ビッグ・ピクチャー
あの名作『
シンプル・プラン』(
スコット・スミス著)の強烈な作風を覚えておいでだろうか。あれ以来重厚でじわじわと染みとおってくるタイプの怖いミステリーにはなかなか遭遇してこなかったのだが、ひさびさに出くわした。それがこれである。『このミス』や『週刊文春』がこうした傑作をべスト上位に拾ってくれたことに大変感謝。
この物語の凄いところは、序盤のリアリティ。そして人生の生き甲斐、成功への遠い憧れや現実とのギャップといった、大人のテーマをクライム・ノベルのなかにしっかりと埋め込んで、ドラマティックに描き切っているところ。伏線の確かさ、サスペンスフルな描写力……どれを取っても傑作の名に値する作品であると思う。
殺人を、殺人者の視点で描き、しかもそれが暴かれる恐怖や、新たに展開しようと言う人生への強烈なエネルギィ。魂の苦悶と捨て切れぬ夢の実現。過去からの訪問者と追い詰められるスリル。この出口なしの状況からどう脱出してみせるのか。最後まで苦悩は消えることがないが、生きることへの前向きな主人公の心理に自然に同化してしまうという不思議に魅力的な小説。
『シンプル・プラン』は最後まで皮肉な小説だったが、それ以上に肯定的かつ積極的な面の多い主人公の行き様に何がしかのプラスを感じる。ある意味で本来の冒険小説と言える部分を持った作品であるかもしれない。
(1999.03.07)
最終更新:2013年05月02日 21:32