【ヒドラ】(第81話)
爆発して消え去る研究所を後にし、多くの王国が廃墟と化した(しかし宿屋は無事)
世界に辿り着いた
ベリュル。前回取り逃がしたマリアリスが犯人かと思われたが、
数少ない生き残りの話を聞くと、それは伝説上の怪物、ヒドラの仕業だった事が分かる。
悪の根を絶つため、そして敵とはいえかつて仲間だったマリアリスを助けるために、
地底深くにまで達したダンジョンでもあるヒドラの巣を進み、討伐に向かうベリュル。
最深部である地下20階に到達すると、出現したヒドラが食欲も露に襲い掛かってくる。
一般的に知られるヒドラの特性通り、戦闘においても尋常ではない生命力を誇る。
それぞれ6666のHPを持つ3つの首が生えており、首が減るごとに能力が強化される。
さらには、全ての首をもいでも胴体のみで戦い続け、これにも15000のHPがある。
なお、町の惨状、および生き残りの証言を元にして推測すると、
首ごとに火や冷気や電撃等の属性攻撃も使いこなす事ができると思われる。
片仮名で喋り、人間を見れば食べようとする、FFSの典型的なモンスターといった印象である。
本人の台詞だけでなく、戦闘前の掛け合いでの、ベリュルの小粋な返し方も絶妙。
倒された後は、「ニンゲンメ、セカイハオマエタチダケノモノデハナイワレワレノモノダ」と、
ある意味RPGの定番とも言える、モンスター側からの正義の主張を行ったものの、
ベリュルには「死ぬわけにはいかないぜ」の一言で片付けられ、マリアリスも奪還された。
支配者を相手取るときは義憤に燃えて立ち向かう事の多い印象があるベリュルではあるが、
今回のようにどちらが正義ともいえない問題については、意外とドライな態度を取る事が多々ある。
ベリュルにとっては、人間以外との戦いは単純な種族の生き死にの闘争に過ぎないのかもしれない。
首を全部失ったはずなのにまだ喋る事のできるヒドラは、さすがの生命力である。
そして、もし出会ったら、ベリュルのように「ヒドラじゃん」と言ってみよう。
主な台詞:
「ニンゲンオイシイオマエモショクリョウトナルノダ、イタダキマス」
「ニンゲンメ、セカイハオマエタチダケノモノデハナイワレワレノモノダ」
【マリアリス/マリアヒドラ】(第45話~第81話)
第45話の古城ネルストにて、滅びた王家の王女として登場し、仲間に加わったマリアリス。
それから10話に渡りベリュル一行と行動を共にしてきたが、デスグレンザーとの接触において、
衝撃的な裏切りと共にデスグレンザーを殺害し、いずこかへと逃亡した。
その後第58話にて、世界がゾンビで覆い尽くされたエクスレイズの世界で再登場。
エクスレイズに生命を奪われゾンビと化しており、ベリュルはこれを打ち震えながら倒す。
しかし、第80話にて何故か復活。彼女の正体とは、研究所の世界の研究者の一員であった。
そして研究所の崩壊からも逃れたマリアリスは、この第81話にてヒドラに捕らえられていた。
今までの確執も忘れ、思わずマリアリスを救出してしまったベリュルだが、
マリアリスは卑劣にもその瞬間に奇襲。本性を現したその姿はもはや人の域ではなく、
ヒドラ以上の力を誇る真のヒドラ、怪物マリアヒドラと化していたのだった。
基本的な能力はヒドラと同様と思われるが、首のHPは約1.3倍、胴体のHPは約1.6倍と、
全般的な性能はかなり向上しているものと思われる。それでもナントカ倒し問い詰めると、
マリアリスは「
エクスデスの時代は終わった・・・エクスレイズがこれからなのだ」と、
謎めいた言葉をほのめかして息絶える。長いマリアリスの活躍はここで終わる事になる、が……?
