報道記事 > 総選挙2009(選挙後情勢)

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選挙後報道

衆院選:公明は小選挙区全員落選 太田代表ら辞任の見通し(毎日新聞/2009/08/31)

http://mainichi.jp/select/seiji/09shuinsen/flash/news/20090831k0000m010263000c.html
 公明党は今回の衆院選で、太田昭宏代表や北側一雄幹事長ら小選挙区8人の候補者全員が落選する歴史的惨敗を喫した。31日午前、東京都内の党本部で幹部会を開いて今後の対応を協議するが、太田代表や北側幹事長は辞任する見通し。同党の支持母体・創価学会幹部は「小選挙区制が定着し、公明党の組織戦が通用しなくなった」と振り返った。
 太田氏は31日未明、党本部で疲れ切った表情で「責任を痛感している」と記者団に語った。代表辞任には「党再建に全力を尽くすことが大事だ。そのためにどうするかは、党執行部とよく相談したい」と述べるにとどめた。だが党幹部は「常識的に、代表も幹事長も辞任は避けられない」との認識を示した。
 自民党の勢力が後退した今年7月の東京都議選でも公明党は23議席を維持した。創価学会という強固な支持基盤による選挙戦は、中選挙区制の都議選では有効だったが、小選挙区では通用しなかった。公明党や創価学会では選挙戦略を見直し、候補者擁立を比例代表に絞り、小選挙区から撤退すべきだとの意見が強まっている。
 公明党は99年に自民党との連立を開始。国会で自民党を支える一方、同党との選挙協力で比例代表では票数を着実に伸ばしてきた。連立直後の00年衆院選で、公明党の比例票は776万票。その後、自民党議員が後援会名簿を公明党側に提供するなど協力関係は深まり、05年衆院選の公明比例票は898万票にまで積み上がった。
 政権入りしたことで政策面では定額給付金や児童手当の拡充、地域振興券など党独自の政策の一部を実現させた。だが創価学会内で反対論が強かった自衛隊のイラク派遣は容認せざるを得ないなど安全保障面では妥協を迫られ続け、立党時に掲げた「平和と福祉」路線に揺らぎもあった。
 10年に及んだ連立政権を通じ、公明党には「自民党の補完勢力」との批判がつきまとった。党幹部は31日未明、惨敗に終わった衆院選について「安倍政権以降、次々に首相を代えたり選挙を先送りした影響が大きく、自民党の巻き添えをくらった」とぼやいた。別の幹部は「やはり自民党と距離を取っておくことが大事だった。うちの支持者は政策実現よりも、筋を通すことの方を支持する」と語った。【高山祐、田所柳子】


【都市伝説を追う】アキバの麻生人気は都市伝説だったのか? 自民大敗で検証してみた(産経新聞/2009/09/06)

http://sankei.jp.msn.com/politics/election/090906/elc0909060402000-n1.htm
 民主党の圧勝に終わった総選挙。自民党は、昨年9月の総裁選で“選挙の顔”として選んだ麻生太郎首相をみこしに担いで戦ったが、約200議席を失い、野党に転落した。“麻生人気”を演出したのは、2年前の総裁選で自民党本部(東京・永田町)前に押しかけた“アキバ(秋葉原)系”の支持者たちだった。あれから2年。総選挙をめぐる話題として、アキバは大きな話題にはならなかった。麻生首相の支持者はどこへ行ったのか。アキバへ足を運んでみた。(磨井慎吾)

