P分署捜査班 寒波
題名:P分署捜査班 対立
原題:Pane (2016)
著者:マウリツィオ・デ・ジョバンニ Maurizio De Giovanni
訳者:直良和美
発行:創元推理文庫 2025.12.12 初版
価格:¥1,400
ライブ活動主体の生活になってから、めっきり読書量が落ちてしまった中で、読み続けていたシリーズの新作(第5作)を、少し時間をかけてしまったが本日読了。気がついたら、第4作の「鼓動」抜かしてしまっていたので、この後読もうと思う。
シリーズとは言え、独立した事件を扱うP分署。とは言え、87分署の現代版かつイタリア版として、CS放送で世界に発信すべくドラマ化されてもいるのに、一作抜かして読むという自分らしくない読書行動に悔しさを感じつつ、本作はそれなりに楽しんで読めてしまった。
それぞれのレギュラー・キャラクターが、やはり個性的で素晴らしい。このシリーズの原本となったのであろうあの87分署シリーズで大切にしていた刑事たちのそれぞれの人格や個性を事件に上手く絡めてゆく手法が有難いのだ。
Niftyで冒険小説&ハードボイルド・フォーラムのSYSOPを勤めていた時代に、87分署シリーズの会議室を設営したことのある自分としては、このP分署シリーズがヨーロッパ発で始まり、しかも原本踏襲の個性派キャラクターを重視した形で書かれている現実にもろ手で喝采を送ったものだった。
本書ではP分署閉鎖の危機に立ち向かって、最近さらに安定しつつある個性派捜査陣たちの動きを主軸に、一つの殺人事件とそれを取り巻く犯罪者たちとの闘いを描く。P分署のお取り潰しを目論む政治状況もスリリングに盛り込みながら、あくまで個性派刑事たちの独自な活躍を描くが、本書の事件がパン屋店主の殺害事件という小さな出発点であることが忘れられるくらいに、ナポリという町の活写が素晴らしい。
マクベインの87分署は、アイソラという架空の町(誰がどう見てもニューヨークなのだが)を舞台に描いているのだが、この作家は自身の生まれた地ナポリを堂々名前を出して刑事たちの舞台に据えている。
猫の眼のように変わる半端な?刑事たちの視点で事件と街を活写する本シリーズ、素晴らしいページターナーぶりを体感して頂きたい。必ずしも順番に読む必要はないが、刑事の個人的事情の変化などが微妙に個性として盛り込まれているので、こだわりたい派(自分はそれで87分署も全部順番通りに読んだのです)は順番にどうぞ。
(2026.05.08)
最終更新:2026年05月08日 21:27