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ロードサイド・クロス




題名:ロードサイド・クロス
原題:Roadside Crosses (2009)
作者:ジェフリー・ディーヴァー Jeffery Deaver
訳者:池田真紀子
発行:文藝春秋 2010.10.30 初版
価格:\2,381


 リンカーン・ライム・シリーズからのスピンオフ・シリーズ、人間嘘発見器キャサリン・ダンスのシリーズ第二作である。

 こちらでもまた、デジタル犯罪である。ここのところこの作者のみならず、犯罪に関する小説も映画もコンピューターやネットを駆使したネタが増えてきた。ある程度出尽くしたのじゃないかと思われるものでも、まだまだネタは尽きないとばかりに、さまざまな作者たちがアイディアを見せている現状を見る限り、ネットやコンピュータの領域というのは、エンターテインメントの一大マーケットとなっているありさまである。

 本作は、ブログ、とりわけ限定エリアでのブログを軸に、特定個人が実際の生活までも含めて攻撃されてゆき排除されそうになる出来事を捉え、そのブログやSNSの特性を踏まえ計画された犯罪というものを描いている。ネットいじめなどは、容易に考えられるのだが、海を越えたアメリカでも学校でのいじめはネットによってより拡散性を増し、燎原の火のように瞬く間に燃え広がる危険性を秘める。そうした怖さと、そこにばら撒かれた精度の低い情報が及ぼすさらなる害悪に焦点を当てた小説とも言える。

 この中には大なり小なりオタクと呼ばれるようなネットマニアの人々が登場し、彼らは時には味方になり敵になり、ダンスの周囲を跳梁する。ダンス自身はネットに明るくなく、そこで助っ人を頼むことになる。彼の手を通じて、ダンスはネットという迷宮に戸惑いつつも足を踏み入れてゆく。仮想冒険の世界は、ネットのブログであり、ときにはRPGゲームの世界でもあり、そこに生きるアバターたちの別次元での生態でもある。

 読者はダンスの眼を通じて、それらの奇妙なあるいは慣れしたしんだ覚えのあるネットワールドを旅することになる。相手の声質や動作、表情などでその心理を見極めるキネシクスというダンス得意の技術は、ネットのアバター相手には成立しにくいが、それでも試みたりするあたりが余興か。

 いつもながらの逆転また逆転で、事の真相に辿り着くには相当の時間と労力をかけなければならないが、真の人間や家族よりもネットのほうに価値を置く人々、仮想空間での仮の人生と真の人生を入れ違えそうになるくらい生活比率の歪んだ人々、などの存在が、一歩間違えれば、われわれ読者の側にも容易に生じてしまいそうなだけに、身近な怖さが一つの味わいといえるテーマになるかもしれない。

 訳者のあとがきによれば、『青い虚空』『ソウル・コレクター』に続くディーヴァーのコンピューター三部作の完結に当たるという。へえ、そういう三部作なんて言い方もあるのかと変なところで感心した次第。

(2011.01.24)
最終更新:2013年06月10日 10:20