四番目のK
題名:四番目のK
原題:The Fourth K (1990)
作者:Mario Puzo
訳者:高橋義博
発行:早川書房 1992.5.31 初版
価格:\2,200 (本体 \2,200)
さてマリオ・プーヅォといえば御存知、映画『ゴッドファーザー』の原作者であり、また同映画でアカデミー脚本賞も受賞していたりする、もともとただ者ではない作家なのであるが、前作『シシリアン』は、既に資金をふんだんに使えなくなったマイケル・チミノによって中途半端に映画化されてしまった気がして、何だかなあであった。しかし本の方はそれでも 『ゴッドファーザー』の外伝とでもいいたいもので、マイケル・コルレオーネとも繋がっていたりするし、映画よりは遥かにプーヅォの必然であったし、その世界にも奥行きがあった。
話しはズレるがマイケル・チミノは昔のドン・シーゲル門下にあったときを除いて『ディア・ハンター』『天国の門』『イヤー・オブ・ザ・ドラゴン』と徹底してアメリカ移民の歴史の闇に触れようとしてきた映像作家であり、彼の路線がプーヅォの追求するアメリカの歴史の裏側にどこかでクロスしたとしても何の不自然さもなかった。少なくともぼくは映画公開当時そんな感想を抱いていた。
そしてプーヅォが遂にやらかしたか、という作品がこれである。これまで過去の歴史に向けられてきたプーヅォの筆が近未来に向けられた。90年の作品であり、既にソビエトはこの作中ではその影すら落としていない。さて近未来小説というのはいわば「仮定小説」とでも名付けていいのではないかとつくづく思うのだが、これはケネディ家の甥が大統領に就任しているというとてつもない仮定の上に始まるスペクタクルである。ジョン、ロバート、エドワードに続く4番目のKなのである。
さてストーリーはのっけから迫力と緊迫と重量感に包まれて骨太に進んでゆく。まず多くの読者は、呆気にとられながら小説世界に引きずり込まれるのではないだろうか。そのくらい凄まじい筆力だ。ぼくは今回の翻訳はあまり趣味ではなかったにも関わらず、ひさびさのヘビー級の破壊力を堪能させてもらった。
すべてを読み終わる前からずっと感じていたのは、四番目といいながら常に作者の念頭にあったのは実在したKたち(叔父たち)のことであったろうということ。近未来と言いながらモデルになっているのはキューバ危機前後の現代史であったろうということであり、あいかわらずプーヅォは舌鋒鋭くアメリカという国家に巣食う病巣そのものをターゲットに据えているようだった。
アメリカ人にとっては衝撃的で永遠なテーマであるような種類の作品なのだろうと感じたし、日本サイドからもアメリカを理解する一助になること間違いなしの重厚な参考書でもあると思う。そして最後にその素晴らしきエンターテインメント性にぜひとも喝采を送りたい作品でもあることは、付け加えておかねばならない重要な要素だろう。
(1992.07.30)
最終更新:2013年04月29日 22:43