前回の台詞等から、ただの研究者とは違う思惑のあった事が示唆されていたマリアリス。
その正体とは、研究者ともエクスデスとも異なる第三勢力、エクスレイズの尖兵であった。
研究所がエクスデスと通じていた可能性が高いというのはこれまで考察した通りだが、
にも関わらずマリアリスは、本来は天敵のはずのエクスレイズにも通じていた事になる。
以前登場したマリアリスゾンビは、クローンや生物兵器で培われた研究所の技術力に加え、
エクスレイズからの力があってこその産物であったと言って良いだろう。
その技術力は機械工学に長けたベストバイダやアメジャストとは趣を異にしており、
マリアリスゾンビやムバーを生み出し、さらには今回のエピソードで、
再生力に優れたヒドラの細胞を自身に取り込みヒドラ化する等、生命工学が領分のようだ。
研究所、ベリュル、エクスデス、エクスレイズと、4つもの勢力の間で立ち回り、
最強のモンスタームバーを作り出し、さらに自身を改造したその動機は明らかにされていない。
一つだけ確かに描写されているのは、目的の為に取った手段の徹底的な卑劣さのみである。
仲間として行動したベリュルを平然と裏切り、ゾンビを用いて混乱を誘い、
「黙っていてごめんなさい許して」と言いながら平然と最強の人工生物ムバーを差し向け、
それでも飽き足らずヒドラによる狂言誘拐を演出し、隙を見せた瞬間に裏切り始める。
一時は味方だったとはいえ紛れもなく悪党であり、一貫して卑劣なキャラとして描かれている。
いまいち人気は出なさそうなキャラではあるが、同情の余地やカッコよさは欠片もなく、
単純な嫌らしい悪を煮詰めたようなこんな悪役も、最近は中々いないのではないだろうか。
主な台詞:
「ハハハ、そんな事だろうと思った、デスグレンザー死ね」
「これは貴方たちのデータをとって作った最強のモンスター・・ごめんなさい作る気は無かったの」
「エクスデスの時代は終わった・・・エクスレイズがこれからなのだ」
【魔神ドゥリャープ】(第82話~第83話)
常に原因不明の地震が起こり続ける世界。自分の世界に帰ったファンニャ^の代わりに、
死んだはずなのに約束を守るため復活してくれた頼もしき漢ダンギャステルを調査に送り出し、
さらに自分もじっとしていられない性分なベリュルは、古の洞窟に原因究明に向かうのだった。
それはそれとして、
メリアナニーが
ファンニャーから困ったときに見るように渡された封筒を開けると、
「いつか倒さなきゃならない異世界三大魔神、ドゥリャープ、エンゲンゼア、そして・・・シュグレス」と、
今後立ちはだかるであろう強大な3体の敵がほのめかされる。そしてこの世界の謎の地震も、
他ならぬこの魔神達の一匹、ドゥリャープが引き起こしている現象であった。
さらに、まだ眠りについていたドゥリャープを悪の科学者ドータマ・デンベロイが目覚めさせてしまう。
伝説の魔神の正体は巨大ロボットであり、その圧倒的なパワーにベリュル一行も成す術なく敗北する。
まともに戦闘が可能になるのは、地震の世界が崩壊した後の世界でズンジェーンの剣を手に入れ、
魔神ドゥリャープに対抗可能な兵器、聖神バドューチャを目覚めさせてからとなる。
7800万というインフレ気味のHPを誇り、一度の攻撃で23万ものダメージを与えてくる。
当然生身では勝つのは無理だが、聖神バドューチャはHP2560万、攻撃ダメージは650万なので楽勝だ。
連続して2つもの世界を滅ぼした初めてのボスであり、ベリュルが大敗北を喫した相手としても印象深い。
もっとも、搭乗者ドータマ・デンベロイのキャラも強烈であり、その影に隠れてしまっている感もある。
そのHPや攻撃力はベリュル達とは文字通りに桁違いであり、蘇った聖神バドューチャとの殴り合いは、
さながらスーパーロボット大戦の様相を呈している。世界が崩壊したのも、これが間接的原因だろう。
それにしても、封印された魔神が復活すること自体はファンタジー世界でそう珍しい事でもないが、
対抗して主人公側も封印されていた怪しげなものを復活させて操り立ち向かうというのは、
