パンジー(学名:Viola X wittrockiana、シノニム:Viola tricolor hortensis)はスミレ科スミレ属の園芸植物の1種。
スミレもしくはサンシキスミレ(V. tricolor)から分化したものと考えられ、サンシキスミレの亜種Viola tricolor hortensisとされることがある。しかし、園芸上用いられる変種は交雑と交配が進んだものであり、学名をViola X wittrockianaとしてあらわしている。「パンジー」という名前は、このパンジーの他にもこれに似ている野生のスミレ属の花を指すときにも使われている。また、ヨーロッパではハーツィーズと呼ばれる事もある。また、ハエドクソウ科ミゾホオズキ属のパンジーモンキーフラワーのように、全く関係のない植物も花の形や花弁の模様が似ているためパンジーと呼ばれることもある。小型のパンジーをビオラということもあるが。学名の「ビオラ」(ヴィオラ)はスミレ属のことである。
1800年代に北欧で、アマチュアの園芸家が大きく鮮やかな群性のスミレを作るために、野生のサンシキスミレと野生スミレビオラ・ルテア(V. lutea)、さらに近東のスミレビオラ・アルタイカ(V. altaica)を交配して生まれた。1820年代から1830年代に膨大な交配が行われた結果、有名な品種は非常に大衆的なものとなっていた。1835年までには400品種が存在しており、1841年までには、パンジーは鑑賞植物として親しまれるようになった。イギリスではフローリスト(園芸愛好家)たちによって育種され、1813年にトムスンが改良を始めたとされる。そして「ショウ・パンジー」が生まれフローリスツ・フラワーに仲間入りした。しかし19世紀半ばには、ヨーロッパ大陸生まれのファンシー・パンジーに地位を取って代わられた。これは最初ベルギー・パンジーと呼ばれていたが、後にスコットランドで改良が行われた。
ビクトリア時代に低コストな鉄が入手可能になったことから、温室が爆発的に普及し、その結果現在園芸家たちに知られている鮮やかな花が生まれた。
パンジーを低木や潅木の下に植えると、生物マルチのような、雑草を抑制する効果が得られる。
寒冷地では春に、暖かい地方では冬から開花が始まる。パンジーはしばしばアリッサム(Lobularia maritima)と混植される。これはこの組み合わせが色彩的に魅力的である共に、同時に開花するためである。 パンジーはエディブル・フラワーとして食用にしたり、媒染剤で処理した織物を染めるために使われていたこともある。
パンジーは交配が進み、黄金色、オレンジ色、紫色、スミレ色、黒(濃青による)など多彩な色彩をもっている。パンジーは非常に丈夫な植物で、日当たりがいいところで、よく生長する。パンジーは秋蒔きの一年草であり、通常、ライフサイクルの完結には足掛け2年を要する。1年目に青葉を茂らせて冬を越し、2年目に花実をつけた後に枯死する。寒冷地では多年草だが、日本の多くの地域では夏の気候が暑すぎるため枯れてしまう。ほとんどの園芸家は、ホームセンターなどで苗の状態で購入し、庭に移植する。こぼれ種でも自然に増える。
最終更新:2011年06月24日 14:22