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P分署捜査班 鼓動




題名:P分署捜査班 鼓動
原題:Cuccioli (2015)
著者:マウリツィオ・デ・ジョバンニ Maurizio De Giovanni
訳者:直良和美
発行:創元推理文庫 2024.6.14 初版
価格:¥1,100


 先日、久々にこの警察小説の最新作を読み終えて、気づいたのはその前の一作を抜かしていたこと。というわけで直後に、忘れないうちに本書を取りあげ二日で読み終えた。忘れないうちに、というのは一年も間が空くと確実に刑事たちの名前や特徴や関係性などはかなり忘れてしまうからだ。

 87分署を読んでいた頃は刑事の特徴がけっこう際立って、ユーモラスな部分もあったり、途中で殉職したりと、まあ『太陽に吼えろ』などを思い出して頂ければよいと思うが、出版も年一度ではなく数か月に一度という形でハヤカワ文庫は翻訳を進めていたためもあるので、刑事たちの特徴や運命などはあまり忘れず前作を引き継ぐことができた。いや、それ以上に自分も若かったし、古く一作目に遡って一気にどんどんシリーズ読みをしていたということもあったから圧倒的に古いシリーズは有利だ。警部がロヤコーノで巡査長がロマーノでどちらも重要人物なのだが名前の区別がつきにくいというのも不利だ。

 さてつらつらと苦情から入ったものの、出来損ないや問題児ばかりを集めた分署ものというのは、ある意味個性豊かでやはり面白い。今回はアラゴーナのごり押しな個性が相当目立ったかなと思う。若手の問題児なのだが、図々しさと前のめりな態度がネガティブになる点が多かったように思うが今作ではいい意味での責任感という形になっていて、彼のごり押しがなければ事件は終結しなかったかもしれない、くらいに思えた。

 また、刑事や検察のつきあいが日本に比べて深いような気がするが、本シリーズでもある刑事とある検事の間で微妙な個人的関係が継続しており、この二人に今後どのような転機や行く末が訪れるのかも気になる。

 遅くなったが、本書は、捨てられていた赤子が発端となり、その裏に移民の問題が浮かび上がる。ウクライナからの移民であるが、時代背景が現在ではないためロシアとの戦火などの問題はこの時点では取り上げられてはいない。

 いずれにせよ、アメリカの警察小説と違って、日本並みの面積を持つイタリアというさして大きくはない国家の一都市にある警察分署を舞台にしていながら、近隣諸国との国際的関係を背景にして、我々があまり接する機会のない国や街(イタリアの中でも特徴があるナポリの小さな町らしい)に生きる人々をスケッチしつつ、問題児と呼ばれる刑事たちが掃き溜めのように集められ、しかもそのそれぞれの個性で活性化している本シリーズ、頑張って翻訳次第どんどん出版して頂きたいところだ。

(2026.05.11)
最終更新:2026年05月11日 14:11