中々に混沌とした展開で他に類を見ない。ファンニャーとベリュルのスピーディーすぎるやり取りや
ドータマ・デンベロイのテンション等、ベリュルが敗北する割りにはノリが軽く楽しいエピソードである。
主な台詞:
なし
【ドータマ・デンベロイ】(第82話~第83話)
地震の世界にて眠っていた魔神ドゥリャープを目覚めさせ、一度倒されてもまだ逃れて、
ベリュル一行に200年先んじて魔神エンゲンゼアをも復活させた、悪の科学者。
当然、エンゲンゼアに乗り込んだドータマ・デンベロイとのリターンマッチが……
……と思いきや、どういうわけかエンゲンゼアに乗り込む時には影も形もない。
逃げてしまったのか、エクスレイズ・エレキにエンゲンゼアの支配権を奪われたのか、
それとも彼自身がエクスレイズに乗っ取られエクスレイズ・エレキと化したのか、
あるいは単純に、ベリュル達が訪れるまでの200年の間に寿命が尽きてしまったのか……
原因はよく分からないが、中々に強烈なインパクトを持っていながら、
跡形も無く蒸発してしまったキャラクターである。無論、今後のエピソードでの再登場もない。
悪の科学者とはいうが、その無秩序な行動と頭の悪い台詞は、もはやテロリストそのもの。
科学者という共通点から、直前の世界で壊滅した研究所の世界の残党とも推測できるのだが、
比較的理性的に見えた研究員達と比べると、やはり破滅主義的な行動原理に疑問が残る。
信じられない事に、あのベリュル一行と連戦して、しかも勝ち越した上で姿を消している。
ロボット戦という異色のバトルではあったが、戦績は3戦2勝1敗。何気にすごいヤツである。
主な台詞:
「ギャハハ、伝説の魔神はロボットだったようだ、のって操縦しようベリュルたちもコレで死ね」
「ぬむ、だがまだ魔神はいっぱいいる全部目覚めさせたら世界は私のもの」
【執事カミュメミマ】(第83話)
「ズンジェーンの剣」「くっメダルダルトの館か」。動かない聖神バドューチャを目にした、
ベリュルとファンニャーの会話である。これだけで意思疎通を完了したベリュルは、
ズンジェーンの剣があるといわれるメダルダルトの館へと向かい、その奥にて
剣を守る執事カミュメミマと戦い、ズンジェーンの剣を託すに相応しい者として認められる。
ズンジェーンの剣を山の台座に差し込むと、聖神バドューチャを始動させる事ができる。
しかしズンジェーンの剣は、その名の通り武器としての剣であるか疑わしいところである。
恐らく剣というのは便宜上の名称であり、聖神バドューチャの起動キーと表現するのが妥当だろう。
こいつ本人に特筆すべき点があるとすれば、舌を噛みュそうな程発音し難い名前だろうか。
バドューチャ(バドッーチャ)やドュリャープの時点でも中々アレだが、こいつも相当である。
主な台詞:
「あなた方に剣を持つシカクがあるか確かめる」
【魔神エンゲンゼア/エクスレイズ・エレキ】(第83話~第84話)
ドゥリャープを撃破した後、ドータマ・デンベロイを追って辿り着いた、遺跡の世界。
しかし第78話での世界移動と同じような時間軸のずれがここでも発生しており、
この世界では200年前に訪れたドータマ・デンベロイが既に魔神エンゲンゼアを目覚めさせている。
すぐさまこれを見つけ出し、聖神バドューチャで撃破を試みるベリュル達だったが、
破滅光線の圧倒的な威力により、聖神バドューチャすらもなすすべなく倒されてしまう。
唯一の対抗手段すらも失われたかのように思えたが、「外から駄目ならうちから」の助言に従い、
ベリュル達はバブイルの塔の頂上より魔神エンゲンゼアの内部に乗り込む作戦を実行する。
信じられないメカやとてつもない機兵を切り抜けながら最深部のコアに到達すると、戦闘になる。
コアには物理攻撃を跳ね返すオートリフレクリフレクガがかかっており、強固な防御力を持つが、
愛の歌を駆使して心を揺さぶれば、倒す事が可能らしい。メカなのに心がある理由は、
戦闘後、中から人間が現れた事で明かされる。実はこいつこそが真のエンゲンゼアであり、
また同時にエクスレイズとしての属性を持つボス、エクスレイズ・エレキだったのだ。
