぐらい私の思いも込めた質問になってしまいましたけれども。
 民主党もここまで法案をつくってきました。前回の改正のときには法案をつくるまで至らなかったんです。ですから、そういう意味では、お互いに足りない点が多々あると思っているので、あそこが足りない、ここが足りないといったら、これはやはりきょうの参考人の皆様の御意向にも、何より子供たちの意向に沿わないことになるので、最大限努力を法務委員会でしていただきたいと思いますし、法案提出者として私も努力をしていきたいというふうに思います。
 ありがとうございました。

衆議院・法務委員会(2009/06/26/午後)/富田茂之議員(公明党所属)

○山本委員長 次に、富田茂之君。

○富田委員 公明党の富田茂之でございます。
 参考人の先生方、本当にきょうは御意見ありがとうございました。また、各党の理事の皆さん、きょう審議入りをしていただきまして、法案提出者として本当に感謝申し上げます。
 小宮山先生から、御本人はやはり単純所持を罰したいという本音が出て、すばらしい、よかったというふうに私は思います。小宮山先生の方で、まだ児童ポルノの検挙数が少ないから、そういう誤判みたいなのが出ていないんだというようなお話がありましたけれども、実は、警察庁の調査では、二十年で、児童ポルノの事件は、送致件数六百七十六件、送致人員四百十二名、被害児童三百三十八名と、急増しているわけですね。
 そういった意味で、やはり児童ポルノを撲滅するという意味では、ここはもう与野党を超えてやっていく必要があると思いますので、きょう先生方の御意見を聞いて、何とかこの国会で成立をさせたいなというふうに思いました。
 任期はもう九月十日で切れてしまいますし、何となく解散かというような話もありますので、そうすると、国民の皆さんから見て、この法律はどうなってしまうんだというような思いがあると思うんですが、実は、二〇〇〇年に、児童虐待防止法、私がちょうど委員長をやっておりまして、提案しました。あのときももうすぐ解散だというふうになって、それで各党が歩み寄ったんですね。それぞれ各党の案が全く違っていまして、それでも法律はここでつくるべきじゃないかというような状況になって、きょう保坂先生がいらっしゃいますが、各党の理事が集まりまして、それぞれの案は、もう引くところは引くというような形で、とにかくまず一歩踏み出そうということで法案ができましたので、ぜひ、きょう参考人の先生方の御意見も参考にして、まず改正していく。特に私は単純所持を処罰するという方向で改正したいと思いますが、そういう方向に進んでいきたいというふうに思います。
 前田先生にまずお伺いしますが、先生が所持罪について、今でも児童ポルノの捜査というのはハードルが高いんだというふうに先ほどお話をしてくださいました。肝心のものが逃げてしまう可能性があるんだと。そこに民主党案のように有償とか反復とかいう形をつけてくると、ますますこれは捜査が困難、そういうところを証明していくのは難しいんじゃないか。例えば取得行為の立証で、いつ、どこで、幾らで入手したんだ、こういうことはなかなか立証できないというお話をいただきました。
 実は、法案審議の中で民主党の質疑者から尋ねられまして、私たちも、与党でも取得して所持というのを議論したんですけれども、やはり取得の立証というのはかなりハードルが高くなるだろう、今より逃げ手をふやしちゃうんじゃないかということで、やはり所持をきちんと目的犯という形にして処罰していく方が筋ではないかということで与党案を作成したんですが、そのあたりについて、先生の御意見をもう少し教えていただければと思います。

