1-0092

92 名前: ◆JSzrtK3oCk 投稿日:2008/01/16(水) 04:22:11 ???


「ねえ加持君?」
蝉が鳴く暑い午後。
隣に横たわるきみが呟いた。
「何だい、葛城」
「……本当に、私と付き合ってていいの?」
悪戯っぽい笑みを浮かべ、俺の顔をじっと見つめる。
「なぜ、そんな事」
「だって私、死神なのよ」
ふいに零された言葉に少し驚く。
「きみが死神?」
「そう、死神」
「……どうして」
だって、と言うと口を少しつぐんで、軽く口唇を重ねる。
きみからのキスはいつも触れるだけ。
「……私に関わる人はみんな死んじゃうのよ」
口唇を離すと、かみ締めるようにきみがそう言う。
瞳から細い涙の筋が通る。
「……俺は、大丈夫だから」
「そんな事軽々しく言わないで!」
安心させるために言った言葉だったのに、驚く程の勢いで突っぱねられた。
「そんな事、言ったって保障なんてできないくせに……言わないでよ……」
君の言葉が涙で曇る。
女なんて口先だけでしか口説いた事がなかった俺には、どう言葉を掛けていいのか解らなかった。 
「バカ……バカッ……」
胸元ですすり泣く君の背中を冷たい手で撫でながら、俺なんか死ねばいいのに、と密かに思った。 

「ほら、死神だって言ったでしょう?」
「ああ……確かにな」
「やっぱり軽々しく言うものじゃないの。……守れないんだから」
銃声が響いて、やっぱり俺はバカな男だよ、とまた密かに思った。

終劇



名前:
コメント:

すべてのコメントを見る
最終更新:2008年01月18日 09:52