307 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの 投稿日:2008/01/10(木) 18:04:54 ???
「おとうさん、また忘れてる!ちゃんと持ってってよ。せっかく私とお母さんがプレゼントしたのに!」
「ああ…すまんすまん。しかし、この携帯ってのはどうも性に合わなくてなあ。何処にいても電話で呼び出されるってのが・・・」
「もう!しらない!じゃあ、来年から父の日のプレゼントなんてあげないから!!」
「あらあら、怒らせてしまったわねえ。今のはあなたが悪いですよ」
「やれやれ、土産にケーキでも買って帰れば機嫌直してくれるかな・・・全く年頃の娘ってのは扱いが難しい」
穏やかな秋晴れだった。これが私から全てを奪う、悪夢の一日になる事など、知るよしも無かった。
「ええい、行かせてくれ!お願いだ!!」
「高台のここ以外は全滅です!ここだっていつ波がくるか分からないんですよ!!」
「そんなことはどうでもいい!!家にまだ私の、私の妻と子がああああ!!」
それから数日後、私は妻子と再会した。ただし、二人の体は冷たくなっており、
その他の発見された遺体とともにシートにくるまれて並べられていた。私は遺体にすがったまま、とめどなく慟哭した。
生きていた頃の二人の姿が脳裏によみがえる。つまらないことで娘と喧嘩してしまったあの朝。まさか、あれが最後になるとは・・・
そうだ、携帯!突然の事態に動転して忘れていたが・・・・・・慌てて携帯を開き、慣れない手つきでボタンを押す
9/13 19:20
to:お父さん
紅バラ屋のレアチーズケーキで許したげる
だから早く帰ってきてね
――――――あれから、15年の年月が流れた。
現在、私はあの時の娘と、同じ年頃の少年少女達を前に教鞭をとっている。
あの日以来、私は、あの悲劇を決して風化させまいと、生徒達に体験を語り続けてきた。
この仕事を辞めるその日まで、私は語ることを決してやめないだろう。
そして、あれから心に決めている事がもう一つ・・・
「あれ、先生、随分旧型の携帯持ってるんですね、使いづらいでしょう」
「・・・いや、これは手放すわけにはいかないんだよ。・・・そう、どうしてもね」
最終更新:2008年01月17日 23:55