9ミリの挽歌





題名 9ミリの挽歌
原題 Nine Mil (2000)
著者 ロブ・ライアン Rob Ryan
訳者 鈴木 恵
発行 文春文庫 2001.10.10 初版
価格 \848

 思わぬ拾い物と言って良い作品。パルプ・ノワールとあるけれども、ぼくとしてはむしろ全編に侠気を感じさせる人情巨編と読める。敗者たちがふたたび立ち上がるクライム・ノベル。出来の悪い主人公たちが一人ずつ結集して、ろくでもない復讐劇をもくろむ。巨悪への挑戦であり、現ナマの強奪であり、今いる日常への決別でもあるが、それぞれに負った傷は重すぎる。

 挑戦すべき悪党たちは、闇の掟で縛られ、裏切り、処刑する。地下室で弾ける頭蓋に、跳ね上がる泥と血。あまりにも残酷な描写の彼方に、驚くべきクライマックスが待ち受けている。

 野良犬の糞よりも安っぽく見える人の命と腐った街。タクシー運転手を主人公に据えて、夜の向こうへの疾走がスタートする。復讐劇が火蓋を切る。弱き男たちが成し遂げる一世一代のシーンのために、この物語を是非とも読むべし!

(2001.12.30)
最終更新:2013年04月28日 21:47