「オレ達の太郎」から1年
 8月30日、総選挙当日の東京・秋葉原。小雨が降る中、JR秋葉原駅を出て中央通りを北に進むと、麻生首相のイラストとともに「オレ達の太郎!」と大書した巨大な看板を外壁に掲げたビルが目につく。
 このビルの1階で今春から営業しているのが、みやげ物店「アキバのうさぎ神社」だ。店頭には、口に白いマスクを付けた麻生首相の人形があり、胸に「自民党が勝ちますように」と書かれた絵馬が付けられていた。
 入り口の特設ワゴンには、衆院過半数の241議席にひっかけた「決戦!!太郎241白黒決着まんじゅう」や「太郎ちゃんの男前揚げ」など、麻生首相にあやかった数々のお菓子が並ぶ。商品の間には自民党のマニフェストや、麻生首相から贈られた開店祝いの木札なども置かれていた。
 同店を経営しているのは、小泉純一郎元首相や安倍晋三元首相を題材にした「純ちゃんまんじゅう」「晋ちゃんまんじゅう」などの政治家まんじゅうシリーズで知られる東京都荒川区の菓子メーカー「大藤(だいとう)」。昨年秋の自民党総裁選の際には、同じ場所で「麻生太郎 勝手に応援ショップ」を期間限定営業していたこともある。
 ビル外壁の麻生首相応援看板はその当時からのもので、店のコンセプトが変わった現在でもそのまま掲げられている。
 大藤社員で「アキバのうさぎ神社」担当の小山内隆朗さん(29)によると、麻生首相関連商品の売れ行きは、メーンのまんじゅうで1日平均30~40箱。衆院選が公示されてから1週間ほどは、民主党の鳩山由紀夫代表をモチーフにした「鳩山民衆サブレー」も並べて売っており、こちらも同じぐらいの売れ行きだったものの、投開票日が迫った最後の週は「今までのお礼ということで」麻生首相関連のお菓子のみを店頭に出していたという。
 また、店頭の麻生人形が口にマスクをしていたのは「失言がらみの意図ではなく、単にインフルエンザ対策」とのこと。

「今回は民主党に投票した」
 夕方の2時間ほどの間、麻生首相関連のお菓子を購入した客は5人で、計10箱ほどが売れた。
 「今日で最後ということで」記念に麻生まんじゅうを買いに来た千葉県松戸市の会社員男性(36)は、麻生首相を「ローゼン閣下」と呼ぶ。
 羽田空港のVIPルームで、少女漫画的画風の青年漫画「ローゼンメイデン」を読んでいたという、真偽不明ながらも従来のこわもてイメージとのギャップゆえにオタク層に大いに受けたうわさに由来しており、親しみのこもったあだ名だ。
 「10月に(ローゼンメイデンのアニメ版主題歌を歌った)ALIPROJECTのライブがあるので、ローゼン閣下もぜひ見に来てほしい。ボーカルの宝野アリカさんも、お越しいただきたいと言ってましたよ」と、麻生首相に対する好感度は高いが、「今回は民主党に投票した」とも。
 麻生首相の評価に関しては「自民党として総裁に担ぎ上げたのだから、まわりがちゃんと支えてあげるべきだった」と同情的ながらも「本人の資質もあり、やりたいことを貫き通せず軸がブレていった。周りに振り回されていた感がある」と冷静に見ており、首相個人への好感が必ずしも実際の投票に結びついたわけではないようだ。

“あざとさ”指摘の声も
 「お台場のガンダムを見に来た帰り」という愛媛県松山市の医師の男性(28)は、東京みやげとして“萌え絵”が描かれた他のお菓子と一緒に麻生まんじゅうを購入。麻生人気については「受けるような言動をしていたんじゃないの」と、その“あざとさ”を指摘する。
 ただ、民主党についてもさまざまな不祥事ゆえに「期待できない」として「強いてどちらかというなら、自民党の方がまだまし」という消極的な自民党支持者だ。麻生支持かどうか尋ねると、「面白いおっちゃんだとは思うけど…」と明言を避けた。麻生まんじゅうを買ったのも、単なる話の種、みやげ物の域を出ないようだ。
 「麻生人気はチャチ過ぎた。若者にちょっと受けたのを履き違えて、先走りし過ぎた」と手厳しく指摘するのは埼玉県草加市のフリーター男性(30)。「ネットなどで見る限り、けっこういい人そうだし、成果もある」と麻生首相をある程度評価するが、小泉元首相に連なる「麻生降ろし」派が足を引っ張っているとして自民党自体には批判的だ。
 「自民党は国民新党や平沼グループと連立して、真の保守を目指すべきだった」と購入したばかりの麻生まんじゅうを手に話した。麻生首相個人については「構造改革の尻ぬぐいをさせられているかわいそうな人」と評し、積極的に支持はしないものの、同情的な意見だった。