エクスレイズ・エレキは、エンゲンゼア内部に現れるモンスター同様、非常に素早い。
一応水属性が弱点に設定されているが、この時点ではあまり水属性にいい魔法もないので、
試行錯誤を繰り返しながら、普通に力押しで倒した方が効率的な場合もあるだろう。
別名は、バブイルの巨人というらしい。バブイルの塔が同時に登場している事からしても、
元ネタはFF4に登場したバブイルの巨人であろう。コアのオートリフレクリフレクガの特性も、
バブイルの巨人のボスである制御システムの行動パターンを踏襲してる。
その動力はなんとエクスレイズ。人間の脳を用いて演算を行うと同時に、
エクスレイズによって身に着けたエレキの力で、動力を供給していたものと思われる。
「私の眠りをよくも妨げたな」との台詞からして、その間は肉体が休眠状態にあるのだろう。
コアの人間の状態を保存する事で、無尽蔵に破壊活動を行わせるためのシステムなのかもしれない。
「人間は機械を恐ろしい発明をしてしまった」とはよく言ったものであるが、
取ってつけたような、「ぐああああ、人間はおろかだ」の人間批判の薄っぺらさはなんだかすごい。
主な台詞:
「私の眠りをよくも妨げたな私こそ真のエンゲンゼア、他の呼び方だとエクスレイズ・エレキだ」
「ぐああああ、人間はおろかだ」
【シュグレス】(第17話~第31話、第84話~第85話)
ベリュルの新たなる旅が始まった第17話の時点では、ベリュルには2人の仲間がいた。
それが10年前からの仲間である
ダンナーザと、この男シュグレスである。
アイスメリアによって永久氷像にされていた事以外は殆ど詳細不明のキャラであったが、
扱いが一変したのは第30の、。ベリュルの父ダンガデスグランドの不穏な最期の言葉。
その不安を裏付けるかのように、です・ザエンドラビリンスにて裏切るシュグレス。
ダンガデスグランドは、ベリュル一行の中に潜む反逆の芽を見抜いていたのだ。
入れ替わりに仲間に加わったメリアナニーの助力もあり、策謀は失敗に終わる。
だがシュグレスはそれでも諦めず、次の世界ではベリュルの旧友ミシュエルを用いて
ベリュルを逮捕拘束し、ミシュエルが倒れた後は自らが支配者としてベリュルと戦った。
ベリュルに敗れた後は、長い間その存在は忘れられられたと思われていたが、
なんと50話以上後の第82話にて、ファンニャーの封筒の中にその名前が登場する。
シュグレスの正体は、ドゥリャープ、エンゲンゼアと並ぶ異世界三大魔神の一匹だった。
そのシュグレスが第84話でベリュルの前に姿を現す。それはかつて仲間だった頃の、
正しい心を取り戻したシュグレスであった。その後ワールドフェイスから使命を受け、
この世界もまた危機に瀕しているという事実を知るベリュル。ジュエ山の頂上へ向かうと、
そこではシュグレスが待っていた。ベリュルを裏切った時からシュグレスの精神の中では、
正義の心と相反する、魔神シュグレスの血の破壊衝動が葛藤を続けていたのだ。
魔神の血が覚醒してしまったシュグレスが、理性を失ってベリュル達に襲い掛かる。
聖属性を弱点とするものの112500もの膨大なHPを誇り、今までの敵よりもはるかに強力である。
ナントカこれを撃退したベリュルだったが、それはかつての親友シュグレスを
自らの手で葬った事をも意味していた。呼び起こそうとするベリュルの叫びも空しく、
「赤い口」に入れるというキーアイテム、アガバの瞳を託してシュグレスは息絶える。
現在の冒険が始まった時からパーティーに居た最初の仲間にして、ベリュルの親友。
能力的にはあのメリアナニーの前身に当たるメンバーなので、育てて損はないキャラのはずだ。
第30話の原因不明の裏切りだが、これは魔神の血が目覚める前兆であったのだと思われる。
事前に封筒という形で情報を得ていたファンニャーはその事を知っていたのだろうが、
ファンニャーの初登場は第40話であり、シュグレスがパーティーから離脱した後のため、
(また魔神もいつ目覚めるか不確定なため)言い出すタイミングがなかったのだろう。
