296 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの 本日のレス 投稿日:2008/01/21(月) 03:07:44 ???
涙をたたえた目が爆炎のなかに散ったとき、赤木リツコの心には何かいいようのない不安がすべり込んだ。
綾波レイ。ファーストチルドレン。零号機専属パイロット。そして、あの人の。
初号機パイロットの叫び声が発令所を陰欝な空気で満たした。苦悶する少年の声の何と悲惨なことか。伊吹マヤのタイピングが数秒とまり、また再開した。
エントリープラグには黒い炭しか残されていなかった。これでパイロットは事実上一人のみ。使徒は待ってくれない。
水からあがった少女は何もいわずリツコに従った。ともに“二人目”の住みかに行く。久しく見ていなかった部屋は殺風景だったけれど、以前より清潔に整えられていた。泥の靴跡も、丸められたゴミもなかった。
そんな部屋に続く廊下を“三人目”が土足で進むのを見て、ああやはり別人なのだなと今更ながら実感した。そのとき猛烈に、自分と“二人目”がいかに接点がなく、お互いを避けてきたのかがわかった。
初号機パイロットはすぐに別人だと気付いたらしい。
水槽に浮かぶ魂の脱け殻を見ながら、リツコは解放しようと決めた。自分を、そして彼女とあの人を。たくさんの人を縛り付けていたものが消え去るのは快感だった。
「あんた自分が何やってるかわかってんの!」
わかっているわ。少なくともこうしないと、私はあの子を抱き締めることすらできないから。
最終更新:2008年01月21日 17:56