15スレ目544-LAS2

544 名前:DESTINY 1話[sage] 投稿日:2009/09/07(月) 23:14:04 ID:???
「なあ、碇。惣流って彼氏いるのかな?」
「そんなこと知らないよ。自分で聞いてみたら健介」
「冷たいこと言うなよ。お前ら長い付き合いなんだろー」
「たまたま小中高が一緒なだけでそんなに親しくないよ」
「なあ、それとなく聞いてもらえないかなー、頼むよ。俺達親友だろ!頼む!」
「今度な、気がむいたら」
司書室での放課後ティータイム。
ドアを開けるといつもの笑い声と甘いお菓子の匂いが出迎えてくれる。
「真嗣、健介遅いじゃない」惣流は二人の間に割って入る。
「今日のケーキ当番は綾波よ。どう感想は?」
惣流からの質問に答えようとする真嗣は綾波のまっすぐな瞳を感じていた。
「とってもおいしいよ。この間の惣流のに比べたらすごくおいしいよ」
「あんですってー!」惣流が真嗣に詰め寄る脇で健介が裏返った声で叫んだ。
「ボ、ボクは惣流さんの方がおいしかったですー!」
「あ、ありがと・・」あっけにとられる惣流。
「…ありがと。碇君」綾波が紅くなった顔を見られまいとうつむき答える。
「なんや、ええ感じやな、真嗣と綾波。新しいカップル誕生やな!」
「やめなさい鈴原!」そういうと洞木は惣流をチラッと見る。
「冬治は陽と付き合いだしてから、なにかとカップリングしたがるにゃー」
「真木波の言う通り!これ以上この司書室でのカップル誕生は先生が許しません!」
葛城は心中(33歳で独身、彼氏なしの私を差しおいて許せん!)と絶叫していた。
「ええじゃやないですか、センセー。互いに惚れあったモン同志が助け合い、励ましあう幸せというもんをこいつらに教えてやりたいんですよ」
冬治がこぶしを奮って力説する隣で陽が真っ赤になり拳を振り上げた。

そんな他愛もない高校生活。
鈴原と洞木以外は恋人関係に発展することなく僕らは卒業していった。
僕は父親との確執から大学に進むことなく、卒業と同時に家を出た。
父親から手切れ金同然に渡された金で古いアパートを借り一人暮らしを始めた。
家を出る時に父親名義のケータイは置いていき手元にはSDカードだけ残った。
一人暮らしを始めて2年、彼らとは音信不通になっている。
ようやくケータイを購入した僕は健介に電話をした。


545 名前:DESTINY 2話[sage] 投稿日:2009/09/07(月) 23:16:15 ID:???
「真嗣か?今迄なにやってたんだよ!みんな心配してるんだぞ!」
久しぶりの健介の声に僕はうれしくなる。
「とにかく会おうぜ。みんな集めるからさ」
それから3日して飲み会が開かれることになった。
遅れてきた真嗣は店員に通された小部屋に懐かしい顔ぶれを見る。
冬治、洞木、真希波、綾波、惣流、健介。
「まずは細かいことは抜きや!真嗣生存を喜ぶ会はじまりやー!カンパイ!」
皆それぞれ言いたそうな雰囲気を察した冬治はジョッキ片手に立ち上がり、
カンパイを叫ぶと一気に飲み干した。
「かんぱーい」綾波が同じくジョッキを一気飲みしようとして盛大にむせる。
「綾波、あんた、お酒飲めたっけ?」惣流と真希波に背をさすられる綾波。
「碇くんとかんぱいしたくて練習した」
「お酒は練習するもんじゃないの。勢いで飲むもんにゃ!」
真希波は綾波のジョッキを取り上げグイッと飲み干した。
「あんたはジュースで我慢しなさい」ジュースをグラスに注ごうとする惣流に
「いや、お酒飲むの」と綾波が掴もうした瓶ビールを真嗣が手に取り綾波に差し出した。
「ボクに注がせてよ」「・・・はい」差し出されたグラスにビールが注がれる。
「うれしい」「ゆっくり飲んでね」綾波は一口くいと飲みおいしいと呟いた。

「なあ真嗣。オレ今、惣流と付き合ってるんだ」惣流の体がビクッと揺れる。
「やだ、・・・健介。今そういうこと言わないでよ」
「いいじゃないか。どうしても碇に教えたかったんだ。俺たち親友だぜ!」
健介がこれ以上ない笑顔で真嗣に笑いかける。
「なあ、碇も喜んでくれるだろう」
「ああ、よかったな健介!おめでとう!」
「ありがとう!碇!」
その日、連絡先を交換して飲み会はお開きとなった。
「また、近いうち集まろうぜ」
べろべろになった冬治に肩を貸して歩いていく洞木。
同じく一人で歩けなくなった綾波を担いだ真希波。
手をつないで去っていく健介、惣流を見送り僕は帰路についた。


