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凍える牙







題名:凍える牙
作者:乃南アサ
発行:新潮ミステリー倶楽部 1996.4.20 初刷
価格:\1,800

 主題は新らしめだけど、小説作法は古め……そんな印象で『旬の一冊』入りは却下してしまった。この作家初めて読む女流作家で、ルーキーの女性刑事が初老のベテラン刑事と組んで特殊な犯罪に挑むという筋立て。

 女流作家だなあと思わせる部分が女性刑事が刑事らしくなく、すっごく背伸びして難事件に挑んでいること、またベテラン刑事とのちぐはぐな捜査ぶりなどなど。この辺好みの人にはかえって受ける素材であるのかもしれないが、どこかホームドラマじみた匂いを感じさせ、これだけの酷薄な事件でありながら、緊張感を感じさせないところが、どうもぼくには残念。

 動物を使った犯罪と言えば、ポーの頃からの古い題材ながら、女主人公のバイクとのクライマックスを夜の首都高にもってゆくところなぞ、ロマンチックだなあと思わせる。よけいに中弛み部分が惜しまれる。こういうのは大沢在昌あたりが書いたらもう少し緊迫していただろう。

 だけど殺人の得意さ、事件の難しさ、クライマックスへのテンポの良さ、全体を流れるロマンティシズム、こういうものには光るものがあると思う。もう少し書き慣れるといいものを発揮してくれるのか? 作者が女性であることを忘れてハードボイルドに徹してくれたら嬉しいし、できたら女性刑事なんかじゃなく、普通の男性刑事に戦わせて欲しいところだ。女性刑事は制約が多すぎるのでどうも読んでいてイマイチなのである。

(1996.05.25)
最終更新:2007年12月10日 00:07