「草野球のアイドル」
 秋葉原のタウン情報誌「あきば通」代表を務め、秋葉原に精通した政治家として知られる小林孝也・千代田区議(54)は「秋葉原では麻生さんの人気は確かにありますよ。最盛期は昨年の総裁選から、衆院選の公示直前ぐらいまでかな。でも今でも人気は残っているし、来てくれれば盛り上がると思いますよ」と話す。
 人気の理由については「アキバは“キャラ立ち”してないと駄目な街で、たとえば鳩山さんはアキバキャラではないが、麻生さんはアキバ向きにキャラが立っている」と分析。「マニアの街ですから、地下アイドル(マイナーアイドル)的なものが受ける。ただあくまで多数派ではなく、少数派なんですね。最も盛り上がった時期でも、国民的人気とはいえなかった」。
 「失礼な言い方かもしれませんが、“草野球のアイドル”だったと思うんですね。全国大会やワールドシリーズには出られない。それを『選挙の顔』にするのは、担ぐ方が悪い」
 結局、今回の総選挙で麻生首相が秋葉原に来ることはなかった。小林区議は「全体の情勢がそれどころじゃなかったし、例の『アニメの殿堂』も非常に評判が悪かった。戦術的に避けた面もあるのだろう」と理解を示すが、「政治の世界と違って、負けてもアキバの対応は変わらないですよ」と、麻生首相の秋葉原再訪を望んでいる。

各社の社説

社説:民主圧勝 政権交代―民意の雪崩受け止めよ(朝日新聞)

http://www.asahi.com/paper/editorial20090831.html
 小選挙区制のすさまじいまでの破壊力である。民意の劇的なうねりのなかで、日本の政治に政権交代という新しいページが開かれた。
 それにしても衝撃的な結果だ。小選挙区で自民党の閣僚ら有力者が次々と敗北。麻生首相は総裁辞任の意向を示した。公明党は代表と幹事長が落選した。代わりに続々と勝ち名乗りを上げたのは、政治の舞台ではほとんど無名の民主党の若手や女性候補たちだ。

 ■100日で足場固めを
 うねりの原因ははっきりしている。少子高齢化が象徴する日本社会の構造変化、グローバル化の中での地域経済の疲弊。そうした激しい変化に対応できなかった自民党への不信だ。そして、世界同時不況の中で、社会全体に漂う閉塞(へいそく)感と将来への不安である。
 民意は民主党へ雪崩をうった。その激しさは「このままではだめだ」「とにかく政治を変えてみよう」という人々の思いがいかに深いかを物語る。
 では、それが民主党政権への信頼となっているかと言えば、答えはノーだろう。朝日新聞の世論調査で、民主党の政策への評価は驚くほど低い。期待半分、不安半分というのが正直なところではあるまいか。
 長く野党にあった政党が、いきなり政権の座につく。民主党は政治の意思決定の方法や官僚との関係を大改革するという。だが、すべてを一気に変えるのは難しいし、成果をあせって猛進するのはつまずきのもとだ。
 そこで民主党に提案したい。
 最初の正念場は、来年度予算編成を終える12月末までだ。9月半ばの政権発足からほぼ100日間。これを政権の足場を固めるための時間と位置づけ、優先順位を明確にして全力で取り組むことだ。
 やるべきことは三つある。
 第一は、政治と行政を透明化することである。与党になれば、官僚が握る政府の情報が容易に入手できるようになる。それを洗いざらい総点検し、国民に情報を公開してもらいたい。

 ■賢く豹変する勇気も
 天下り、随意契約、官製談合、薬害、そして歴代の自民党政権がひた隠しにしてきた核兵器持ち込みに絡む日米密約……。かつて「消えた年金」を暴いたように、隠されてきたさまざまな闇を徹底的に検証してもらいたい。
 第二に、政策を具体化するにあたって、間違った点や足りない点が見つかったら豹変(ひょうへん)の勇気をもつことだ。
 マニフェストを誠実に実行するのは大事なことだ。だが民主党が重く受け止めるべきは、その財源について、本紙の世論調査で83%もの人が「不安を感じる」と答えていることだ。高速道路の無料化など、柔軟に見直すべき政策はある。むろん、政策を変えるならその理由を国民にきちんと説明することが絶対条件だ。
 急ぐべきは一般会計と特別会計の内容を精査し、ムダな事業や優先度の低い政策を洗い出して、国民に示すことである。その作業なしに説得力のある予算編成は難しい。
 鳩山新首相は、9月下旬には国連総会やG20の金融サミットに出席する。これまでの外交政策の何を継続し、何を変えるのか。基本的な方針を速やかに明らかにし、国民と国際社会を安心させる必要がある。
 第三に、国家戦略局、行政刷新会議をはじめとする政権の新しい意思決定システムを、人事態勢を含め着実に機能させることだ。
 自民党政権の特徴だった政府と党の二元体制に代えて、政策決定を首相官邸主導に一元化する。官僚が政策を積み上げ、政治が追認するというやり方を改め、政治が優先順位を決める。まず来年度の予算編成にそれがどう生かされるかを国民は注視している。