546 名前:DESTINY 3話[sage] 投稿日:2009/09/07(月) 23:24:51 ID:???
新着メールが2通。

真嗣。二人だけで会いたい。ちゃんと話がしたいの。お願い。返信ください。
明日香

Re:健介と一緒ならいつでもOKだよ。


碇くん、昨日は会えてとても嬉しかった。碇くんを見ているとポカポカした気持ちになれるの。
また、会いたい。お返事待っています。
綾波

Re:綾波さん、いま、仕事が忙しくて中々時間が取れないけど、いつか必ず会えるようにします。ごめんね。


その日の夜、健介からメールが来た。

真嗣。おまえの家に遊びに行くぞ。次の休み教えてくれ。

Re:うちは招待できるような所じゃないよ。古くて汚いし。外で会おうよ。次の日曜日ならOK。

Re:Re:みずくさいぞ真嗣。そんなの気にするような仲じゃやないだろ!つもる話もあるしさ、ゆっくり話がしたいんだよ。

Re:Re:Re:わかったよ。○駅に着いたら電話してくれ。迎えにいくよ。

Re:Re:Re:Re:OK。楽しみにしてるぜ。


547 名前:DESTINY 4話[sage] 投稿日:2009/09/07(月) 23:32:15 ID:???
次の日曜日、案の定、健介と惣流、それに予想外に綾波も来た。
健介が気を利かしたつもりだろう。
僕のアパートは古い木造の2階にある。
目の前が公園で日当たりが良いのが唯一の取柄だ。
6畳一間、風呂は無い。
「なんだ、以外とキレイというか、なにも無いんだな」
部屋にはベッドと本棚、小さなテーブルがあるだけでテレビ、冷蔵庫などの家電は無い。
食事はコンビニ弁当ばかりなので、台所のコンロは一度も使用したことがない。
綾波はなにか作るつもりで食材の入ったスーパーの袋を持っていたが、
置き場所に困っていた。
「ごめん、綾波さん。ここで料理は作れないんだ」
包丁、まな板、食器さえない。マグカップが1個あるだけの流し場。
「碇、来る道にスーパーあったよな。ちょっと買出しに行ってくるよ」
健介が惣流を連れて買出しに出ようとするが、惣流は嫌そうな顔をして綾波を見る。
綾波は惣流から目をそらしうつむいた。
惣流は仕方なしと立ち上がり、健介と部屋を出て行く。


548 名前:DESTINY 5話[sage] 投稿日:2009/09/07(月) 23:33:52 ID:???
「碇くん、ごめんなさい」
ふたりが居なくなるとか細い声で綾波がしゃべり始めた。
「どうしても会いたかったの」
「卒業式の日、突然いなくなって、ケータイも繋がらなくて、家に訪ねていったら出て行ったと言われて・・・」
「座りなよ」
綾波は手にした袋を落とし、真嗣に抱きついた。
「会いたかったの。恋人同士じゃないのにおかしいけど、忘れられなかった。碇くんの笑顔が見たくてこの2年ずっと苦しかった。」
綾波にこんな激しい一面があるとは真嗣は気づかなかった。
「もう、だまってどこかに行ったりしないで!お願い!」
悲痛な叫びが真嗣の心を揺さぶった。
綾波の顔が涙に濡れている。
「わかったよ。もうだまってどこかに行ったりしない」
「約束よ」「約束する」そう言うと真嗣は微笑んだ。
綾波は背伸びをすると真嗣に唇を合わせた。カツッと歯と歯が当たる。
あまりにとっさの出来事に真嗣は硬直する。
「約束の印。・・・好き」
真嗣は返す言葉が見つからなかった。

「碇ー!帰ったぜー!」
わざとらしく声を上げてドアを開ける健介。
二人は両手いっぱいにポリ袋を下げている。
「生活必需品を買ってきたんだ。遅くなったけど引越し祝いだ。受け取ってくれよ」
背を向けて涙を拭き取った綾波は健介からポリ袋を受け取り、惣流と一緒に台所に向かう。
一瞬、真嗣を見た惣流の顔がひどく悲しそうに見えた。


549 名前:DESTINY 6話[sage] 投稿日:2009/09/07(月) 23:38:28 ID:???
小さなテーブルいっぱいに置かれた手料理。
次々と空けられるビールの空き缶。半分以上は健介が飲んでいる。
とうとう酔いつぶれた健介は眠ってしまう。
「真嗣、今日泊まらせてもらっていい?」
綾波もスースーと寝息を立てている。
「これじゃ仕方ないね」
真嗣は綾波を抱き上げてベッドに運んだ。
「真嗣・・・零にはやさしいのね」
悲しそうな目で真嗣を見上げる明日香。
「あたしにはちっとも優しくなかったね」
「惣流には健介がいるじゃないか」
「やめて・・・健介とはそんなんじゃない」
「なに言ってんのさ。健介が付き合っているって」
「違うの。あたしは健介を利用しているだけなの」
明日香は健介が寝入っているのを確認して続ける。
「健介のそばにいれば、真嗣と連絡とれると思って・・・それで付き合うことにしたの、別に健介のこと好きでもなんでもない」
明日香は真嗣を押し倒し、耳元に唇を近づける。
真嗣は押し付けられた柔らかな胸から激しい鼓動を感じていた
「ねえ、真嗣。ほんとにあたしの気持ちに気づいてなかった?あたしの視線を感じていなかった?あたしいつでもあなたを見ていたのに。あたしの気持ちが届くように思いをこめていたのに」
明日香の熱い吐息が真嗣の唇にかぶさり、柔らかな唇が吸い上げる。
音を立てて真嗣の唇に吸い付き、舌を絡ませる明日香。
唇を離しチロッと舌なめずりした明日香は真嗣にささやいた。
「零には渡さない。真嗣はあたしもの」

僕は明日香と秘密を持ってしまった。
その秘密は健介を裏切り、零を傷つける最低の秘密だ。
明日香を抱いてしまった、それも二人がいる部屋で。
明日香は痛みに耐えていたのに、僕は自分の快楽に溺れていた。
明日香を好きなのかわからない。
ただ、やさしくしてくれる誰かを求めていただけかもしれない。
僕は・・・最低だ。

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最終更新:2011年01月26日 19:41
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