「悪こそ正義と知ったのだ」等と開き直る事の多いFFSの登場人物達の中でも、
珍しくも善と悪の葛藤に苦しむ、深い心理描写を見せた敵キャラクターであった。
親友を殺したベリュルの苦悩といい、人間ドラマとしての面が描き出されたエピソードである。
そして一見意味の分からないアガバの瞳の使いどころであるが……驚愕の伏線回収が待ち受けている。
彼らの肩書きは「異世界」三大魔神。あの存在への対抗手段を知っていても、おかしくないのかもしれない。
主な台詞:
「ははははは、そうだ、俺は最初から騙していたんだ」
「べ・・ベリュル俺を殺して暮れ魔神の血が・・」
「ハハハ、俺は2000万年前より地で眠って魔神お前を殺さねばなるまい」
【シド(3)/悪鬼シドムート】(第86話)
車や鳥、猫やカエルなど、人が様々な生命体や物体と融合してしまった、人間地獄の世界。
苦しみの余り襲ってくる融合人間達を倒し、世界の変容の原因となった科学者を探すが、
研究所の奥にいたその科学者とは、なんと第70話にて撃退した筈のシドであった。
実験の失敗を装って、「科学の知る権利」の為に人々の融合実験を行っていたシド。
その研究の成果か、バハムートとの融合を果たして悪鬼シドムートと化して襲ってくる。
リフレクすらも貫通するダイダルフレアでベリュル達を苦しめるも、ナントカ倒された。
シドとの3度目のバトル。何の説明もなく復活してきているが、前回の戦闘では
シドは星空ロボに乗って戦っていたため、破壊された後ナントカして脱出したのだろう。
今回もまた、倒されてなお「操られていたようじゃ」などとその場逃れの言い訳をする。
しかもお詫びに渡した謎の箱はベリュル達を別世界に転送するトラップというどうしようもなさ。
この事実からも、シドのメンタリティは前回から全く変わっていない事が理解できるだろう。
人間を手当たり次第に他の物体と融合させた恐るべき実験も、実際のところ、
チョコボと人間を入れ替える実験とレベル的にはほとんど同じようなものである。
「科学とは興味で興味とは科学で知る権利なのだ」とよく分からない理屈で悪に染まったが、
一見何の役にも立たなさそうな融合実験も、単なる興味本位の行いであったのかもしれない。
飛空挺の開発者ではあるが、実学より理学寄りのマッドサイエンティストなのだろうか。
とにかく今回のエピソードでもシドは反省せず、シドとベリュルの因縁はまだまだ続くのである。
主な台詞:
「フフフ、科学とは興味で興味とは科学で知る権利なのだ」
「はっわしは操られていたようじゃ、お前たちにお詫びの商品としてこの箱あげる」
【クリスタルマスター・ヂャウオ】(第87話)
シドのトラップによって吹き飛ばされて辿り着いた、クリスタルの生まれる世界。
そこは海、土、空気等、あらゆる要素がクリスタルによって構成される世界であり、
クリスタル化の影響か、出現するモンスターも軒並み高い防御力を誇っている。
このクリスタルの世界の支配者こそが、クリスタルマスター・ヂャウオである。
クリスタルの力を操る能力を持つヂャウオだったが、実際はその絶大な力を悪用し、
暗殺者や強盗等の凶悪なジョブを作り出しており、汚職に手を染めていた事が判明する。
戦闘中にもその能力を駆使し、懐かしの悪魔騎士(第65話登場)を始めとして、
電気魔法使いやシルバー魔道士等、敵専用と思しきジョブを次々切り替えて攻撃してくる。
多彩な攻撃方法に加え回復まで行うため、これといった対策が困難なボスといえるだろう。
ヂャウオが息絶えても世界は崩壊する事はなかったが、代わりに世界を覆う幻影が解け、
この世界は元々、真のクリスタルが存在しないミスリルの世界だった事が明かされる。
FFSのボスの能力はどれも個性的だが、ついにジョブシステムを活用するボスが現れた。
主人公と同様の力を敵サイドが使いこなすという展開は一見王道ではあるのだが、
FFで例えれば、モンスターがリミット技やオーバードライブを駆使してくるようなものである。
最終的にトランスの力を使用したFF9のクジャのような例もあるが、これは中々珍しい。
