スプ水先生の奇跡【最終章】  ~牧野真莉愛の想い~


それは2016年もあと数日で終わろうという、年末のある日。

12期の4人でLINE LIVEを放映したんだけど、
「モーニング娘。'16の12期ニュース」というテーマで話し合った時、
はーちんがまりあにとってすっごい嬉しいことを言ってくれたんだ。

「私は2016年の夏に、まりあちゃんと、あのお仕事帰りに歩いてたら、
お祭りを発見して、2人で、多分東京に来て初めてやったんですけど春水は、
一緒にお祭りに行ったってことが一番思い出ですね。かき氷を食べたりしました」

まりあにとっても強く思い出に残ってるあの日の出来事。
はーちんもまりあと思いは同じだったんだ。

「まりあは、綿菓子食べて、はーちんは、かき氷を食べて」

「そうなんですよ」

はーちんの両肩に後ろから手を置いてアピールしながら、
あの時の気持ちの高揚をどうにか表現しようとするまりあ。

「2人でね、その時にお祭り見つけてキャーお祭りだ―! って言って、
手振って、こうやってやってこうやってやってね」

後ろからはーちんの手を取って握ってみたけど……なんか違和感。

「違うよ、こうやってやってね、走ってったの」

あの時のような恋人繋ぎに手を取って御満悦のまりあに、
はーちんは完全に苦笑いだったけど、黙って受け入れてくれた。


「そう、なんかもうワー! っていうなんかね、そうなんかすごい」

「行こ行こ~! って」

「テンションが上がったわけですよ。
っていう出来事がありました。それが私のニュースです」

まさかはーちんが、2016年のニュースとして真っ先にまりあのことを挙げてくれるなんて。

でもそれだけじゃなかった。しばらく会話が進んでから、
はーちんがさらにこんな嬉しいことを言ってくれたんだ。

「ハイ! ハイ! 思い出した!!
あの~、私的一番、一番のニュースじゃないんですけど、
はるなが、まりあちゃんのことをまりあって呼ぶようになった!」

「あ! 多いよねぇ最近」

そう!
はーちんは今までまりあのことをまりあんぬとか、
TVの時とかではまりあちゃんとか呼んでたのに、
この頃はまりあって呼んでくれるようになったの!!

「そして、まりあも春水のことをはーちんって呼ぶようになったっていうのが、
結構自分の中では嬉しかったです」

呼び方一つでも、はーちんとの仲が深まってきてるのがわかって、
まりあもとっても嬉しい!


「だってあれだもんね、あの~『GRADATION』の時に、
初めてのツアーの、一年半くらい前の『GRADATION』の時に、
こう、まりあちゃんが今年は春水ちゃんと仲良くなるみたいな、
尾形ちゃんと仲良くなる~! って言って。あれ? どうなったんだっけあの時」

あかねちんが援護射撃(?)で話を広げてくれた。
あの時はまだ、はーちんの心を掴んでみせるとか大それたことは考えてなかったけど、
それでもはーちんと仲良くなるために色々と頑張った、今では懐かしい思い出。

中でも特に印象に残ってるエピソードを、悪戯っぽくはーちんに投げかけてみる。

「いやでもさぁ、まりあがチューした時の尾形ちゃんの顔がもうめっちゃ、
オエー! オエー! って顔」

まさかのチュー話に、慌てるはーちんがとっても可愛い。

「あれはそういうほら、そういう、ネタやん。ネタっていうかさぁ」

「まりあがチューしたのもおかしいと思うんだけど」

でも、その時のはーちんへの想いは本物だよ。
……なんて心の声はあえて付け加えなかったけど、
はーちんにもちゃんと届いててくれたらいいなぁ。


この頃ずっとはーちんに好き好きビームを出しまくっていて、
はーちんはそれでも素知らぬ振りで躱し続けていて、
まりあがはーちんのことを大大大好きという気持ちが本物ならばそれでいいんだ!
なんて思いながらもやっぱり寂しい気分になることもあったのは事実だけど、
こうやってはーちんと親密になってきてるのが実感できるなんて、まるで夢みたい。

これなら、はーちんの気持ちをまりあに振り向かせるという未来も、
もしかして現実のものとなる日だって遠くないんじゃないかな……。

なんて、思わず浮かれていた時だった。
野中ちゃんが突然手を挙げて発言したのは。

「ハイハイハイハイハイハイハイ!
なんか、忘れてることありませんか、尾形春水さん」

「え? 春水??」

いきなりフルネームで名前を呼ばれて、驚いた顔で振り向くはーちん。

「2015年に、あの~春水ちゃんが私のことを『美希』って呼んで、
私が春水ちゃんのことを『春水』って呼ぶ約束をしたんですね」

まさかの暴露に、はーちんはその時のことを思い出したのか苦笑を浮かべる。

「そんなことあったんだ。そんなこと聞いたことないよ!」

「聞いたことない」

あかねちんも聞いたことないのか。
じゃあはーちぇる2人だけの秘密の約束ってことだったんだね。


「こっちはまりあって呼んでるのに、私のことは野中氏って呼ぶんですよ。
なんか、政治家みたいですよね。頭良さそう!」

そんな約束しておきながら、まりあのことはまりあと呼び捨てにするくせに、
自分のことは美希と呼んでくれないで野中氏と呼ぶなんてヒドい!!