 ■「二重権力」を排せ
 民主党のあまりの圧勝ぶりには、新たな不安を覚える有権者も少なくなかろう。巨大与党に対してチェック機能をだれが果たせるのか。他方、選挙対策を一手に担った小沢一郎前代表の影響力が強まることで、民主党内にあつれきが生じないかも気がかりだ。
 93年の政権交代で生まれた細川内閣が、与党を仕切る小沢氏との「二重権力」のなかで短命に終わった歴史を思い出す。それを繰り返してはならない。国民の危惧(きぐ)をぬぐうには、鳩山首相のリーダーシップをはっきりと確立すべきだ。
 そのためにも、鳩山氏は来年度予算案に政権担当者としての明確な意思と4年間の行程表を練り込むことだ。
 今回の総選挙を、政権交代の可能性が常に開かれた「2009年体制」への第一歩にできるかどうか。それは、2大政党のこれからにかかっている。
 自民党の党勢立て直しは容易ではあるまい。それでも、民主党がしくじれば交代できる「政権準備党」の態勢を早く整えることだ。そのためには今回の敗因を正面から見据え、「新しい自民党」へ脱皮する作業が欠かせない。
 「とにかく政権交代」の掛け声で巨大政党に膨れあがった民主党は、交代を果たした後の自画像をどう描くかが今日から問われる。広がった支持基盤とどういう距離感をもつのか、外交・安全保障での理念やスタンスは……。「民主党とは何か」をもっと明確に出していかねばならない。
 新しくめくられた政治のページを埋めていく作業はこれからだ。

社説:民主党政権実現 変化への期待と重責に応えよ(読売新聞)

http://www.yomiuri.co.jp/editorial/news/20090831-OYT1T00195.htm
 自民党政治に対する不満と、民主党政権誕生による「変化」への期待が歴史的な政権交代をもたらした。
 30日投開票の衆院選で民主党が大勝し、自民党は結党以来の惨敗を喫した。
 野党が衆院選で単独過半数を獲得し、政権交代を果たしたのは戦後初めてのことである。
 近く召集される予定の特別国会で、首相に指名される民主党の鳩山代表が、国家経営の重責を担うことになる。

 ◆自民党への失望と飽き◆
 このような民意の大変動の要因は、自民党にある。
 小泉内閣の市場原理主義的な政策は、「格差社会」を助長し、医療・介護現場の荒廃や地方の疲弊を招いた。
 小泉後継の安倍、福田両首相は相次いで政権を投げ出した。
 麻生首相は、小泉路線の修正も中途半端なまま、首相としての資質を問われる言動を続けて、失点を重ねた。
 この間、自民党は、参院選敗北によって参院第1党の座を失い、従来の支持・業界団体も、自民離れを加速させた。
 構造改革路線の行き過ぎ、指導者の責任放棄と力量不足、支持団体の離反、長期政権への失望と飽きが、自民党の歴史的敗北につながったと言えよう。
 民主党は、こうした自民党の行き詰まりを批判し、子ども手当や高速道路無料化など家計支援策、多様な候補者を立てる選挙戦術で有権者の不満を吸い上げた。
 小泉政権下の前回衆院選では、「郵政民営化」と刺客騒動で、自民党に強い追い風が吹いた。
 今回、風向きは一転、「政権交代」を唱えた民主党側に変わり、圧勝への勢いを与えた。この結果、自民党だけでなく、連立与党の公明党も大きな打撃を受けた。
 民主党政権に「不安」は感じつつも、一度は政権交代を、との有権者の意識が、それだけ根強かったと見るべきだろう。
 しかし、300議席を超す勝利は、必ずしも、民主党への白紙委任を意味するものではない。