もっとも、クリスタルの世界そのものは幻影だったというオチがつくのだが、
実際にジョブチェンジを使いこなしていた以上、ヂャウオ自身はベリュル達と同様、
クリスタルの力を秘めていたというのは真実だろう。しかも能力規模も相当に大きいようで、
世界全体を覆う幻影を作り出す力(あるいはそれを可能にするジョブ)すらも備えていた。
今回の世界は、既に屍と化した城主が維持していたため、彼が支配していたとは言えないが、
逆に言えば物言わぬ死体に世界の維持を任せていたからこそ、その分のキャパシティを、
世界の偽装やクリスタルの力を用いた犯罪に利用できていたのかもしれない。
そう考えると、他の支配者のように自分のルールで世界を作り出して統制するのではなく、
形骸化した世界を乗っ取って、自分が利用しやすいように捻じ曲げていたヂャウオは、
まさに犯罪者らしく、容量の良い犯罪計画を実行した敵キャラクターだったという印象を受ける。
主な台詞:
「駄目だ」
【エクスデスキング】(第88話)
エクスデス達が生まれる悪の根源の世界、エクスデスワールド。しかし今は見る影もなく、
天敵たる新種、エクスレイズの台頭によって、ほとんどのエクスデスが狩られてしまった。
また、ここではベリュルの抱える秘密の一端が明かされる。このエクスデスワールドは、
ベリュルが幼少時代を過ごした世界であり、彼はエクスデスに育てられた人間だったのだ。
生まれついての悪の存在であるエクスデス。だが、それを滅ぼしつつあるエクスレイズもまた悪。
情も手伝ってか、エクスデス達を助ける事を決意するベリュル(風邪で戦闘不能だが……)。
しかし結果的にはやはり敵対する事となってしまい、城の中へと乗り込んでいく。
そしてついに、ベリュルの育ての親であるエクスデスキングが立ちはだかるのであった。
「ありとあらゆる攻撃をしてくる」、第8話の闇や第15話のスターエクスデスに近しい特性を持ち、
さらにそれに加え、常時3回行動という凄まじい手数がこちらを圧倒する。
しかもベリュルは今回のエピソードでは戦闘不能なので、実質3人で挑まなければならない。
さすがにエクスデスのキングを名乗るだけあって、非常に強力な戦闘能力を持ったボスである。
全滅を繰り返しながらナントカ倒したものの、ただでは倒れなかったようであり、
エクスデス達の産み落とした卵の多くが、いずこかの世界へと散らばっていってしまった。
ついに出てしまったエクスデスワールド。ここで登場したエクスデスの種類だけを挙げても、
エクスデスボーンやエクスデスナイト、エクスデスボーンにエクスデス・ドクターと、
もはや何でもありといった様相を示しつつある。しかも最も因縁深いはずのベリュルは、
第一声が「変」、風邪でリタイアという、あまりにツッコミどころ満載の状況だった。
とはいえ、エクスデスキングは至って真剣に「エクスデスの敵」ベリュルに自ら立ち向かい、
エクスレイズにより世界が滅亡の危機に瀕してもなお、対抗策として着実に卵を準備した上で、
ベリュルに破壊されたりエクスレイズに捕食されないために、多元世界に分散して飛ばす等、
エクスデスワールドという世界ではなく、エクスデスという「種」をあくまで残そうとした。
ある意味では冷徹な政治判断だが、キングとしての有能さを示す対応だったと言えるだろう。
また、詳細は明かされないものの、エクスデスがベリュルを「利用して育てた」という
発言の真相も気になるところである。研究者達との関わりがあった事などから推測すると、
やはり何らかの戦闘データのサンプル等を取らされていたという事なのだろうか。
そして恐らくは、その時に起こった何らかの確執により、両者の長い敵対が始まったのだろう。
ところで、第49話でダイヤモンド男爵に封印されていた記憶は、この幼少時の記憶かもしれない。
氷の精霊達は、エクスデスに育てられた記憶を利用されてベリュルが邪悪に染まる事を危惧し、
ベリュルも、今まで散々殺戮してきたエクスデスと自分がかつては関わっていたという事実を
仲間に知られたくなかったがために口をつぐんだと解釈すれば、不可解な言動の整合性が取れる。
