519 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの 投稿日:2008/01/13(日) 01:11:03 ???
放課後に帰途につくとドア前でミサトさんと鉢合わせた。今夜は忘年会があるから帰りが遅いこと、夕飯は買っといたものがテーブルにあるからそれを食べてほしいとのことだ
そして最後におちゃらけた調子で今夜はアスカと二人きりよとかバカなことを言ってさっさと行ってしまった。しばらく入り口の前でぼーっとしていた僕は部屋に入らずそのまま回れ右してマンションを出た。
アスカと二人きりなんてのはまっぴらごめんだった。別にアスカが嫌いというわけでも、自分が何かしでかすような心配があったわけでもない。
ただ他人と2人きりでいるというのは自分にとって耐えがたい緊張を強いるものだった。3人なら問題はない。だが2人きりというのは、なにかその場のすべての責任を自分に押しつけられたような圧迫感を感じるのだ。
団地の公園を過ぎたところで鉛色の空からついにぽつりぽつりと降り始め、一気に大雨となった。ここといって雨よけする場所もなかったのでしょうがなくコンクリートの遊具の下に入る。
その山みたいな遊具の金具からしとしとと落ちてくる水滴を眺めながら、なんて馬鹿なことをしているんだろうと惨めに感じ、そんな自分を笑おうと思ったが、寒さのために強ばったおかしな笑みになったのでついに諦めた。
いじっていた携帯の電池が切れ、そろそろ帰ろうと立ち上がった頃には20時を越えていた。ぐっしょりと濡れたまま今日2度目の帰路に着いた僕をアスカは一瞬驚いて見て、なにやってんのと呆れ顔をしている。
トウジとゲームセンターにいたらいつの間にかこんな時間だったとわけを話したがもちろんでまかせである。あんたって時々不良みたいねと言うアスカにそうかなと答えてそそくさと風呂場に向かった。
風呂を出たらさっさと食事をとって音楽でも聴きながら部屋に籠もろう。しかしそううまくいくわけでもなかった。
食事を済ませ部屋に行こうとしたところ、勉強するならシンジもリビングでやりなさいよ、教えてほしいところもあるから、と引き留められてしまったのである。
こうなってしまったら僕にはイエスの答えしかなかい。断ったところでアスカが怒ると言うこともないだろう。だけど自分には他人から提案なり誘いを受けて、いや結構などと言えることはできないのである。
生まれてこのかた使い続けてきた僕の処世術はしっかりと体にこびり付き、もはや切り離し不可能だった。
最終更新:2008年01月18日 09:00