 ◆政権公約の見直しを◆
 鳩山新内閣は、政権公約(マニフェスト)で示した工程表に従って、政策を進めることになる。だが、“選挙用”政権公約にこだわるあまり、国民生活を不安定にさせてはならない。
 最大の課題は、大不況から立ち直りかけている日本経済を着実な回復軌道に乗せることだ。雇用情勢の悪化を考えれば、切れ目のない景気対策が欠かせない。
 来年度予算編成でも、景気浮揚に最大限の配慮が必要だ。
 外交・安全保障では、政権交代によって、国際公約を反故(ほご)にすることは許されない。外交の継続性に留意し、日米同盟を堅持しなければならない。
 民主党は、参院では単独過半数を持たないことから、社民、国民新両党と連立政権協議に入る。
 懸念されるのは、自衛隊の国際平和協力活動など、外交・安保の基本にかかわる政策をめぐって、民主、社民両党間に大きな隔たりがあることだ。
 少数党が多数党を振り回すキャスチングボート政治は、弊害が大きい。民主党は、基本政策で合意できなければ、連立を白紙に戻すこともあり得るとの強い決意で、協議に臨むべきだろう。
 民主党は、「官僚政治からの脱却」も目標に掲げている。だが、首相直属の「国家戦略局」を設けたり、多数の国会議員を各府省に配置しさえすれば、官僚を動かせるというものではない。
 官僚と敵対するのではなく、使いこなす力量が問われる。官僚の信頼を得て初めて、政策の遂行が可能になることを知るべきだ。
 自民党は1955年、左右の社会党の統一に対抗する保守合同によって誕生した。
 当時のイデオロギー対決はすでになく、かつての社会党も存在しない。今回の自民党の壊滅的な敗北は、自社主軸の「55年体制」の完全な終幕を告げるものだ。

 ◆自民党は立ち直れるか◆
 自民党は、これから野党時代が長くなることを覚悟しなければなるまい。民主党とともに2大政党制の一角を占め続けるには、解党的出直しが必要だ。
 93年、自民党は金権腐敗から一時期政権を退いた。その後、社会党や公明党などとの連立で政権を維持してきた。
 しかし、自己改革を怠り、結局、有権者の手によって、再出発を余儀なくされた。
 今後は、麻生首相に代わる新総裁の下、来年夏の参院選に向け、党の組織や政策、選挙体制など、すべての面にわたり徹底的な改革が迫られる。
 説得力のある政策を示し、民主党政権に対する批判勢力として、闘争力を高めねばならない。
(2009年8月31日05時28分 読売新聞)

社説:衆院選民主圧勝 国民が日本を変えた(毎日新聞)

http://mainichi.jp/select/opinion/editorial/news/20090831k0000m070273000c.html
 まさに、怒濤(どとう)だ。自民党の派閥重鎮やベテランが、無名だった新人候補にバタバタと倒されていった。国民は断固として変化を選んだ。歴史に刻まれるべき政権の交代である。
 衆院選は民主党が300議席を超す圧勝を収め、同党を中心とする政権の樹立が決まった。自民党は初めて衆院の第1党から転落するだけでなく議席が3分の1近くに激減する壊滅的大敗を喫し、自公政権は瓦解した。
 選挙を通じ政権を担う第1党が交代する民主主義の常道が、日本の政治では長く行われずにいた。政権選択が2大勢力で正面から問われての政権交代は、戦後初めてである。