○前田参考人 もう今のお話に、ある意味で尽きているかと思うんですけれども、やはり現実に、今先生のおっしゃったように、ふえている。ただ、それで十分検挙をされているかというと、必ずしもそうでない面もある。その意味で、やはり今より狭めなきゃいけないような方向に改正するというのは、何のための改正なのかと。
 もちろん、今御指摘がいろいろありましたように、表現の自由の観点とかで、広過ぎる処罰とか恣意的な処罰による人権侵害が起こっているのであれば、そこを見直すというのはよくわかるんです。だけれども、そういう問題の指摘がない。逆に、児童ポルノの規制が緩やか過ぎて、こんなに広がってどうするんだという声が上がっている。その中で、所持罪に広げていくというときに、有償とか反復というようなものの要件は非常に難しいという面があると思いますね。
 もちろん、目的規定というのは主観面ですので、主観面の立証というのは、もう多くの法律はそれは必ず必要ですのでやっていますけれども、そこは難しいんですね。ただ、さっき小宮山先生の話にもありましたように、ベストではなくてベターを求めていく。その中で、判断としては、与党案の目的規定によって絞るというのも一つのやり方で、十分合理性があるというふうに考えているということを申し上げたつもりです。

○富田委員 ありがとうございました。
 一場参考人からいただいた資料を見ていましたら、先ほど先生は、「児童ポルノの所持についてよくある質問」、駐日米国大使館の資料を見せていただきましたが、その二ページのことをお話しされましたが、ちょっと一ページの方を見ていましたら、一番最初に、「単純所持の処罰化は日本の警察に過大な権力を与えはしませんか。」という質問が出ていました。ここの回答を見ていて、この回答のとおりだなというふうに思ったんですね。こういうふうに書いてある。
 「日本の現行法は、麻薬等の禁制品の単純所持は処罰の対象としています。ですから、児童ポルノの単純所持の処罰法が、警察に対してこれまで以上の権限を与えることにはなりません。」こういうふうに明確に言った上で、三段落目で、「単純所持の処罰法を悪用から防ぐための予防措置は既に取られています。米国の裁判所のように、日本の裁判所でも警察による捜査令状の取得を管理することにより、プライバシーの権利を効果的に保護することができます。」
 一番この文書ですごいなと思ったのは、「児童ポルノの製造のために、児童がレイプや虐待を毎日受けています。その一方で、仮定に基づく権力の悪用というのは推測に過ぎません。我々の児童の権利を守ること、これこそが我々の最優先課題となるべきです。」
 私は、今回の法律をどう改正していったらいいかというのは、まずこの観点に立つべきだと思うんですね。濫用のおそれ、悪用のおそれというのは何らかの形でおさめていく。そういうことがないように、冤罪があってはなりませんし、自白の強要があってならない、それは当たり前のことなので、この改正によってそこが広がるようなことがあってはなりませんから、そこを何か抑える方法を考えるべきじゃないのかなというふうに思うんです。
 この点について、一場先生と、あと田島参考人も、先ほど、そういう実効性ある担保措置が必要だと言われていましたので、そのあたりについてお二人の意見をいただければと思います。

○一場参考人 先ほどの米国大使館の資料ですが、確かにそう書いてありますね。ただ、その後ろで、米国の児童ポルノの定義はあいまいなものではありませんということが書いてある。単純に比較をしないでほしいんですね、各国の児童ポルノの定義はみんな違いますから。そういう形で見ると、この三号に関しては、本当にあらゆる子供の裸が入ってしまうので、それだけはやはり変えるべきだと私は相変わらず思います。
 そして、所持、先ほど、民主党の案で、有償で反復して取得することが立証は困難というふうにおっしゃいましたけれども、それはつまり、故意で持っている人、間違えてダウンロードしてしまったり、ふっと入って送られてきてしまったりして持っている人は処罰の範囲から外すために、故意の具体的な形としてそういうものを多分入れられたんだろうなというふうには私は理解しております。

