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無垢で清らかなあなたのために


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題名:無垢で清らかなあなたのために
原題:We're All Guilty Here (2025)
著者:カリン・スローター Karin Slaughter
訳者:鈴木美朋
発行:パーカーBOOKS 2026.1.25 初版
価格:¥1,580

 何故か久々にカリン・スローターを読んだ。ウィル・トレント・シリーズでもなくグレーンス警部シリーズでもなく、独立系の作品。実はこの作家、独立系の作品の方がむしろ良いのではないかと密かに思っている。

 本書は久々の独立作品だが、相変わらずこの作家らしく、超のつく長編作品であり(約700ぺージ!)、題材は少女連続惨殺事件であり、その舞台はアメリカ南部。大自然や夜の暗闇が人間の暮らしを取り巻くような世界だ。そして人々は地方独特の繋がりを持ち、長い時間をかけて熟人間関係は熟している。

 多くの登場人物とその個性もこの作家特有の書き分けにより造形され、極度な性格を持つ人や、本性を隠しているかに見える人々が多く跋扈する。時代や世界から隔たったような人間同士の奇妙な繋がりが目立つ。

 そもそもが個性的人格や主人公や関わる人間たちの情念の部分を描くのが巧い作家なのだが、本書も例外ではなく、南部の粘っこい土地柄に勃発する少女連続行方不明事件の謎を解くべく活躍する女性保安官補を中心に描くスケール感のある物語である。

 のっけからヒロインのエミーとその周辺の歪んだようにも見える人間関係の縦軸が見える。父・娘・息子と三代の郡保安官家族と精神を病んだ母親。カリン・スローターはアメリカの地方に起こるサイコな事件と、舞台装置としてのどろどろした人間関係を、スケールの大きな時間軸で描くのがとても巧い作家なのだが、本書も南部小説らしく、閉ざされた町、深い血縁関係、個性的なキャラクターたちと言った独特の物語世界に引きずり込まれる。

 語り口が巧いのだが、関係する人間関係や被害者や行方不明者の多さなど、おどろおどろしいほどのスローター節が全編を包む。一方で親族への愛憎や情など女性作家ならではの繊細な心の動きと、事件を解いてゆく知性とのクロスする世界もこの作家の得意とするところだ。

 犯人捜し小説というのは少し違う、この事件を通して別れたり再会したりする人間関係の綾こそがミステリーの核を成しているのではないか。そんなゴシック・スリラー風味を楽しめるなか、ラスト二百ページくらいはぐいぐいと読まされてしまうストーリー・テリングの巧さは変わらぬまま。

 伏せられていた人間関係の綾も終盤に近付くにつれ明かされてゆくので、クライマックスとその後の余韻も楽しめる。緻密に構築された一大ロマンの世界だが、それを裏打ちする小説としての手腕は、相変わらず。骨太女流サイコスリラーの書き手として、カリン・スローターはトップを走っているのではないだろうか?

(2026.06.26)
最終更新:2026年06月26日 14:25