 ◇歴史的な体制の転換
 民主党に不安を抱きながらも政治を刷新しなければ閉塞(へいそく)状況は打破できない、との国民の切迫感が、すさまじい地殻変動を生んだ。鳩山由紀夫代表を首相として発足する新政権の前途は多難だ。だが数をおごらず、政治を一新する維新の気概と覚悟で変化を国民に示さねばならない。
 「風」などという段階をはるかに超え、革命的とすら言える自公政権への決別だ。約7割という投票率が国民の関心と、政治のあり方を変える強い意志を物語る。その象徴が、金城湯池とされた自民常勝区の崩壊だ。変化を求める民意は、世代交代による人材の入れ替えに発展した。
 政権交代と言えば、93年衆院選で成立した細川内閣も確かに非自民政権だ。だが、第1党はあくまで自民党で、争点は政治改革だった。保守合同による自民党誕生で成立した「55年体制」は同党が唯一、政権担当能力を持つ意味では続いていた。
 政権選択を目指し小選挙区が導入されて5回目の衆院選で、その体制についに終止符が打たれた。投票による政権交代という民主主義本来の機能回復を、私たちは政治の進歩として率直に評価したい。
 それにしても、いかになだれ現象が小選挙区で起きやすいとはいえ、政治、社会の構造変化を抜きにこの激変は説明できまい。
 自民党支配の源泉は業界・団体への利益配分、官僚による行政運営という強固な統治構造にあった。経済成長が行き詰まり、財政赤字などのひずみが深刻化する中で登場したのが小泉改革路線だ。郵政民営化など「小さな政府」を掲げ05年衆院選に圧勝、党は再生したかに見えた。
 しかし、医療、年金、格差や地方の疲弊を通じ国民の生活不安が急速に強まり、党は路線見直しをめぐり迷走した。参院選惨敗に伴う「ねじれ国会」のなか、現職首相が2度も政権を投げ出し、政権担当能力の欠如を露呈した。小泉政治を総括できぬまま解散を引き延ばす麻生政権に、国民の不満は頂点に達した。
 しかも、小泉路線の下、業界、農村、地方議員など党を支えた集票マシンは急速に衰え、離反した。2世、3世が幅を利かせ人材も不足した。麻生太郎首相が難局にあたるリーダーの資質を備えていたとは言い難い。制度疲労をきたし、自民党はまさに「壊れて」いたのだ。
 一方、政権交代をスローガンとする民主党は「生活重視」「脱官僚」をマニフェストに掲げ、自民党が業界重視、官僚主導から脱せぬ中、争点の提示に成功した。衆院解散から約40日の論戦の結果、有権者が民主党を選択した意味は重い。
 だが、多数の議席を得た船出は、逆の意味で危うさをはらむ。期待がふくらむほど、裏切られた時の失望も大きい。数を頼みとする政権運営を戒めるべきことは当然だ。来年夏に参院選が控える。政治の変化の証明を待ったなしに迫られよう。

 ◇自民は解党的出直しを
 政治主導が可能な体制の速やかな構築が必要だ。縦割り省庁が行政を主導し続けた「官僚内閣制」を脱却しないと、官僚操縦に失敗した細川内閣の二の舞いを演じかねない。
 あいまいな外交・安保政策も他党との連立協議の過程で明らかにすべきだ。国民は財源対策の説明のほころびなど、リスク承知で1票を投じた。政権担当能力を十分に信用しての圧勝と過信してはならない。
 野党となる自民党の役割も重い。そもそも東西冷戦終結やバブル経済が崩壊した時点で存在意義が問い直される中、政権に安住し続けたことが転落を招いた。真剣な総括なくしては、党存続もおぼつかない。
 今選挙を民主、自民両党による2大政党政治の実現とみるのは早計だ。だが、選挙の審判で政権の枠組みを決するというルールは定着させねばならない。
 経済危機、財政、年金、医療の立て直しなど喫緊の課題は多い。新政権は、国民との約束である公約を実行してみせるしかない。
 そして、かじ取りを委ねた有権者にも責任がある。日本政治は、これまで以上に国民が当事者として参加、監視する新時代を迎えたのだ。

社説:【主張】民主党政権 現実路線で国益を守れ 保守再生が自民生き残り策(産経新聞)

http://sankei.jp.msn.com/politics/situation/090831/stt0908310524001-n1.htm
 第45回総選挙が投開票され、民主党は選挙区、比例代表ともに自民党を圧倒した。
 野党が単独で過半数を占め、政権を樹立するのは戦後初めてだ。自民党主導政治を終焉(しゅうえん)させるという歴史的な転換点になった。13年前の総選挙から導入された小選挙区制による政権交代を可能にする二大政党制が、ようやく機能した意味は大きい。民主党が自民党批判の受け皿になったのである。
 問題は、政権交代が目的化し、この国をどうするのかという選択肢がほとんど吟味されぬまま、結論が導かれたことだ。
 民主党主導の新たな政権により、これまでの内政・外交の基軸は大きく変わらざるを得ないだろう。自民党が曲がりなりにも担ってきた戦後秩序も変化を余儀なくされる。場合によっては、日本を混乱と混迷の世界に投げ込むことにもなりかねない。政権交代が日本を危うくすることもあるのだ。そうなることは民主党にとっても本意ではないだろう。
 国の統治を担う以上、民主党には国益や国民の利益を守る現実路線に踏み込んでほしい。マニフェスト(政権公約)で掲げた政策の修正を伴うケースも出てこようが、1億2千万の日本人の繁栄と安全を守り抜くことをなによりも優先させるべきだ。