○田島参考人 実効性の前にちょっと一言だけなんですけれども、もし今のような単純所持罪が入れられてしまうと、私がちょっと懸念しているのは、裸体なり裸のたぐいのものというのは、もうどこの家庭でも、出版社でも、それからさらにメディアでも、膨大な形で、過去のものについても特に限定はないですね。だから、そういうことも含めてやられてしまって、しかもそれで三号の規定がかかわるということになると、これはちょっと、もしそれをやるにしても、そこのところの配慮は私はぜひやっていただくというのが必要かなというのが一点。
 それから、実効性のことなんですけれども、やはり、この規定が意味がないということではないと思うんですね。配慮規定というのは全く意味がないとは思いませんけれども、ただ、やはり一番大事なことは、実際に問題が起こったときに、どういう手だてで、どういう形でクレームなりあるいは権利の救済なりの道を、裁判とは別に図っていくという努力をしていかないと、やはり本当の役割は難しいのかな。ほかの例なんかを見てもそういうふうに私は感じますので、もし運用上の配慮規定を入れるのであれば、それだけではなくて、そこの部分をぜひ議論していただいて、つけ加えていただけたらいいのかなというふうに思っております。

衆議院・法務委員会(2009/06/26/午後)/保坂展人議員(社民党所属)

○谷畑委員長代理 次に、保坂展人君。

○保坂委員 社民党の保坂展人です。ありがとうございます。
 まず、前田参考人に伺いたいんですが、いただいた資料の中に、この六月の初めでしょうか、法改正の次に来るもの、執行についてということで、エドワード・ショーというアメリカのFBIの駐日代表の方が報告をされて、シンポジウムがあったんだなということがわかりましたけれども、実はアメリカには、児童ポルノ関係で共謀罪もありますね。伝え聞くところによると、そのFBIの方などからは、やはりこの児童ポルノの捜査のためには共謀罪が必要だというような発言もあると聞いているんですが、そのあたりはどうなのか、教えていただけますか。

○前田参考人 今の御質問の趣旨、ちょっとわからなかったんですが、ショーさんと一緒に研究会をやったわけではないのであれですけれども、一般論としてお答えしますと、やはりアメリカの現場では、本当に児童ポルノに対して厳しい感覚を持っていて、徹底して調べる。その捜査官の人の話を伺ったことがあるんですが、そのためにはやはり共謀罪というのは有効なツールだと彼らが考えているということは容易に推測できるというふうに思っております。

○保坂委員 もう一点。私がたまたま手にした資料が余り新しくないので前田さんにお聞きしたいんですけれども、二〇〇四年の資料なんですけれども、これは、イタリアの児童保護団体のテレホノ・アルコバレーノという団体が、サイト上の一万七千十六件の児童ポルノサイトをいわば調べた。そして、一位はやはりアメリカであった、一万五百三件、二位は韓国で千三百五十三件、三位がロシアで千二百三十二件で、実は日本は、ブラジル、イタリア、スペイン、チェコの後の八位で、数はそう多くないですね、百六十五件。
 この間の報道で、日本は世界に非常に恥ずかしい児童ポルノの発信国だ、こういう言い方がありましたが、たまたま私が手にした資料なんですが、さらに新しい数字等でこういった傾向は大幅に変わったのかどうかということをお願いします。

○前田参考人 正確な、オフィシャルな統計資料みたいなものというのはないので、やはり任意団体的なものが集められたものなんだと思うんですね。
 ただ、私の印象も、日本のサイトの数とかが世界で物すごく多いということではないんですが、よくスウェーデンとかに指摘されるのは、画像の発信源ですね。それがいろいろ回り回って、ネットというのは世界じゅうに伝わっていくわけですけれども、児童ポルノ画像の撮影をして、それを流す源として日本が非常に多いという話はよく出てくる。
 ただ、現状で、インターネット関係で問題のあるサイトを探しているところで、やはり児童ポルノは相当問題があるという指摘はふえていますが、恐縮ですけれども、数字的なもので、今、日本の順位がどう変わってきているというようなことはちょっと持ち合わせていないので、申しわけないです。

