ヴードゥー・キャデラック
題名:ヴードゥー・キャデラック
原題:Princess Naughty And The Voodoo Cadillac (2000)
作者:フレッド・ウィラード
訳者:黒原敏行
発行:文春文庫 2003.07.10 初版
価格:\943
バリー・ギフォードを思わせる。彼の超短編小説(あるいはエピソード)を積み重ねて創り上げたスタイルでありながら、ギフォードよりずっと主人公にこだわり、人間たちにこだわり、宗教にこだわらず、金と女には思い切りこだわる。ギフォードよりはほんの少しだけマトモ(?)な舵取りがなされた長編小説がこの『ヴードゥー・キャデラック』。
もちろんほとんどのキャラクターはクレイジーである。元CIAスパイ。傭兵の訓練隊長。カエルにそっくりな大金持ち。どこをとってもチープでガタのきた連中が大金の詰まったトランクをめぐって騙し合い、ばかし合いを繰り広げる。そう、この小説はチープで
パルプな現ナマ争奪戦小説でしかない。
随所に笑いあり。皮肉あり。欲望の全種類を露出して歩くような男たちのなかを、ビビアン・リーそっくりの美女や、職業的犯罪者(田舎者軍団)の陽気な三人組が引っ掻き回し、アトランタは地獄の釜をひっくり返したような騒ぎになる。
登場人物に付随するかのように車たちがついて回る。車たちは象徴的ですらある。田舎者軍団の転がすブードゥー・キャデラック・エルドラドは中でも主役クラスである。鶏の足のアクセサリー。ダッシュボードに並ぶ串刺しになった呪いの人形。いくつもの弾傷の修理痕。安かったから買ったというだけの存在。
車が物語を引っ掻き回す。美女が物語を引っ掻き回す。携帯が、トランクが、ミュータントが、UFOが、ドラッグが物語を引っ掻き回す。そして最後に銃弾がおとしまえをつける。何よりも、愛がおとしまえをつけた。
ジョージア州アトランタが舞台。いわゆる南部ものである。レッドネック(貧乏白人)といわれる連中の人生。アメリカではクラッカー・ノワールと呼ばれたりするらしい。
本の折り返しには、クエンティン・タランティーノ、カール・ハイアセン、
戸梶圭太を連想させるとある。帯には、その戸梶とボストン・テランが協力推薦とある。パルプでノワールな読者をとりこにさせる名前たち。派手なアクセサリーでいっぱいの、まるでヴードゥー・キャデラックみたいに怪しげな本である。
(2003.07.20)
最終更新:2013年04月28日 21:48