「幕末・維新 シリーズ日本近現代史 1」の編集履歴(バックアップ)一覧はこちら

幕末・維新 シリーズ日本近現代史 1」(2021/10/26 (火) 21:44:47) の最新版変更点

追加された行は緑色になります。

削除された行は赤色になります。

*幕末・維新 シリーズ日本近現代史 1 #amazon(4004310423,right) 題名:幕末・維新 シリーズ日本近現代史① 著者:井上勝生 発行:岩波新書 2006/11/21 初版 2006/12/20 5刷 価格:¥780  札幌近郊に住んでいる人間にとって歴史というと、どうしても維新後に絞られるケースが多い。それにも関わらず、義務教育を通じても高校教育においても、近代史・現代史までの教育は行われなかった、受けられなかったとの認識が強い。現代の政府の教育方針において、維新から二つの大戦までの歴史は、国民に蓋をしてきたのではないか、との疑念も強く感じざるを得なかった。  維新後の総理大臣の出身は山口=長州が最も多い。薩摩・長州が天皇を担ぎ出し、それまでの徳川幕府に賊軍の印を付けさせて、大政奉還から維新への流れができて既に二世紀弱になろうという今でも、我々は強く維新から現代に至るあまり学習させてもらえなかったことの暗さを感じざるを得ない。  なぜ二つの戦争が起きたのか? ぼくの個人史だけを見ても、母は東京大空襲を経験した。父はシベリア抑留の末、戦後3年目に身障者となって復員した。そうしたことに繋がる大戦前前の流れ、歴史をしっかり知ることができず、大河ドラマや歴史小説によって幕末維新への興味を覚えていった。ある時期はこの時代のものばかりを読んでいた。  今になって機会あり、本書に触れることができた。本書は幕府から維新を経て権力の流れ、内戦、国際化に踏み切るに至る近代国家の産みの苦しみ(尊王攘夷から近代化への国家思想の経緯)の、極めて具体的なディテールの積み重ねによる幕末から維新へのテキストのような本である。その中で、改めてぼくのいる北海道の立ち位置。倭人がアイヌ民族に対して行ってきたこと。  鎖国と言いながらも盛んであったらしい海上取引から繋がるアイヌ民族、函館戦争で終結する倒幕運動の流れとそこに関わった多くの人物たちの足取りと役割が綴られるが、空しくいとも簡単に失われた命の多さにも驚愕せざるを得ない。  維新とは、何であったのか? むしろ現代を知るために維新を知る必要性まで痛感させられる、そこに焦点を絞って学ぶための本、これはそうした書籍の重要な一冊であった。   (2021.10.26)
*幕末・維新 シリーズ日本近現代史 1 #amazon(4004310423,right) 題名:幕末・維新 シリーズ日本近現代史① 著者:井上勝生 発行:岩波新書 2006/11/21 初版 2006/12/20 5刷 価格:¥780  自分のすぐ近くにある物語との出会いは、嬉しく、また有難い。これをお貸し頂いたのは仕事の古く永い先輩であると共に、ぼくの中に北海道愛を最初にインジェクトしてくれた方である。本書の作家・浮穴みみも千葉大仏文科卒だが北海道生まれの作家である。本書は北海開拓に纏わる人たちを絡めた美しくも逞しい短編集である。  『楡の墓』タイトルにもなっている最初の短編は、札幌市に堀を引いた初期開拓の責任者である大友亀次郎。札幌市東区に彼を記念する郷土資料館があり、それを偶然にも先月だったかぼくは訪れている。また大友がトウベツの開拓に関わろうとした経緯など実に興味深い。  『雪女郎』続いて北海道神宮にゆくとガイドさんが必ず紹介する大きな銅像で印象的な島義武の開拓と挫折。途中で行き会うブリキストンは、津軽海峡を挟み本州と蝦夷の生息動物が異なると唱え、ブリキストン・ラインという名で有名になった学者である。同作者の他の短編作品でも描かれているということなので、楽しみにしておく。  『貸女房始末』は、唯一書き下ろしではなく過去雑誌掲載作品。『小説推理』に掲載されたとあるが、いずれも推理小説というより、人情と歴史を絡めた骨太の歴史小説作家という風に読める。札幌居住地の焼き払いと再建を描いたものとして印象深い。  『湯壺にて』は、まだ山の中の秘湯であった定山渓温泉の湯壺を舞台にした、開拓吏・松本十郎にまつわる物語。  『七月のトリリウム』は、船の中、札幌農学校で教えのために渡ろうとしているクラーク博士の逸話を、美しい文学性とともに描く。  いずれも、自分の住んでいる、あるいは住んでいた場所、ゆかりの地。それらは本書の舞台というより、むしろ土地が人以上の主人公なのではないかと思われるほど、蝦夷地とその開拓にちなんだ物語である。北海道を愛する人にとっては、心のメモリーとなりそうな重要な作品であった。  明治維新による移民政策、北海道開拓、アイヌ民族などの歴史などに興味のない方も、この作品たちは、物語性だけでも惹きつけるものが十分にあり、とてもおススメである。   (2021.10.26)

表示オプション

横に並べて表示:
変化行の前後のみ表示: