28 名前:名無しが氏んでも代わりはいるもの 投稿日:2008/01/15(火) 12:39:29 ???
「私が―――」
また、だ。また同じ台詞だ。
「私が死んでも代わりはいるもの」
彼女は幾度その言葉を繰り返すのだろう。
あの真紅の瞳で虚空を見つめ、薄い唇を動かし、
彼女自身を縛る呪詛のように
戒める文言のように綾波は同じ言葉を重ね続ける。
彼女のこの呪詛に対してシンジは説く言葉も、
諭す言葉も持ち合わせていない。
シンジが思う事は、父さんなら何て言うのだろう、という事だ。
無意味にシンジは両手を擦り合わせ、不器用に笑う。
彼の隣で膝を折り曲げ、座っているアスカは何も言わない。
ただ真っ直ぐ目の前のモニターに熱中している。
「綾波…、その…」
もごもごと口を動かすだけで、
シンジの喉からはそれ以上先は出てこない。
「いいの。何回死んでも、同じ事を繰り返すだけだから」
内罰的な言葉。
その台詞に業を煮やしたのか、ついにアスカは立ち上がった。
「ちょっとファースト! いちいちゲームで
負けたからって、愚痴こぼさないでよ」
そう言って―――、
アスカはカーペットの上にあるゲーム機の電源を切った。
最終更新:2008年01月18日 09:36