「海霧」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

海霧」(2007/12/16 (日) 00:09:49) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

*海霧 #amazon(4101067066,text) 題名:海霧 作者:加賀乙彦 発行:新潮文庫 1992.6.25 初刷 価格:\440(本体\427)  同作者の『湿原』とほぼ同じ辺り……道東の海と湿原と牧場を舞台にした小説。 北海道ファンの人には、道東の実情を知る上でもぜひ一読していただきたい本である。 従来、加賀乙彦は純文学なんだろうけれど、彼の小説は純文学にしてはめっぽう面白いのでこちらに書いちゃいます。 十分冒険小説のジャンルでも通用する面白さだと思います。  さて主人公は失恋の痛手に東京を逃げ出した若い心理療法士(この職業をぼくは知らなかった)。 おそらく根室から釧路にかけてのどこかの漁師町がモデルになっているのだと思うが、 そこにできた斬新な精神病院に彼女は赴任する。 精神病院の院長は山岳部出身で、開院費用をマカオでのギャンブルで稼ぎ出したという魅力的な猛者。 うう、どうだ、面白そうでしょ?  村でのアサリ派・カキ派の対立、 院内での組合問題、風土的特性を備えた精神病、 正常と異常の本質的な価値問題、患者たちの発作的で破滅的な行動、 といった諸々の凄まじいさいはての状況下で、それらの逆風を一手に受けたような漁師一家との関わりが、 ストーリーの横線であり、若き漁師との恋が縦線である。要するにとても骨太な恋愛小説なのである。  湿原での釣りの情景やバンバ競馬のハイライト・シーンなど、 女性を主人公に据えながらも、 男臭いローカルでアウトドアな空気が、人間の生命力の強さを思わせる佳品です。 たまには毛色の変わったこの手の本もオススメしたいものです。 (1992.09.23)

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: