侵入者 イントルーダー
題名:侵入者 -イントルーダー-
原題:The Intruder (1996)
作者:Peter Blauner
訳者:白石朗
発行:扶桑社 1997.7.30 初版
価格:\2,381
ストーカーものと出版社は宣伝したいみたいだけど、どちらかというと転落して行くホームレスとブルックリンから這い上がった弁護士との二つの物語を主軸に展開する立体的なサスペンスと言っていいような気がする。「ストーカー」とかタイトルの「侵入者」という面ばかりを期待すると、実際にはちょいと違う味わいになってしまうだろう。
一つ、まずはこの作者の手による人物造形に興味を持った。類型的で両極端な人物のコントラストで物語を進めていながら、どこか巻半ばくらいから陰と陽が逆転してゆくあたりは面白いと思う。手放しで喜ぶようなシーンがほとんどない一方、現実のハードさと、それに立ち向かうのに要するタフさというものを、いつの間にか覚悟させられている。
ある意味で救いのない現実。その中であがく主人公たちと、悪役にもそれなりの精神世界と特殊な性格とを持たせてバイオレンスの起点にしている点など、小説作りにとても丁寧さが目立つ。作者は、ホームレスの世界や、彼らを救済する施設など、現実の取材に時間をかけているというが、そういう生臭い現実の中で、緊張を保たせているサスペンスの腕、盛り上げてゆく描写の迫力は一級である。
スティーヴン・キング絶賛とか、都会の「ケープ・フィアー」とかいろいろ宣伝文句があるみたいだが、ヒューマニズムの安易さに流れていない、地に足のついたバランス良さを感じさせる、きちんとした社会派スリラーと言いたい。
(1997.10.13)
最終更新:2007年07月15日 15:15