 ≪危ういポピュリズム≫
 今回の選択で留意すべきは、民主党の政策が高く評価されたというより、自民党にお灸(きゅう)を据えることに重点が置かれたことだ。たとえば、民主党が掲げた「高速道路の原則無料化」に対し、産経新聞社とFNN(フジニュースネットワーク)の合同世論調査では、反対が65%と賛成(30%)の倍以上となった。
 政権を担う民主党の力量に不安があることも事実だ。本来、政権交代のたびに基本政策が大きく変わることは好ましくない。とくに外交・安全保障政策の基軸が揺れ動いては対外的信用を失う。
 民主党はこれまで、インド洋での海上自衛隊による補給支援を一時的に撤退させ、在日米軍駐留経費の日本側負担に関する特別協定に反対してきた。小沢一郎前代表の政局至上主義のためだが、「党利党略は水際まで」の原則を否定したのでは信頼は高まらない。
 その意味で、維持されるべき日本政治の方向性とは、日米同盟を基軸とした外交・安保政策の継続であり、構造改革の推進により経済や社会に活力を取り戻すことにほかならない。民主党が現実的な判断に立ち、これらを継承することができないなら、何のための政権交代かということになる。
 また、国民の政治に対する判断はどうだったのだろう。4年前の総選挙では、小泉純一郎首相が掲げた郵政民営化を圧倒的に支持した。それが今回は、民主党の主張する「政権交代」というキャッチフレーズに熱狂的に共鳴したといえる。
 2年前の参院選でも民主党は勝利したが、振り子の激しさは政治を不安定にしかねない。とりわけ、単一イシュー(争点)に白黒をつけることが最大の選択肢となることは、単純明快かもしれないが、ポピュリズム傾倒の危うさがあると認識すべきだろう。
 一方で、多くの国民が民主党に閉塞(へいそく)感を払拭(ふっしょく)することを期待したのも間違いない。民主党が公約に掲げた首相直属の国家戦略局は、予算作りだけでなく、国家ビジョンを検討するという。

 ≪敗北を徹底検証せよ≫
 これまで、こうした外交・安保政策の司令塔はなかった。官僚主導から政治主導への成果を出すことができなければ、国民の失望感は大きくなるだろう。
 自民党は歴史的な惨敗になった。党幹部や閣僚らは相次いで選挙区で落選・敗退した。解党的出直しへの答えを見いだせないまま選挙に臨み、政権から退場を求められたといえる。自民党政治への不信や行き詰まり感が広がったことに加え、保守政党としての存在意義を十分発揮できなかった点も見過ごせない。
 新憲法草案の策定など、民主党に比べれば保守色をみせていたが、集団的自衛権行使の政治決断には至らず、国の守りに関しても不十分さが残った。
 公明党との連立下でもイラク自衛隊派遣などの業績は挙げたが、連立の常態化が何をもたらしたかを考えるべきだった。敗北を徹底的に検証してもらいたい。保守政党として民主党への対抗軸を早急に構築し、再生を果たして国民の期待に応える責務がある。
2009.8.31 05:23

社説:変化求め民意は鳩山民主政権に賭けた(日経新聞)

http://www.nikkei.co.jp/news/shasetsu/20090830AS1K3000530082009.html
 政権交代の是非が最大の焦点となった第45回衆院選は、民主党が圧勝した。来月中旬にも召集される次期特別国会で鳩山由紀夫民主党代表が新首相に選ばれる。有権者は「変化」に賭け、民主を中心とする新政権に国政のかじ取りをゆだねた。
 1955年の結党以来、ほぼ一貫して政権の座にあった自民党は、衆院でも第2党に転落し、下野する。2005年の前回衆院選と立場が逆転する歴史的な惨敗を喫し、議席数は過去最低となった。麻生太郎首相は党総裁を辞任する意向を表明した。自民と連立を組んできた公明党も大幅に議席を減らした。

初の本格的な政権交代
 93年に細川非自民連立政権が誕生した時とは異なり、今回の衆院選は第1党と第2党が入れ替わる形の本格的な政権交代である。現行憲法下で選挙による本格的な政権交代は初めてのことだ。
 選挙戦は野党の民主が終始、優勢を保つ異例の展開になった。事前の情勢調査で「民主圧勝」の予測が出ていたとはいえ、結果は衝撃的である。小選挙区、比例代表のいずれも民主が自民を圧倒した。小選挙区では民主の新人や元職が自民の大物を破り、続々と勝ち名乗りを上げた。有権者の関心は高く、投票率は前回(67.51%)を上回る見通しだ。
 自民は4年前の郵政選挙で圧勝したが、党則を理由に小泉純一郎首相が1年で退任し、後を継いだ安倍晋三、福田康夫両首相はともに1年で政権を投げ出した。07年の参院選で大敗し、参院第1党の座を民主に明け渡した。その後は衆参ねじれ国会の運営に苦しめられた。
 昨年9月の総裁選で「選挙の顔」として選ばれた麻生首相は、リーマン・ショックを契機とする経済・金融危機への対応を最優先し、景気対策に取り組んできた。だが自らの失言や政策決定の迷走で内閣支持率は低迷し、党勢回復のきっかけをつかめぬまま、衆院議員の任期満了直前に解散に追い込まれた。
 半世紀余り続いた自民党政治への飽きとともに、前回の衆院選以降に顕著となった自民の統治能力の劣化が有権者の離反を招いたといえる。年金の記録漏れ問題などの行政の不祥事が相次いで表面化した。前回選挙では小泉首相の郵政民営化への執念が有権者の共感を呼んだが、小泉氏の退任後は、なし崩し的に構造改革路線の転換が進んだ。
 民主は現状に不満を持つ層を広く吸収して、政権交代への期待を高めるのに成功した。マニフェスト(政権公約)では「官僚丸投げの政治」からの転換を掲げ、政治主導を前面に打ち出した。行政刷新会議を新設して予算の無駄を徹底的に排除するなどの、既得権益に切り込もうとする姿勢が支持されたとみられる。
 民主は政府と与党の二元的な政策決定の仕組みを改め、内閣の下に一元化する方針を打ち出している。政権の司令塔となる国家戦略局をはじめ法改正が必要な構想も多く、軌道に乗せるための現実的な工程表が要る。統治機構の改革への有権者の期待にこたえるには、鳩山氏が強い指導力を発揮して政権の課題を明確にし、閣僚や副大臣に能力のある政治家を配することが不可欠だ。
 新政権は発足後直ちに来年度予算編成に取り組まねばならず、政権公約を実現する力が試される。政権公約には月額2万6000円の子ども手当などの目玉政策を列挙したが、財源の裏づけははっきりしないままだ。鳩山氏は民主の政策に欠けている日本経済の成長戦略や財政再建目標などの中・長期ビジョンについても、所信表明演説などできちんと説明する責任を負っている。
 民主は社民、国民新両党との連立政権を目指す方針だ。外交・安全保障政策では社民と大きな溝がある。連立を優先するあまり、政策面で安易な妥協をせぬよう求めたい。

自民は解党的出直しを
 来月下旬には国連総会などの重要な外交日程が目白押しだ。それまでに新内閣を発足させなければならず、政権移行の時間は極めて限られている。鳩山氏は記者会見で、首相指名後に閣僚人事を決める考えを示したが、官房長官などの主要閣僚は速やかに内定し、準備を急ぐ必要がある。自民も政権交代が円滑に進むよう協力しなければならない。
 かつてない敗北となった自民の今後はいばらの道だろう。党の有力者の落選が相次ぎ、人材難は深刻である。政党助成金が大幅に減るのは避けられず、党財政にも甚大な影響が及ぶのは必至だ。
 この機会に党組織や候補者選考方法などを抜本的に見直し、新たな党の姿を探るしかない。麻生氏の後継を選ぶ総裁選で党の再建策を徹底的に議論し、有権者の信頼を取り戻すよう努めるべきだ。政権交代可能な二大政党制を定着させるために、自民は文字通りの「解党的出直し」に取り組む覚悟が求められている。
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