21スレ目219-LAS

219 名前:infinity ◆e1/swPUIeI [sage] 投稿日:2009/10/17(土) 17:21:59 ID:???
            〔君と一緒に〕
           ある土曜日の夕方
「ねぇ、アスカ。明日どこか行かない?」
「ん、…ん? え! シンジと?」
僕は洗濯物を畳みながらアスカに聞く。テレビを見ていたアスカが驚いた表情で僕を見る。
まぁ僕はアスカに誘われることはあっても、誘うことはしないからね。
僕がそんなことを初めて言うものだから、アスカは僕のことをじっと見ている。
なんかアスカの口元が少し上がるのが見えたのは気のせいか。
笑っているのかバカにしているのか、それとも嬉しいのかどっちだろう。
「シンジが誘ってくれるなんて、…明日は嵐ね」
あぁ、これは完全にバカにしている。そんなことを言いながらでもアスカは微笑んでいた。
はぁ、それじゃ明日は嵐でも起こそうかな。
「どこに連れていってくれるの? 動物園? 遊園地? それとも映画でも見るの?」
あぁ、やばい、期待しているよ。声が弾んでいるよ。
ついでにアスカの目が輝いて見えるのは気のせいかな。
「いやぁ、…動物園も遊園地も行かないけど…それに映画も見ないから…」
と、言ったとたん残念そうなアスカの顔が見えた。あわわ。
「……何処に行くの?」
明らかに残念そうな口調でアスカが聞いた。うぅ、本当にごめんよ。
「近所にカフェレストランがオープンしたんだけど…行く?」
「一人で行けばいいじゃない!」
即答ですね明らかに怒っていますよ。ひぃぃ、睨んでいるよ。
「ぼ、僕が好きなもの奢るから一緒に行こうよ!」
アスカはゆっくりと振り返り僕を見る。なんか石にされそうだ。
「本当に奢ってくれるの? シンジもし嘘だったら…」
「その先を言わなくても分かっているから。ちょっと落ち着いてアスカ」
僕は迫り来る壁を押すような体勢で両手を突き出し、アスカの怒りを静めた。
目が怖いな、なんか拳まで握っていますけど。
「明日は楽しみにしていてよ…」「…楽しみね」
たぶん明日は僕の命日になるかもしれないな。



220 名前:infinity ◆e1/swPUIeI [sage] 投稿日:2009/10/17(土) 17:23:10 ID:???
 ****************************
その日曜日
あたしはシンジの背中を見ながら歩いていた。まぁ、別に横に並んで歩いてもいいけど、
なんか恥ずかしい。
それにしても電車に乗ってその店に行くなんて、どこが近所なのよ。
「ねぇ、シンジ。お店はどこにあるの? 近所にしては遠いんだけど大丈夫なの?」
あたしはシンジのシャツの袖を引っ張りながら聞いた。
「この道であっているよ。それより…シャツが伸びるから…」
シンジはそう言いながら、シャツの袖も掴んでいるあたしの手を優しく払う。
「シンジおなか空いたよぉ」
あたしはそう言いながらシンジの顔を見た。シンジは笑顔を見せながら、
「もう直ぐだから我慢してアスカ」
シンジはあたしの手を掴み歩く。何時もと違う気がするのは気のせいかな。
何時もだったらあたしがシンジを引っ張りまわすのに、今日はシンジがあたしを初めて
引っ張りまわしている。なんか新鮮で悪い気はしない。
まぁそんなことを考えて歩いていると、行き成りシンジが立ち止まり振り返った。
「アスカ着いたよ。カフェレス…うわぁ…痛い…ぶべら」
あたしはシンジの足を踏み、勢いで押し倒してしまい膝がシンジのお腹に当たった。
「シンジ! 急に止らないでよ!」 
あたしはシンジを怒鳴りながら助け起こした。ごめんね、大丈夫。
「ごめんよ。うぅ痛い…えっと…こ、ここがカフェ・フランだよ。ぅぅ」
と言って、お腹を擦るシンジが指差した方向を見る。
外見は丸太小屋な感じで、なんかどっかの別荘の様な感じだ。
外に椅子とテーブルが3つ並んでいる。これはオープンカフェだな。
まぁ、いいでしょう。シンジが奢ってくれるんだから。
あたしはシンジの後に続いてお店の中に入る。最初にいい匂いが漂ってきた。
そして心地よい音楽が耳に入ってきた。
「いらっしゃいませ。お二人様ですね、こちらの席にどうぞ」
店員の案内で窓側の席に案内された。