という抗議だと思うんだけど、「頭良さそう!」と自分で野中氏呼びを肯定しちゃったら、
抗議として全然成立してないじゃん!!
なんてツッコミを入れたくなるところが野中ちゃんらしいと思う。

「でも野中氏っていう感じするよね」

「そうなんか野中氏っていう感じがするようになったんですよ」

それどころか自分でもあっさり野中氏呼びを認めちゃってるし。

「美希って感じせえへんもんなぁ」

そんなはーちんの返しには、笑いながら軽く肩を叩いてツッコんだ野中ちゃんだったけど。

「なんか、野中氏は野中氏、な気がする」

「野中氏でいきたいと思います」

結局はーちんに説得(?)されて、簡単に野中氏呼びを受け入れちゃった野中ちゃん。
なんかとっても微笑ましいやり取りだなぁ、なんてその時は思ったんだけど。

何故だかその時、まりあの心に重たいしこりを残していったんだ。


今回のことだけじゃない。

まりあがはーちんと徐々に距離を縮めていく中で、
より鮮明に目につくようになっていったんだけど、
はーちんと野中ちゃんの関係って、とても強固な繋がりがあるのがはっきり感じられる。

ただ仲が良いってだけじゃない。
2人のやり取りはとっても自然体で、お互いに信頼し合っていて、
そしてお互いの心が通じ合っていて……。

まりあは、自分がはーちんのことを大大大大大好きだって気持ちは本物なんだから、
他の誰がはーちんのことを想っていても関係ないと思ってた。
いつかはーちんのことを絶対に振り向かせてみせる!! っていう自信もあった。

でもそれは、あくまではーちんの心がまだ誰の方にも向いてないならっていうお話。
もしかして、はーちんの心はもうとっくに一人の相手に占領されているんじゃないのかな。
本人が、どこまでそのことに気づいてるかはわからないけど……。

考えたくもないそんな想像が、まりあの胸にずっしりと圧し掛かってくる。
そしてまりあとはーちんの距離が近づけば近づくほど、その苦しみは強くなっていく。


揺らぐことのない決意を固めていたはずのまりあの心は、
気づけば今にもポッキリ折れそうな状態まで追い詰められていた。


はーちんと野中ちゃんの、そんな羨むような関係性が一変したのは、いつ頃からだろう。
少なくとも2017年になってから、2人の様子が明らかにおかしくなってたんだ。

多分傍目からだと、2人の関係がおかしいなんてそんなに思えないかもしれない。
あからさまに喋らなくなったり目を背けたり、そんなことがあるわけでもない。

でも、はーちんのことをずっと側で見続けてきたまりあだから、すぐにわかった。

ううん、まりあだけじゃない。
2人のことをよく知ってるメンバー全員、きっとその異変に気付いてると思う。

わかりやすい変化としては、2人が隣同士でいることがほとんどなくなった。
野中ちゃんが新メンバーの横山ちゃんに構ってあげてることが多いというのもあるけど、
はーちんはいつも以上にあかねちんとばかり一緒にいるようになったし、
まるで示し合わせたかのようにある一定以上は近づかないようにしてるようにも見えた。

自然体でくっつくシーンがなくなり、目と目で通じ合うこともなくなり、
それとは逆にあくまで自然を装ってすぐに目を逸らすことが増えた気がする。

これはもう間違いない。
2人の間に、ぎこちなくなるような「何か」が起こったんだ。


まりあにとって一番のライバルだと思っていた野中ちゃんが、
何らかの理由ではーちんと疎遠になってる。
これはまりあがはーちんの心をつかむ絶好のチャンスだ!!

……なんて気持ちには、ビックリするほどまったくならなかった。

だって、もしもはーちんの心の隙間に付け込むようなやり方で
はーちんをまりあのものにできるようなことがあっても、
きっとその時まりあの隣にいるはーちんはまりあが大好きなはーちんとは違う、
胸の中が暗く澱み、綺麗だった瞳も濁った痛々しい姿のままで、
まりあがそんなはーちんのことを癒すことはできないだろうから。

今だってそう。
はーちんも、そして野中ちゃんも、決して表立ってそんな姿は見せないけど、
ふとした時に漂わせる辛そうな雰囲気は隠しきることができてない。

こんなにも苦しんでいるはーちんのために、まりあは一体何ができるんだろう??

考えれば考えるほど、まりあの心が深く沈み込んでいく。
だって、大大大好きなはーちんが目の前で苦しんでいるのに、
はーちんのためにまりあができることは、何にもないんだから。

いや違う。はーちんに本当の笑顔を取り戻す方法が、たった一つだけある。
でも、それは……。

「まりあはーちんのことが大大大好きだよ!! でも…………」

最後の決心がつかないままに、まりあの気持ちはいつまでもいつまでも、
グルグルと空回りを続けていた。


(おしまい)


※参考
モーニング娘。'16 12期メンバーLINE LIVE

https://live.line.me/channels/45624/broadcast/449585


~尾形春水の想い~      ~羽賀朱音の想い~

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最終更新:2017年05月13日 21:41