札幌のカラス3
題名:やっぱりそうでしょ 札幌のカラス3
作者:中村眞樹子
発行:北海道新聞社 2020.9.6 初版
価格:¥1,400
我が家を訪れるカラスの一家は、最早、家族みたいなもので、とて可愛い。同じ気持ちを共有するカラス博士マキコさんの本『札幌のカラス3』が出ました。売れ行きが良いということは、カラスのことを知る人、好きな人、興味を持つ人たちが増えてきたのかな、嬉しいことこの上ない。
うちのカーコたちの、子育ての半年間に付き合えたのは、我が家にとってとても貴重な経験だった。この春生まれたてのガッチャンは、赤い口の中を見せて、未だ大人になり切れないがらがらした声で、親たちに餌をねだったり、時にはぼくや妻にも羽をばたつかせて甘えた声を出して餌を食べたいよ、と歩き回る。
そのガッチャンは秋になり、ついに親離れしたようで、姿を見せなくなって、もう何日にもなる。寂しいね、と夫婦でつい口にしてしまうのだが、親のカーコとカーオは毎日のように顔を見せては、大好物の食パンをちぎって投げてあげると、上手に嘴でキャッチする。庭のバケツの中でパンを水に浸したり、時には運べなくなった餌を薪の間に貯食していったりもする。
そうしたカラスとの日常生活の中で得られたぼくらの経験に、この本は意味や理由を付け加えてくれる。ぼくらの感じた推測を改めて確かめさせてくれる。読んでいて微笑ましいことこの上ない。
こうしたカラスとの交流のない人たちにもこの本が読まれているのは何故だかわからないが、コロナ禍の中でついとんがりがちな心に、優しさを持ち込んでくれるからなんだろうな、としか言いようがない。都会生活にも田舎暮らしにも、ぼくらの日常の中で普通に目撃されるカラスたちの家族や子育てを通して、生きることの素敵さを感じて頂ければぼくはそれでよいかなと思うのです。
(2020.10.13)
最終更新:2020年10月13日 18:10