221 名前:infinity ◆e1/swPUIeI [sage] 投稿日:2009/10/17(土) 17:24:05 ID:???
「メニューです。ご注文がお決まりになりましたらお呼びください」
店員はメニューとお水とお絞りをあたし達に配りながらそう言った。
あたしはメニューを見ながらどれがいいか悩んでいた。
「すいません。注文いいですか?」
シンジが店員を呼んだ。シンジあたしはまだ決まってないんだけど。
「フランオムライスください。それと…アスカは?」
「え? ちょっと…」
あたしはメニューをもう一度見直した。どれが良いか迷うがとりあえず、
「フランサンドを」
「食後のお飲み物は何になさいますか? それとデザートは1つだけ選べますが何になさいますか?」
「僕はリンゴジュースとクリームブリュレでお願いします…」
と、言い終わったシンジがあたしを見る。店員もあたしを見る。
「あ、あたしはコーヒーと…えっと…」
あたしは何にしようか迷っていた。いろいろデザートが多すぎて迷う。
どれにしようかあたしが迷っていると、
「僕と同じクリームブリュレでお願いします」
「はい、かしこまりました。少々お時間が掛かりますがよろしいですか?」
そう言って店員は厨房の中に入っていった。
「…ちょっと…勝手に決めないでよ」
あたしはシンジの耳元で囁いた。まぁ、いいんだけどね。
「僕と同じがいいかなと思ったんだよ。ごめんよ、勝手に決めて」
いや、あの、別にいいんだけどね。
「謝る必要はないわよ。…それにしても女性とカップルが多いわね?」
あたしは店内を見回して小声でシンジに言った。
「…女性に人気がある店だから…ちょっと調べたんだ…一人で入りにくかったんだ」
シンジがモジモジして答えた。なんか辺りを気にしている様子で挙動不審だ。
「シンジ落ち着きなさい! 恥ずかしいから」
あたしは小声で言ってシンジの足を軽く蹴った。
「ぁっ、痛いよ! どうして蹴るんだよ?」



222 名前:infinity ◆e1/swPUIeI [sage] 投稿日:2009/10/17(土) 17:25:05 ID:???
他のお客さんから見たらあたし達は、恋人同士か姉弟みたいな関係だろう。
「おまたせしました。フランオムライスとフランサンドです」
美味しそうな匂いがあたし達の周りを包む。
シンジのオムライスにはカレーが掛かっていて美味しそうだ。
あたしのフランサンドには、卵とハムが挟んであり普通のサンドイッチだ。
でもスープとサラダが付いていた。じゃあ、いただきますか。
「「いただきます」」
同時に手を合わせていた。シンジの顔を見るとニコリと笑っていた。
あたしもニヤリと笑ってしまった。シンジが一口食べてなんか頷いた。
そして笑顔になった。これは美味しいから笑顔になったのか。
「このオムライス美味しいな」
「あたしのフランサンドも美味しいわ」
「…ねぇ、アスカ。このオムライス美味しいから半分食べてもいいよ」
シンジはオムライスをあたしの前に置いた。
「はい、シンジ。これも美味しいから食べれば」
あたしもフランサンドをシンジに渡す。
「美味しいわねこのオムライス」
あたしは一口食べた。シンジがうなずくのが分かった。
「ね、美味しいでしょアスカ。…あ、ちょ…と」
なんか美味しくて手が止まらなくなった。
「ちょっと! アスカどうして全部食べるんだよ! 半分だけって言ったよね?」
「美味しかったから全部食べたのよ!」
「うぅ、酷いよ…僕のオムライスが…」
「あんたもそんなこと言うけど、あたしのサンドイッチ全部食べているじゃないの!」
まあ、なんだかんだといって食べ終えたところで、
「失礼します。コーヒーとリンゴジュースです。それとクリームブリュレです」
店員がこれでご注文は終わりですと言って、レシートを置いて厨房に戻った。
なかなか美味しそうだ。初めて食べるけどシンジは食べたことがあるのだろうか。
「シンジ、このクリームブリュレ食べたことあるの?」
「初めてだよ。…食べるのは」



223 名前:infinity ◆e1/swPUIeI [sage] 投稿日:2009/10/17(土) 17:25:51 ID:???
なんだか不安になる、あたしも初めてだから。
「この前見たDVDでそんな場面があったんだよ。クリームブリュレを食べる場面がね。
そしたら…たまたまこの店のチラシに載っていたから…それで食べたくなったんだ」
「もしかしてそのDVDのタイトルは…アメリ?」
「え! 何で知っているの?」
「あたしも見たの、ヒカリの家でね。なんか難しかったけど」
「そうか…アスカも見たんだ。僕は主人公の女性がクリームブリュレを食べている場面が、
物凄く印象に残っているんだよ。…でも…話の内容は忘れちゃったけど…」
シンジは笑いながら頭を掻いていた。
「あ、あんた…」
その場面で話の内容を忘れられるなんて凄いわね。
「あの映画のシーンだと…表面を叩いて…食べるんだったよね?」
「…その通りだったと思うけど?」
あたし達はスプーンで表面を叩いて食べた。
「なかなか美味しいな。…来てよかったよ、アスカ。…ありがとうね」
「べ、別に良いよ。アンタの奢りだから!」
「来週の日曜日もここでお昼を食べようよ」
「いいけどアンタの奢りよ」
「うん、いいよ。…だから一緒に行こうよ」    
                          閉店

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最終更新:2011年01月25日 22:01
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