○保坂委員 続いて、一場参考人に伺いたいんですが、先ほど来の議論で、アメリカの場合はかなり明確な規定がありますねということと、日本の場合のいわゆる三号ポルノの幅広さの問題なんですが、先ほどからの議論で、これは自民党の中にもいろいろな御意見があって、早川政務官のブログなど見ると、やはり宮沢りえの「サンタフェ」などがポルノということだけはこれは違うでしょうという議論があったということが書かれています。
 私もどちらかというとその立場で、ひどいポルノで、凌辱され、おとしめられ、そして人権侵害されている、アグネスさんが言われている、そういう被害児童を救出していかなければいけないのはもちろんですけれども、しかし、限界領域というよりは、どちらかというと違うのではないかというものも、捜査機関のある種の恣意性で、余りにも幅広い条文だと別の問題が起きる、こう考えているんですが、その点についてお願いします。

○一場参考人 まさにその点を先ほど来からずっと申し上げてきまして、恣意的な捜査の可能性を否定できない。そうした場合に、本当に大勢の人。この条文だけ読むと、何でいけないのというのがよくわからないんですよ。つけていないって、赤ちゃんはみんなつけていないでしょう、一体どうしてそれまで入っちゃうのということを一番私は言いたい。
 「サンタフェ」も入ってしまうかもしれないし、そういったものを持っているだけで、まだいいんですよ、サイトに提供する、製造する、そういったものはもう既に処罰化されています、持っているだけで処罰するかどうかを今議論している。持っているだけで処罰されたら、赤ちゃんの写真を写したお父さん、お母さんの写真が、みんな客観的には入ってしまう。それはやはり避けるべきだと私は思います。

○保坂委員 アグネス・チャンさんに伺いたいんですけれども、私の妹が大ファンで、デビュー直後から、陳美齢さんですね、いつも耳が痛くなるほどアグネスさんの歌を隣で歌っていたので、非常に感慨深いんです。
 私もチェンマイ、チェンライの、タイの取材に行きました、議員になる前ですけれども。そこで、ビルマから売られてきた子供たちがひどい目に遭って、救出されている施設にも行きました。子供にもインタビューしたり、非常に悲しい、そしてこんな子供たちが、大変だという今の思いはよくわかります。
 そして、今やっていた議論ですが、恐らくちょっとずれがあるんだろうと思うんです。ずれというのは、具体的に伺いたいのは、アグネスさんも芸能界にいらっしゃって、例えば、宮沢りえさんとは限らず、十代でデビューされた歌手の方とか女優の方とかがグラビアになったり、中にはセミヌードとか、そういうことで写真集を出されたりということを、目の前にいらっしゃったと思うんですね。
 私は宮沢りえさんの「サンタフェ」を改めて確認してみましたけれども、これは児童ポルノとして単純所持で規制するようなものではないと私は判断します。その点をごちゃごちゃにして、かなり広く、これは全部、すべからく規制するんだよということでは、かえって理解が難しいんじゃないか。いわゆるアグネスさんが言ったように、児童を本当にひどい形で凌辱し、そして一生の汚点となるような、それがサイト上にずっと残ってということはよくわかります。その点、どういうふうに考えますか。

○アグネス・チャン参考人 グラビアアイドルは芸能界の中にもいっぱいいらっしゃいます。でも、法律ができてからは、やはり十八歳未満の写真はできるだけみんなは避けています。やはり十八歳未満は、高校卒業するまでは健康的に子供時代を過ごしてもらうという。
 芸能界の中でも、例えば写真家からすごく私は非難されるんですけれども、そういう活動をすると私たちは子供の裸が撮れなくなっちゃったんだよと言われるんです。そうしたら私は大体、十八歳まで待ったらどうですかと。私はそう思います。そんなに十八歳未満の子供たちの裸を見る必要もなければ、水着の写真を見る必要もないと思う。十八歳になってもとてもきれいです。それは言い切れます。きれいな子はずっときれいです。その子をみんなに見せたいと。それが十八歳あるいは成人になってから見せればいいんです。決してまだ未熟な子供の裸を見るというのは、そんなに必要ないと私は思っているんです。でも、子供には子供のころは必要なんです。
 「サンタフェ」に関しては、実は私、新聞で、広告とかしか見たことがないんですね。だから判断がつかないんですけれども、でも、例えば、本当に法律が成立して、そして十八歳未満のそういうようなものは持ってはいけないんだよと、そうしたら、私は、個人の判断で、みんな処分するか残すのかと自分で考えていただいてもいいと思うんですね。
 決して大人は子供の裸を見なくては命を縮めるとかそういうことはないと思うんですね。もう少し待ってください、十八歳まで。ぜひお願いします。