それでも結局は滅亡の危機に瀕した彼らを前に一瞬思い迷ってしまった所は、実にベリュルである。
主な台詞:
「おのれ、エクスデスの敵のベリュルよ、拾って人間だったお前を育てた恩を忘れて殺すので死ね」
「グゴ、すでに我々の産み落とした卵が全世界を覆っているので終わりハハハ」
【エクスデス・ファザー】(第88話)
「あるエクスデスの一家にあった」。FFSを知らないFFプレイヤーがこのフレーズを見せられたら、
どんな感想を抱くのであろうか。どのような事態が起こったのかは、名前を見れば一目瞭然だろう。
そう、第39話に登場したエクスデスボーイの父親……エクスデス・ファザーである。
息子であるエクスデスボーイが子供の国と共に自爆して死亡した事を知らされており、
それを嘆いていたところ、ちょうど良く犯人のベリュルが通りがかったため、即座に殺しにかかる。
能力は不明ながらとてつもない強さを誇るらしく、ベリュル抜きのパーティーでは苦戦するだろう。
これに怒りを覚えたベリュルは、主張を一転させてエクスデス打倒の決意を新たにしてしまい、
エクスデス・ファザーの復讐行為は、結果的に両者の和解のフラグを折ってしまう事になってしまう。
根深い敵対感情と復讐の連鎖故に、両者が決して相容れない存在である事を示したエピソードである。
まあ、厳密にはエクスデスボーイは(死亡寸前とはいえ)ベリュルが止めを刺したわけではないし、
そもそもエクスデスボーイは作中でもトップ10入りしかねない程の外道を働いていたので、
エクスデス・ファザーの逆恨みに怒り狂ったベリュルの気持ちも分からなくはない。
しかし、常に倒される側のエクスデスにも家庭があり、エクスデス同士の親子の情も存在するのだ。
色々とぶっ飛んでいる事は確かなのだが、なんだか妙な親しみやすさを感じてしまう。
主な台詞:
「私の息子のエクスデスボーイがベリュルという男に殺されたらしいあっおまえはベリュル死ね」
【エクスデスフォレスト】(第89話)
エクスデスワールドを後にして辿り着いたのは、珍しく何の事件もない平和な世界だった。
しかし、エクスデス達によって飛来した卵の存在が、その平和に不穏な影を落とす。
ヒャルベンブの森(入ったら死ぬ森)に卵があるという情報を得たベリュル達だが、
ヒャルベンブの森は恐ろしい魔物の巣窟であり、さらには特殊な木々が行く手を塞ぐため、
木こりのジュババから木こりのジョブを手に入れ、木々を切り開いて進まなければならない。
探索の末に卵を発見するベリュルだったが、特に何をするわけでもなくしばらく観察していると、
案の定卵が孵化し、中から新種たるエクスデス、エクスデスフォレストが現れたのだった。
その名の通り木の体を持つエクスデスであり、生まれたばかりであるためか、
FFSのエクスデスの特徴でもある強力な防御力や、弱点である火属性への対抗策も持たない。
とはいえそれでも強力なスペックを持っていたようで、ナントカ倒してもまだ生きているほどの
生命力の高さも見せたが、最期は突如飛来したエクスレイズ・ウィングに捕食されてしまった。
まず、平和な世界にどうして「入ったら死ぬ森」なる物騒極まる場所が存在しているのだろうか。
そんなものが存在する時点で平和とは程遠いのではないのだろうか……? という疑問は置いといて、
入ったら死ぬはずの森で卵を見かけた人間がいる、という一番のツッコミどころは、
矛盾のないように解釈すると、エクスデスワールドから卵が森へと飛来する様を目撃した人間が居た、
という意味だろう。すると卵のサイズは遠目からでも分かる、かなり大きいものになるはずである。
ベリュルは「木でできてるが」などとさもそれが特殊な事であるかのように驚いているが、
そもそもこちらの常識で考えれば、元が木であるエクスデスが木製なのは当たり前である。
とはいえFFS世界では、エクスデスの本体は「悪霊」や「悪意」のようなものと解釈されているため、
FF5のエクスデスをFFS的に言うなら、一本の木から生まれたエクスデス・ウッドといった所だろうか。