○保坂委員 ということは、「サンタフェ」は見てはいないけれども、あるいは十八歳未満であれば、「サンタフェ」だけじゃないですけれども、児童ポルノ三号の要件に当たってしまうということだと思いますね。今、そういうふうに受けとめました。だから、そういったものは今後撮影されても発売されてもいけないという立場をお話しされたと思います。(アグネス・チャン参考人「今発売されていないんです、もうだめなんです、九九年から」と呼ぶ)いや、だから、発売されてはいけないという話なんでしょう。
 そこで、田島参考人に伺っていきますけれども、そもそもこの法律の保護法益そのものは、児童ポルノの被写体となって、非常にその人権を侵害されて、取り返しのつかない傷を負っている子供たちをきちっと救出していこうということであり、その点に我々も全く異議はないし、もっともっと進めるべきだ、足らない点があれば足すべきだと思っているんです。
 他方で、「サンタフェ」も含めて、過去出版された出版物を、あるわけですよね、百五十万部ぐらい売れたらしいですから。それは、本棚にあるかもしれない、古本屋にもあるでしょう。そして、過去の同様の写真集のみならず、雑誌のバックナンバーなんかも売っていますよ、古本屋で。そういうものも全部蔵出しして、一年以内に焼き捨てよと。あるいは、ごみで出したら、これまた提供罪に問われてもいけないしというようなことが、日本は過剰同調社会ですから、そこまで法律が求めていなくても、これはまずいぞというようなことで、どんどんどんどん本来の保護法益とは違う方向に走り出していき、これは最終的には内心の自由やあるいは表現の自由に重なってくる。現に戦前はエロ、グロ、ナンセンスの規制から始まっていったわけですから、思想の統制というのは。
 私は、児童ポルノがいいなんということは一つも思いません。しかし、それが拡張されていくことには危惧を感じる。その点についてどうでしょう。

○田島参考人 私が心配しているのはまさにそういうことであって、本当に大事なことは、きちんとそこに焦点を当てて、それで、それについては本当に厳格にそれをなくすように、あるいは厳しくそれを防止したり除去したりということを本気でやるということですね。だけれども、そうではない形になってしまうと、やはり本来の子供たちの保護とは違う文脈、あるいは違う形で過剰に規制や制約が及ぼされてしまったときに、我々の自由で民主的な社会というのは果たしてどうなってしまうのかということだと思うんですね。
 ですから、余りにも過剰な形の規制、広く網をかけ過ぎる規制をしてしまうと、本来大事にしなければいけない価値や権利というのが逆にうまく守れなくなってしまうし、逆に、規制や統制を本当にしたいというふうに考えている人たちは、むしろ非常に広い裁量の幅を持って、やれると思えばいつでもできるんだよというような形で我々の社会の上に君臨をしてしまうということになったら、やはりちょっと我々の社会のあり方としてどうなんだろうか、そういうふうに考えています。

○保坂委員 現に「サンタフェ」も、国会図書館では閲覧規制がもうかかっているんですね。ですから、きょうはこういった審査がありますから、見ないと議論できませんから見ましたけれども、しかし、閲覧規制がかかっているということは、それは一般の図書館ではもう見れないわけですよ。そういうところまでの議論を、私、十年前も、この立法当時いましたから、そこまで議論したかなという思いがあるんですね。
 ですから、古今東西、人間の表現あるいは芸術には、さまざまな、少女も少年も含めて、彫刻や絵に出てくるということはあります。それが、要するに芸術的な価値がどうなのかということを十分見て、私は、必要な規制はきちんとやるべきである、しかし、それによって表現の自由や内心の自由が萎縮するようなことはあってはならないという立場でお聞きをいたしました。
 どうもありがとうございました。

○谷畑委員長代理 これにて参考人に対する質疑は終了いたしました。

○富田委員 田島参考人が御懸念されている、過去のものにさかのぼって与党の改正案を適用させようとは思っていませんので、現に持っているものについても、猶予期間を設けて、できればちゃんと処理してほしいというようなそういう配慮規定もしております。
 アグネス・チャン参考人にお伺いしたいんです。
 先ほど、お話を聞いていて、被害者の気持ちというのは多分我々の想像を絶するんだろうなというふうに思いました。特に、被害者の声を紹介されて、私たち被害者にとって、児童ポルノはポルノなどではなく、犯罪や虐待の現場を永久に残した、心をずたずたにする残酷な凶器ですという声を紹介されて、凶器は残してはなりません、そういう認識をやはり立法者側も考えないと、児童ポルノというふうに単純に考える、その定義の件とかいろいろ一場先生からも御指摘ありましたけれども、被害者の皆さんが今児童ポルノと言われているものに対してどんな感情を持っているのか、消せないもの、先ほど消しゴムのお話もありましたけれども、そういった思いをやはりこの法改正の中で何としても生かしていかなきゃいけないと思うんですね。先ほど、葉梨先生の質問にも答えられて、単純所持だけはどうしてもというようなお話がありました。
 ユニセフの大使として、この前ちょっと新聞で見たんですが、ブルキナファソにも行かれて、本当に大変な中に行かれたのに、そこでも何か問題になっていたというような記述もありました。日本から見ると物すごくおくれているような国でも、そういう児童ポルノの件をきちんとしていこうというような動きの中で、やはり日本はちょっとおくれているんじゃないかというふうにも思うんですが、そのあたりについて何かお考えがありましたら。

○アグネス・チャン参考人 ありがとうございます。
 本当に被害者の子供たちは、さっき言ったとおり、今まで撮られたものは全部消してほしいんです。だれかが持っているというのを思うだけで、本当に毎日レイプされているというような気持ちになってしまうんですね。
 実は私は、だから、それを好む、集めている人たちのブログとかも、そして私のところにもEメールが来たりするんですけれども、そういう人たちは、今一生懸命集めているそうです。もし与党案が通ったら、もちろん処分しなきゃいけない、それは大変なことだ、三年後はきっと漫画にも来ちゃうんじゃないかとすごい危機感を持っているんですね。だけれども、もし民主党案が通れば、持っていていいんだ、今のうち集めましょうというような呼びかけが今インターネットで広まっています。その持った分はどうなるの、皆集まって楽しむの、またどこかで流れてしまうの。
 要するに、加害者側の心理も考えないと、私たちは何のために法律をつくっていくか、両方の考え方をやはり想像しなきゃいけないと思うんですね。
 多分きょうは、被害者のその気持ちを皆さんわかっていただいたと思うんですね。でも、加害者も、やはりある意味ではとても賢いですよね。それと同時に、違法したくないんです。犯罪者にはなりたくないんです。だから、もしかして、本当に法律が通ったら、コンビニと同じように処分してくれるかもしれない。日本の皆さん、たとえそういうのを好む方でも、犯罪者にはなりたくない人がほとんどだと思います。やはり、法律に従う、この国を大事にし、そういうふうに生きていきたい人が多いと思うんですよ。
 だから、私、子供たちの声を代表して、単純所持は何とかして、ぜひ皆さん、納得していただきたいと思います。

○富田委員 ありがとうございました。
 何としてもこの国会で成立させていきたいと思いますので、四人の参考人の先生、本当にありがとうございました。

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最終更新:2009年07月04日 22:38
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