生まれたばかりでまともに喋る事もできなかったが、生まれてすぐエクスレイズに捕食されるその様で、
厳しい食物連鎖の掟を印象付け、はだしのゲンを髣髴とさせる断末魔を残す等、ネタ度は意外に高い。
主な台詞:
「グギギ・・・」
【エクスレイズ・ウィング】(第89話)
エクスデスフォレストを倒したベリュル一行の前に飛来した、3体目のエクスレイズ種。
その名の通り、翼による飛行が可能。入ったら死ぬヒャルベンブの森にも、難なく空から侵入した。
瀕死状態にあったとはいえ、仮にもエクスデスであるエクスデスフォレストをいきなり捕食し、
その様子を見ていたベリュル達に、エクスレイズ種に対する戦慄と危機感を植えつけた。
食料となるのはエクスデスだけではないらしく、ベリュル達がヒャルベンブの森から戻ると、
木こりのジュババまでもが既にエクスレイズ・ウィングに喰われており、腕しか残っていなかった。
今回の例のように、脇キャラが必然性もなくグロい死に方をしたりするのがFFSなのである。
だが何よりも特筆すべきは、その台詞である。「フフ・・エクスデスはおいしいね」。
この不思議な面白さはちょっと説明し難い。まず、行為の獰猛さと裏腹の、意外に穏やかな口調。
歴代FFでラスボスだったエクスデスを当然のように餌扱いするそのインフレ感。
そのスケールの大きさに反して、「おいしいね」とのなんとも素朴かつ無邪気な感想。
とにかく思い出すだけで笑えて仕方ない台詞である。間違いなく名言と認定して良いだろう。
エクスレイズ・ウィング自身は今回逃げ去ったままで、実は戦闘シーンや再登場もないのだが、
この台詞のインパクトが記憶に残っている読者も多いのではないだろうか。
主な台詞:
「フフ・・エクスデスはおいしいね」
【エクスデス・エクスプロード】(第90話)
ダメージを受けるほどの凄まじい嵐が吹きすさぶ、既に崩壊寸前の危機に瀕していた世界。
モンスターまでもがほぼ絶滅し、人間の存在も消えた寂寥とした環境の中で稀に現れるのも、
世界の過酷な環境のためか、強靭な生命力と凶悪さを備えるようになった変異種のみである。
そして、ベリュル一行はこの世界にも襲来していたエクスレイズの姿を目にする事になるが、
なんとそれは、卵から誕生した新種エクスデスに逆に貪り喰われる衝撃的な光景だった。
破滅した世界の力を備え、エクスレイズをも凌ぐ新種、エクスデス・エクスプロード。
爆発による強力な攻撃を繰り出すエクスデスなので、ベリュルの戦闘回数を調節して、
風邪によるベリュルの見学周期がボス戦と被らないように気をつけて挑戦しよう。
今回は、FFSのエクスデスに関わる重要な設定が語られる。飛来したエクスデスの卵は、
その世界の「場の力」をコピーしたエクスデスとして生まれる性質を持つのだ。
恐らく精神体が本体であるFFSのエクスデスにわざわざ卵が存在するのも、それが理由だろう。
卵の中には純粋な「悪霊」としてのエクスデス(エクスデス本体)が存在しており、
現在の環境とは全く違った環境の世界に放たれ、孵化する事で種としての多様性を獲得する。
エクスデスとは良くも悪くも、生まれた環境に感化されやすい不安定な生命体なのである。
それを踏まえて考えれば、破滅した過酷な世界に生まれたエクスデス・エクスプロードが、
エクスレイズを逆に喰らうほどの残虐性と強力な戦闘能力を兼ね備えていた事も納得できる。
環境が危険で厳しくあればあるほど、エクスデスはそれに耐え得る力を持って生まれるのだ。
不安定でありながらも、それ故に環境による死を克服した、死を越えし存在なのである。
FFSのエクスデス達が世界を悪事によって乱し、破滅に追い込もうとするその動機も、
今回のような滅びと死が蔓延する世界を自ら作り出し、そこで生み出したより強靭な種を
さらに他の世界へと広めていこうとする、種としての本能であるのかもしれない。
台詞の少ないボスではあったが、「断末魔」のコメントが絶妙な相乗効果を出してくれている。
主な台詞:
「オオォォゴォォ・・・」
最終更新:2010年05月14日 19:15